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写真を楽しむ生活

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津田淳子


なんだか毎日、ジメジメムシムシ。不快な天候が続きますね。通勤や外出時の不快さをちょっとでも軽減しようと、「今、熱帯雨林に旅行に来てるんだ」とか「西表島を縦断しているんだ」とか、熱帯や亜熱帯地域へ旅している想像をしながら歩いているんですが、いやぁ、そんなことしても、不快なものは不快ですね(苦笑)。


さて、先月上旬、そんなジメジメムシムシとは無縁の地、グリーンランドに行ってきました。


グリーンランドというと、みんな「それどこ? 何しにいくの?」と怪訝な顔をされました。グリーンランドにすごい印刷工場があるわけでもなく、紙をつくっているわけでもなし。というわけで、仕事ではありません。まったくの道楽旅行です。


と書いても「?」と思われますよね。こちらでは初めて掲載していただきます、編集者の津田淳子と申します。私はデザイン、印刷、紙、加工などにめっぽう興味があり、今は、グラフィック社という小さな専門出版社で、デザイン、印刷、紙、加工に関連する書籍をつくる仕事をしています。


そして、それと同じくらい好きなことに「島を旅する」ということがあります。日本国内の島に行くことが多いのですが、年に一度は海外の島へ行くことにしています。


そんな島好きの私にとって、いつか行ってみたいと思っていたのが、世界最大の島「グリーンランド」。グリーンランドより小さい陸地は、全部「島」なんですよ。知ってました?


グリーンランドへは、日本からの直行便はなく、まずヨーロッパのどこかの都市へ飛び、そこからデンマークのコペンハーゲンへ。そしてそこからグリーンランドのカンガルサックという、以前米軍基地があった、グリーンランドのちょっとだけ内陸部に降り立ちます。私はオランダのアムステルダム経由で行きました。


グリーンランドへは、グリーンランド航空という航空会社しか就航していないので、必ずこの飛行機に乗ります。コペンハーゲンからもそうだし、グリーンランド国内も必ずこの飛行機。


グリーンランド航空の飛行機、コペンハーゲンとの行き来は100人超の中型機で、グリーンランド国内は、国内空港の滑走路の長さから小型のプロペラ機が就航しているんですが、そのどれも、機体は真っ赤。飛行機はわりと白が主体になった機体が多い中、この赤い飛行機は見た目にもすごくかわいくてステキなんですが、そんな華飾の意味だけで赤にしてるわけじゃないそうなんです。では、どうしてかわかりますか?




答えの前に、グリーンランドのことをちょっとご説明します。グリーンランドは日本列島の6倍くらい大きな面積を持った島で、その8割以上が万年雪とスノーキャップ(氷床)と呼ばれる氷河の塊で覆われています。今は夏なので、島の沿岸部は雪が解け、岩や砂地、湿地などの陸部が見えていますが、短い夏を終えると、そこもすべて雪で覆われてしまいます。


スノーキャップ



スノーキャップが崩れてフィヨルドを通じて海に流れ出た氷山。これで高さ100mくらい



陸地からも海へ流れ出た氷山は見えますが、船で海へでると、そこは見たことがない世界。首を90度後ろに反らして見上げる、高い氷山がこれでもか、これでもかと迫ってきて、その上下には、澄んだ空気のせいで、非常に濃いブルーが美しい空と海が。


たっくさんの氷山が見えますが、大きく分けると2つのタイプにわかれています。それがこちらの2種類。




最初の方の滑らかな氷山は、スノーキャップが崩れて流れ出たままの状態。後者のちょっとイガイガした感じの氷山は、氷山が崩れたときなどにその反動で、氷山の天地がひっくり返ってしまったもの。つまり、元は海の中に沈んでいた部分がいまは空に向いているというわけです。


これらの氷山は低く見えても数10メートル、高いものだと100メートルにもなる巨大なもの。それがひっくり返ってしまうなんて、すごいですよねぇ。私も運がいいことに、かなり大きめな氷河の崩落を見ることができました。ムービーもバッチリとって、今は会う人ごとに自慢しています(笑)。


ちなみにそんな雪や氷山だらけのこの島がなぜ「グリーンランド」なんていう、緑豊かな大地みたいな名前かというと、西暦982年ごろ、ヨーロッパ人として初めてグリーンランドに入植した、通称「赤毛のエイリーク」という人物がいて、エイリークはそれ以前に「アイスランド」にも上陸し、その際「アイスランド」と命名したが、その「氷の島」という名前から、入植希望者が現れなかったそう。


