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写真を楽しむ生活

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カテゴリ ‘コラム’ のアーカイブ

■ところのほんとのところ


展覧会の準備と写真集の制作と


所 幸則 Tokoro Yukinori


●「PARADOX─TIME アインシュタイン・ロマンスをめぐる冒険─所幸則写真展」


7月1日から開催される大型個展「PARADOX ─TIME アインシュタイン・ロマンスをめぐる冒険─ 所幸則写真展」(ESPACE KUU 空 大正大学 五号館1F)。テーマは1セコンド〜アインシュタインロマンへの流れです。詳しくは次回。
http://taisho-kuu.tokyo/paradox/

PARADOX─TIME アインシュタイン・ロマンスをめぐる冒険─所幸則写真展

PARADOX─TIME アインシュタイン・ロマンスをめぐる冒険─所幸則写真展


キュレーターの太田菜穂子さんにはこのように書いてもらいました。


|Curator Statement|
都市の時間、現代における時間への考察へのお誘い


過去から未来に向かって流れ続ける時間、私たち人類はその時間の運動の中で、一瞬たりとも休むことなく、ひたすら“その先へ”と突き動かされて生きてきました。


それは千年前の百年前も同じこと、ただ21世紀が過去の時代のどれとも圧倒的に違うのは、その場に存在している時間への認識が恐ろしいほど希薄になってしまったことです。


現代人の多くは、SNSの過激なまでの急速な進歩の波の中、目の前よりも他の何処かの時間に関わることに大いなる神経を使わされています。


一体、私たちは何に急かされ、“今、ここで生きる”という唯一の確かな時間との関係性すら、放棄しようとしてしまったのでしょうか?


本展覧会は、人間の支配を超えたこの存在、「時間」について、写真を起点に多角的にその本質に迫ってみたいと考えました。


「時間」へのキーワードを整理し、テーマを投げかけるのは、所幸則。1秒間に3回のシャッターを切る「One Second」という手法で、都市における時間の姿を捉えた写真家です。


彼の問いかけにさまざまなジャンルのクリエイター、アーティストたちが応えるという展開で今回の展覧会は進行します。時間という制約、時間という空間、そこでどのように写真とアートが呼吸をするのかを、皆さんと共有したいと考えています。


写真家を起点とし、複数のクリエイター、アーティストを招いて展開する今回の試み、アーディエンスの反応がなによりも重要なポイントになるはずです。この挑戦にもっとも重要な役割を担う当事者として、どうぞご参加ください。心よりお待ち申し上げます。


【何かを学ぶためには、自分で体験する以上にいい方法はない】
アルベルト・アインシュタイン


●タブロイド誌の制作と写真集の造本と


この展覧会用にタブロイド誌を作ることになって、[ところ]はよろこんでいたのだけれども、いわゆる小さめの新聞で8P、内容を決めて埋めていかなきゃならない。


太田さんや僕の文章で1P、作品で2Pは埋まるとしても、写真ばっかじゃタブロイドとしてつまらないので、一緒にコラボレーションをする音楽家、ダンサー、舞台監督、渋谷を撮った時に世話になった建設会社の人、雑誌の編集長、建築家、絵描き、写真家、キュレーター、コレクター、そしてファンにも連絡のつく限りコメントを頼んでみました。


急なことだし、半分ぐらいは断られると思ったので50人くらいに出したら、断る人がいなくて、紙面を埋めつくつくさんばかりだ。編集者って大変だなあと、今更ながらにわかった[ところ]でした。


そして写真集も同時進行。蒼穹舎と詰めの話し合いをした結果、A4変形横長かB4変形横長で、100ページは軽く超える。B4で100ページ越えなら、今時なかなかない【奇書】みたいなものだといわれました。制作費も倍近くかかる。


だけど「アインシュタインロマン」は明らかに大きいほどいい。本屋にもあまり置かれないという可能性は高い。発行部数を半分にしてもA4の1.8倍はかかる。B4の変形横の写真集は手製本で一冊1500円〜1800円もかかるのだそうだ。


なんとか、ここからファンディングが伸びて欲しい。B4で出さないと……記憶に残る本にしたいです。よろしくお願いします。
< https://greenfunding.jp/lab/projects/1083 >


