●1982年のアメリカ映画「愛と青春の旅立ち」を見た。「愛と…………」というよくある邦題はあまりに陳腐だが、原題の「An Officer and a Gentleman」(士官と紳士)では絶対ヒットしなかっただろう。映画を見ないとその意味はわからない。
だらしない生活を送っていた若者ザックが、海軍士官養成学校に入り、自分の手で夢を実現していく話である。自堕落な父は元水兵、母親は彼が13歳の時に自殺している。暗く惨めな子供時代を、ザックはジェット機のパイロットになるという夢にすがって生きて来たのだ。
学校では13週間にわたる苛酷な訓練が続く。鬼軍曹が生徒たちを徹底的にしごく。入校のシーンでは士官候補生を並ばせ、下品な言葉で罵倒しまくる。弱腰の士官候補生には容赦なく任意除隊をつきつける。しかし、この無慈悲な鬼軍曹がキーマンであることは容易に想像できる。
ザックは不正を犯し、鬼からしごきにしごかれ、罵られ、任意除隊を迫られる。それまでクールだったザックは「ここ以外に行くところがないんだ!」と感情を爆発させる。当時(ベトナム戦争後)のアメリカでは、このシーンに共感する人が多かったという。
猛訓練の合間にはロマンスが生まれる。ザックはなにか事情のある家庭出身の、女工ポーラと恋仲になる。じつは玉の輿狙いの接近であったが、ザックは本気になり、卒業したら迎えに行くと約束する。だが、エリートである士官になれば、女工相手ではアンバランスだ。ザックは逡巡して距離を置き、プライドの高い彼女も身を引く。同時進行で、ザックの親友ウォーリーとポーラの女工仲間リネットとの恋愛も描かれるが、こちらは悲劇に終わる。4人の男女は、見かけよりよほど未熟であった。もとい、2人の男は、だ。
終りすこし前まで分からず心配なことは、鬼に楯突いて任意除隊を口にしたザックはどうなったのか。ザックはポーラを捨てるのか。DVD最後の2チャプターは感動のシーンがいくつもあって、ちょっと涙ぐむ。
この映画は、主人公カップルの話だけでなく、士官たるものは紳士であらねばならない、ということを鬼軍曹が若者たちに叩き込む話でもある。意地悪な教官に思えた軍曹は、じつに任務に忠実な人物であった。「An Officer and a Gentleman」ってそういう意味なんだと思う。なるほど、これが「名画」だということが理解できた。鬼軍曹役は1982年度アカデミー助演男優賞を受賞している。(柴田)
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「愛と青春の旅だち」
●去年の話。ジョギングの帰り道。その日は寝坊してお昼前になってしまったため、大通りにはたくさんの人がいて走ることはもちろん、歩く時に人を追い越すのも一苦労。ひとつ中に入った通りを軽く流すことにした。
オシャレな喫茶店や和菓子のお店などを見つけて楽しい。と、コーヒーの良い香りがしてきた。ちゃんとデザインされたロゴや外観は、上品で地味だったため、香りがしなかったら見逃していたと思う。
あ、コーヒー豆屋さんが出来たんだ、と、入り口に貼られていたA4サイズの紙の開店案内を見ていたら、中から女性がドアを開けて出てきて、どうぞと。その時の彼女の笑顔が素敵で、入りたいと思ったものの、何しろジョギング途中。
汗だくの上、もしものコンビニ用にVISAのIDカードを持っているだけで現金はなし。それを伝えたら、そうですか、今日は何時までやっていますからと笑顔で言われ、家から一駅はあるのに、すっかり買う気に。ほんとに感じのいい人だったの。
うちのコーヒーメーカーは豆をひくところから自動でできる機種なのに、手入れの時間がもったいない気がして全然使っていなかった。久しぶりに豆をひく時の香りを楽しみたいというのも理由。
夕方、スーパーに行くついでに足を延ばし、再度ショップへ。と、彼女は忙しそうで声をかけられない。店長らしき人は他のお客さんに、コーヒー豆についての蘊蓄トークで忙しそう。説明聞きたかったな〜。続く。(hammer.mule)