●佐藤弓生「うたう百物語」を読む(メディアファクトリー、2012)。雑誌「幽」に「短歌百物語」として掲載されたものに書き下ろしを加えた100話。なんだって、百物語で100話揃えてはあぶないんじゃないのか。よく見ると、99話までがそれぞれ見開き2ページに短歌と掌篇の構成だが、100話目だけが形式を変えて掌篇のみだ。
作者は歌人。1300年の長きにわたる歴史を考えると、「そこにどれほどの妄執、恋着、怨念がこもっているものか、漠然とおそろしくなります」という。この百物語は、怪しい短歌百首を紹介しながらその中の物語を読みといていく、という構想だったが、短歌の前に立ったとき物語は中からではなく外から来たそうだ。
だから、500字ほどの掌篇は、短歌の背景を解釈するものではない。「短歌が呪文のようにはたらいて、奇妙な体験、想像、人から聞いた話などが呼び出されて混じりあい」500字ほどの文章になっている。掌篇はちょっとこわいのもあり、妙なものやユーモラスなものもあり、よくわからないものもあるが、なかなか味わい深い。超短編ってとても潔い。すぐ読み終えられるし。
仮名を秀英3号で組んだ本文と短歌がじつに美しい。字間も少し空け行間も広い。天地や小口の空きも広めで、なんだかなつかしの活版の雰囲気がある。久しぶりに見る組版がきれいな本だ。装幀は名久井直子。黒田潔の装画もすてき。
この本は近現代の名句案内でもあるらしい。掌篇の元となった短歌の中から、わたしが短歌はよくわからないなりに、これはすごいやと思ったいくつかのうちの三句を挙げておきたい。
ひら仮名は凄じきかなはははははははははははは母死んだ 仙波龍英
深々と人間笑ふ声すなり谷一面の白百合の花 北原白秋
産むあてのない娘の名まで決めている狂いはじめは覚えておこう 林あまり
(柴田)
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●夢で「今日は911」だと人に話していた。目が覚めたら本当に9月11日だった。あれから7年。
昨日書いた「今だと違う感じ方になるような気がする」。ミュージカル『エリザベート』もそう。宝塚初演を観た時は、自由に生きられないエリザベートに同情した。今は姑のゾフィーの気持ちがわかる。王家を続かせるためにはエリザベートみたいな枠にはまらないタイプは困るし、そのエリザベートが子育てしたなら、どうなるか想像がつく。だから、子供を取り上げて教育しようとしたのだろう。国のことを、王家のことを第一に考えていたのだなぁと。 (hammer.mule)
http://www.tohostage.com/elisabeth/ エリザベート
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