そこで、グリーンランドに上陸した際、今度はたくさんの入植希望者が現れることを願って、「緑の島 グリーンランド」と名付けたとか。うーん、その名前にだまされてこの地に来たら、ショックだろうなぁ……。だって木はほとんどなく、緑といっても、こけとか小さな植物が、短い夏の期間にちょっとあるだけだもんなぁ……。


私が行った6月は夏なので、島の沿岸部は雪はありませんでしたが、そこから少しハイキングで歩いていくと、すぐにスノーキャップに行き当たます。下にリンクしている写真も、そんな一コマ。奥の方に見えるのが、雪が何千年もつもって圧縮された氷の塊・スノーキャップです。この氷の塊がずーーーーーーっっと続いているのかと思うと、別に遭難しているわけでもないのに、なんだか呆然と見入ってしまいました。



閑話休題。なぜ飛行機が赤いのかということに戻ると、この雪と氷の覆われた白い大地に、万一、飛行機が墜落した場合でも、飛行機を見つけやすいように赤にしているのだとか。確かに白ベースの機体だと、空から探しても見つけづらいですな。見た目のステキさも大事だけど、こうした切実な理由も、色を決めるときの理由として重要な要素ですよね。


そんなグリーンランド航空の「安全のしおり」には、寒いところならではのことが載っていました。もし不時着などした場合、多くの飛行機の安全のしおりには、エアジャケットの使い方や、安全姿勢の説明、機外への脱出方法などが説明されていますが、グリーンランド航空では、それ以外に、寒さ対策の方法が説明されていました。



座席シートカバーをとって足に巻いて、凍傷を防げってことでしょうかね。確かに少しでも温かくしないと、救助を待てそうにありません。でもこの安全のしおりのイラスト、顔がかなり簡単だなぁ(笑)。


まあ、機体の色は「万一」のときの備えですが、冬は雪に覆われ、夏になっても陸地は岩や砂など、土地自体にあまりカラフルさがないグリーンランド。そのせいなのか、家や車がめちゃくちゃカラフルです。




どうしてこんな色なのかと、現地の人に聞いてみたのですが、「昔は家は赤ばっかりだったんだけど、最近は、他の色に塗るのが流行ってる。その方がきれいじゃな?」と、おっしゃっていました。雪の中にピンクや黄色、水色の家が建っている風景、なんか絵本に出てくる景色のよう。


こんな、日本とは全然違う風景に出会えたグリーンランド、いやぁ、めちゃくちゃ面白かったです。もちろん涼しいし。日本人は年間600人くらいが訪れるそうです。確かにちょっと遠いけど、白夜や氷山を見たりと、日本にいたら絶対体験できないことばかりだったので、機会があればぜひ行ってみて下さい。


最後に笑い話をひとつ。今回のグリーンランド旅行は、父と夫と3人で行ってきたのですが、これを珍道中といわず何をや、という感じの日々でした。


グリーンランドでは、先住民のイヌイットの人達はもちろん、ヨーロッパから入植した人達の子孫も、アザラシやトナカイなどを食べます(無論、我らもいただきました)。そしてその毛皮は、コートやブーツ、帽子などの防寒具として使われています。


父は町で売られている、加工前の毛皮が欲しくて欲しくてしょうがなかったらしく、旅の始めにトナカイを1枚、終わりにはアザラシを2枚買い込み、それをトランクに詰めようとしたら当然入るわけもなく、トランクを買い増す始末。


グリーンランドは今、白夜で、日が落ちることなく、ずっと明るいままの状態です。ただ夜になるとやはり、日中とは光の強さが違って、すこし陽がやわらぎます。そんななか船で出航し、白夜クルーズにも行きました。偶然、クジラを見ることもできて、大興奮。写真もたくさん撮りました。



父は「俺はどうもデジカメの使い方がよくわからない。だから使い捨てカメラを4つ持ってきた。それも普通のは480円だけど、これは1280円もする一番いいやつだぞ」といって、自慢げに私にそれを見せるのですが……。


その使い捨てカメラには「スーパーナイトモード」なる文字が。「これはな、5メートル先までフラッシュが届くんだぞ!」と自慢げです。


賢いみなさまなら、もうお気づきですよね。そう、グリーンランドは今、白夜。24時間、ずっとフラッシュいらずです。おまけにフィルムの感度も高かったのでしょう。帰国して現像、プリントした父の撮った写真は、かなり粒状感が……。ま、父はそれでも満足げなので、よしとしましょう(苦笑)。


【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp
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です! 
平日毎日、更新中! デザインのひきだし・制作日記
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“■気になるデザイン グリーンランド航空の飛行機はなぜ赤い?”には1レスポンス

  1. ■気になるデザイン グリーンランド航空の飛行機はなぜ赤い? http://bit.ly/b8PeZI

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