ちなみに超大型プリントによる展覧会もはじまります。二度と見れないサイズだと思います。ぜひ来てください。


●超大型プリントによる展覧会 所幸則「アインシュタインロマン」


〈H.P.FRANCE WINDOW GALLERY MARUNOUCHIより、所幸則「アインシュタインロマン」の開催をご案内申し上げます。走行中の新幹線の車窓からシャッターを切り、流れゆく風景をカメラに収める所幸則。


切り取られる一瞬の中で、被写体となる物は容易に形を変え、日常では感じ得ない“危うさ”を画面に漂わせます。緊張を孕んだ静謐な世界観を、この機会にぜひご高覧ください。〉


会期:6月19日(金)〜7月30日(木)11:00〜21:00 日祝11:00〜20:00
会場:H.P.FRANCE BIJOUX
東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング 1F
http://www.hpfrance.com/bijoux/


〈これは僕が少年の頃からのスーパースターであるアインシュタインの特殊相対性理論へのオマージュである。僕が生きている間には光に近い速度で地上を走りながら写真を撮る事はとても不可能だろう。せめてもの可愛い挑戦として300Kmで走る新幹線から撮る事で、一部の人には伝わるかもしれないというささやかな試みである。所幸則〉


オープニングレセプション:6月19日(金)19:00〜21:00
大口俊輔(音楽家)と樋笠理子(バレエダンサー)によるイベント


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >

■ところのほんとのところ


写真という概念の変化


所 幸則 Tokoro Yukinori


いま写真集制作のための最後の追い込みと、三つ連続である個展のため必死にがんばっている[ところ]です。


写真集制作のために、クラウドファンディングという仕組みを使い始めた時に書いた、ヘッドコピーのような言葉について今日は書いてみます。


< https://greenfunding.jp/lab/projects/1083 >


現在はかなり抑えたものになっていますが、当初はかなり過激で【これまでの写真という概念はすでに崩壊している】というものでした。


[ところ]もこれだけではあまりに説明不足だと思ったのですが、取りあえずキャッチーさを優先させていたのです。しかし、友人が「このコピーでは損をしてるよ」と言ってくれたので、もう少しヒント的な要素も入れようと考えて、【これまでの写真という概念は科学の進化と人間の意識の進歩によって変貌しつつある】にしました。


すると、今度はファンディング会社の担当の方から「少しだけ長すぎる」と言われたので、【これまでの写真という概念は科学の進化と人間の意識によって変貌しつつある】に若干修正しました。


本来何が言いたいかをここで書くことは、非常に長い文になるし普通の人は読みたくないかもしれないと思い、とりあえず説明するのもやめておきました。本当に言いたかったのは、「近代芸術の端っこにいた写真に、やっとチャンスが回ってきた」ということ。こう書くとますます混乱するだけだろうと、[ところ]も思うわけですが。


いわゆるフォトグラフというものは、小さな針穴(ピンホール)を通る光の現象がもととなっている。ピンホールをあけると、外の光景の一部分からの光が穴を通り、穴と反対側の黒い内壁に像を結ぶという現象。こそが写真の本質であり、この現象は古代から知られていたと歴史家たちもみとめている。


文献的にはそのレベルだろうが、まだ文字を持たなかった人類も偶然にそれを発見する機会はあったと考えるのが自然だろう。カメラ・オブスクラと呼ばれるものですら、10世紀頃にエジプトの数学者であり哲学者でもあるイブン・アル・ハイサムが、光学の書の中でこの現象について研究をして、すでに組み立てている。


[ところ]が何を言いたいかというと、現代のカメラとて同じ現象を再現しているに過ぎないということです。


昔は鑑賞するしかできなかったものが、なんらかのメディアに定着することができないかと考えて、ピューター(鉛とすずの合金)板をアスファルトピッチで被覆し、プレートを光にさらすことによって、最初の写真を撮ったとされている。


その後、蒸気を利用した湿板、写真乾板、そしてやっとセルロイドのフィルムが生まれ、一気にカメラが普及したのが35mmフィルムが市場を支配した1960年代から。


光の現象の発見のころから考え方は全く変わっていない事は事実であるし、銀塩が主流になってからを考えても、数千年の中の数10年にしかすぎない。


センサーの性能が急激に良くなってきてもう10年以上になる。ピンホールを通る光の現象のなかで、センサーは銀塩よりも長い時代、中心的存在として君臨するかどうかはわからないけれども、銀塩よりも多くの可能性を秘めているのは確かだろう。


第一に、現像液やフィルムがある程度多様だった時代が終わり、その代わりにRAWデータを現像するということにおいて、今の銀塩フィルムが無くしてしまった多様性があるということ。


第二に、印画紙も銀塩はどんどんと種類が減っていっているのに対して、プリント用紙は今や銀塩の全盛期よりもはるかに増えていっていること。


第三に、「しょせんデジタル」という人がいるが、プリントした時点でそれは実在する紙にあるアナログ物であるということ。


第四に、銀塩の進歩のスピードよりも、センサーや工学的な部分の進歩やソフトウェアの開発により、自由な発想のものが生まれ続け、銀塩よりも遥かに多彩な試みを、あらゆるアーティストがやってもやり尽くせないということ。


銀塩では出現した当時に、マン・レイのような作家があらゆる試みをし尽くした観があったのとは対照的である。この点が最も大きな違いだという気がする。ピンホールカメラで、手持ちで、昼でも夜でも撮れるといったことも、センサーの急激な進歩のおかげであるし、解像度も今では8×10を越えてきている。


写真という概念の変化は、考えれば他にもいくらでも出てくるのではないか。


もちろん、一回シャッターを切るたびに快感と喜びがある、手触りのいい銀塩時代の名機で楽しむのも素敵な趣味であることは間違いがないし、それはある程度残っていくであろう。


かくいう[ところ]だって、たまにはかつての相棒ニコンF2フォトミックや、ハッセルブラッド500CMのシャッターを押してはなつかしいと思い楽しむこともありますが、こと近代芸術においては、第四の要素は非常に大きな問題であると思われるのです。この話はまた次回に。


さて、6月1日から茅場町の森岡書店にて個展「僕が愛した渋谷、そして銀座」が始まっています。また、所幸則写真集「ONE SECOND vol.1 SHIBUYA」の販売もしています。


◎国内外で精力的に活動している所幸則は、街の風景の儚さを的確に表現するため、通常の撮り方ではなく、1秒間の経過を3ショットで撮しとめる、One Secondという独自の技法を用います。


今回は、所幸則のホームタウンであった渋谷に加え、同じ技法で撮影した銀座の光景を展示します。また、森岡書店スペシャルプリントとして、330mm×220mmサイズのイメージを制作しました。


森岡書店茅場町店が入居する昭和2年築の建築とあいまって、時間の流れとともに変化する人と街の儚さは、むしろ、強度を増します。写真の彼方に広がる現実と非現実の揺らぎをぜひご覧ください。[森岡督行]


会期:6月1日(月)〜6月13日(土)13:00〜20:00 6月7日(日)定休
[ところ]在廊日:6月13日(土)午後


会場:森岡書店 東京都中央区日本橋茅場町2-17-13 第2井上ビル305
TEL.03-3249-3456
< http://www.moriokashoten.com/ >


大好きな作品の一つなんですが、[ところ]のミスで作品集に入れるのを忘れてしまった作品があります(↓)。森岡書店では展示だけではなく、この作品をつけて写真集の販売もします。小さいですがオリジナルプリントです。13日間だけの特典です。よろしくね。


・渋谷ハチ公前スクランブル交差点

所幸則「渋谷ハチ公前スクランブル交差点」

所幸則「渋谷ハチ公前スクランブル交差点」


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >

■おかだの光画部トーク[136]


写真クラウドサービスの決定版になるか?「Google Photos」


岡田陽一


3.11後のデジクリ(日刊デジタルクリエイターズ)の連載で、「写真はクラウドに保存しましょう」と何度も書いた。フィルムで写真を撮っていた頃と違って、デジカメ、スマホで写真を撮ることが当たり前の今は、データをしっかりバックアップ取っておかないと、何かあったら写真が残らないからだ。


どうでもいいような写真も増えてはいるが、何年、何十年後に見るとそんな写真も想い出になるかもしれないし、子供や家族の写真などは、時が経つほど大切なものになるはずなので「消えちゃった……」では済まされない。


地震や津波などの大災害だけでなく、スマホがゲリラ豪雨で水没したり、不注意で落として壊れることもあるだろう。スマホや、デジカメで撮った写真が常にクラウドにバックアップがある状態だと、家が火事になったとしても、写真はインターネット上のどこかにあるので安全だ。


そんなバックアップ先として、先週、Googleが出したサービスが「Google Photos」だ。


以前からGoogleは、Picasa ウェブアルバムや、Google+のフォトアルバムというサービスが写真の保存や共有であったが、


・おかだの光画部トーク[61]おすすめ Google+ Picasa ウェブアルバム
(2011年9月6日)
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20110906140100.html >


今回、新たなサービスがリリースされた(※過去のサービスがアップデートされたのかと思ったが、まだPicasaはそのまま残ってるようだ)。


こちらが紹介動画
< https://youtu.be/ydBjsZnHrwM >


Android、iOS、Webブラウザから使える。元の写真からは圧縮がかかってしまうが、1,600万画素までの画像を無料で容量無制限で保存できる。


仕事の写真なら、元画像をそのまま圧縮をかけずにバックアップする必要があるが、普段の写真で、想い出としていつか見るという用途であれば、圧縮がかかったとしても、無料で容量無制限というのは、生活の一部としてスマホを使っている以上、とてもありがたい。


圧縮をかけずに元画像を保存することもできる。この場合、Googleアカウントについてくる15GBが消費され、必要であれば追加で購入する。普通の使い方であれば、無料で無制限の方が気兼ねなく使えていいと思う。


PCのブラウザで
< https://photos.google.com/ >
にアクセスするか、スマホからはアプリをインストールして自分のGoogleアカウントのIDとパスワードを入れると使うことができる。
< https://flic.kr/p/tFiR3f >


< https://flic.kr/p/tXTxGe >
まずは、高品質(無料、容量無制限)を選んでおく。


Google Photosのことはあまり意識する必要はなく、普段通り、iPhoneで写真を撮るだけでよさそうだ。しばらくMacとiPhoneで使ってみて、詳しい使い勝手を次回以降レポートしたいと思う。


【岡田陽一/株式会社ふわっと 代表取締役 ディレクター+フォトグラファー】
< mailto:okada@fuwhat.com > < Twitter:http://twitter.com/okada41 >

■わが逃走[155]


豪雨と豪雪の金沢でトマソン階段を歩く。 の巻


齋藤 浩


このところ金沢出張が多い。


金沢はよいところであるが、東京から行くとなると新幹線で一旦越後湯沢まで出て、直江津経由で向かうか、羽田からまず小松空港に向かいバスで40分かけて市内へといった具合に、妙な遠回りを強いられるのだ。


私は空港での待ち時間がクヤシく感じる性格なので俄然陸路派である。


しかし、時間的には早いのだろうが、越後湯沢まで行ってまた戻って来なければいけないことにもクヤシさを感じる。


信越本線の横川・軽井沢間をぶった切ってしまわなければ、時間はかかるかもしれないが高崎、軽井沢、長野、直江津、富山とごく自然なコースで金沢に向かうことができたのだ。


寝台特急が健在なら、仕事を終えた後に金沢駅から『北陸』に乗車、日本酒と鰤の寿司なんぞ食べながら個室でゆっくり休んで、翌朝上野に着くこともできた。この方がキモチ的にはるかに楽だったのにー!


しかし、もうすぐ北陸新幹線が開通する。旅情には欠けるかもしれないが、金沢までわずか2時間半。そしてなによりも不自然な遠回りをしなくてすむのは精神衛生上とてもよろしい。


だがそうなると日帰り出張がデフォルトになってしまいそうでコワイ、といえなくもないのだが。


さて、そんな北陸新幹線開通を来月に控えた2月某日、金沢出張が決まった。


朝から打合せということになると前泊は必須だし、一仕事終えて北陸の海の幸と旨い酒、ということになれば東京に戻るのは翌日しかない。


泊まりとなると、なんとか早く出るか遅く帰るかして時間を捻出し、その地ならではの風景、できることなら歴史と伝統のある坂道を歩きたくなるのである。オレの場合。


という訳で金沢の地図を見る。


浅野川と犀川にはさまれた地形。間にググッと盛り上がる河岸段丘が小立野台地だ。Googleマップで近寄ってみると、おお、階段道がたくさんある!


というわけで、オレンジ色で印をつけたのが、今回気になった坂道。小立野台地の南西側。周辺の道のくねり方、地図を見るだけで歴史を感じるぜ。


(fig01)

(fig01)



こういう複雑な線で構成された町は、行政や宅地開発業者主導ではなく、自然と人々が集まって集落が形成された場合が多い。定住する理由がそこにあるのだ。これぞ本来あるべき姿。


私はいわゆるニュータウンの区画整理されすぎた土地に、違和感を覚えながら育った。そのせいか、古くからその地に人々が暮らす意味を感じることのできる町に住みたいと思っている。


そういった訳で、このあたりの町並にはとても魅力を感じるのだ。ちなみに私の育った町を地図で見るとこんな感じ。


(fig02)

(fig02)



地形が完全にリセットされた上に造られたため、非常に単調な線で構成されている。散歩していてもこの町ができる前がどんな風景だったかを知る術はないし、そのせいか、ここで30年近く暮らしたにもかかわらず、この土地に対する愛着もあまりないのだ。オレの場合。


さて、朝5時半に起きて東京を出て、金沢に到着したのは正午だった。ホテルに荷物を預け早速散歩にでかける。


外は暴風雨、ところにより雷を伴う。ちなみに翌日から豪雪の予報。傘がまったく役に立たない。それにもめげずに美術の小径、大乗寺坂、嫁坂、新坂、白山坂と小立野台地のエッジに沿って歩いてみた。


最も気になっていたのが嫁坂だ。(地図左上の印)


前回の旅でタクシーの運転手さんにも美しい坂としてすすめられ、その後調べてみてもさまざまな物語を持つこの坂の背景に歴史的風情を期待していたのだ。で、到着してみると確かに良い坂ではある。しかし…。


急傾斜ナントカ地区に指定された影響か、以前は密集していたであろう周囲の住宅がまばらになっていた。


さらに市の『景観再整備なんちゃら』が行われたせいか、路面には派手な石板が貼られたうえ蹴上の高さが統一、大きくきらびやかな手すりが設置されるなどして昔ながらの趣をイメージしていた私にとっては、残念ながら味気なく思えたのだった。


しかし、斜面に沿って進むといくつもの階段道があり、有名じゃない(=名前のついていない)物件はわりとイイ感じだった。


ひとつひとつ語りたいが、今回はナントカ坂(名称不明・地図右下の印)を紹介しようと思う。クランク状に曲がりながら上るドラマチックな階段だ。


(fig03)

(fig03)


(fig04)

(fig04)


最初の角になんとトマソン物件『無用門』が。ブロック塀と化した二度と開くことのない門。その奥にも階段は続く。


(fig05)

(fig05)



この門が現役だったとき、この上に住む人の暮らしはさぞ素晴らしかったことだろう。階段道から門をくぐって自分だけの階段を登り、家に着く。振り向けば金沢の景色が一望できる。うーん、素敵だ。


さらにナントカ坂を上る。次の角を曲がり、振り向く。


(fig06)

(fig06)



冬のしかも雨の日だというのに思わず感嘆の声が出てしまう。素晴らしいじゃないか、ナントカ坂。季節や時間を変えて何度も訪れ、移り変わる色彩を楽しみたいと思うオレなのだった。


翌日は仕事。金沢地方は大雪となった。


翌々日の朝も雪。昼の新幹線で東京に帰る予定だが、どうしても雪のナントカ坂を見てみたくなり早起きして現地に向かってみた。雪の中の階段を注意深く進むと、一昨日の夕方とは全く違う景色がそこにあった。


(fig07)

(fig07)



【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。

道程青年団(ザ・ディスタンス)第一回展覧会を開催


齋藤 浩


第一回展覧会の概要


写真家小河孝浩とグラフィックデザイナー齋藤浩は、この度フォトグラフィユニット“道程青年団”(ザ・ディスタンス)を結成、第一回展覧会を2014年9月3日より宮崎県立美術館にて開催いたします。


展覧会タイトル:旅の途中〜出会いこそ人生の醍醐味〜
アーティスト:小河孝浩×齋藤浩
会場:宮崎県立美術館 県民ギャラリー1,2
会期:2014年9月3日(水)〜7日(日)(会期中無休)
開場時間:10:00〜18:00(最終日は16:30閉場)
観覧料:一般400円(高校生以下無料)
http://www.miyazaki-archive.jp/bijutsu/


[ギャラリートーク]
9月6日(土)13:30〜15:00 1Fアートホールにて 作家による写真論的世間話 入場無料


[フロアレクチャー]
土曜を除く毎日開催。平日16:00、日曜14:00 会場にて作家による作品解説的世間話


お問合せ先 小河写真工房 E-mail opf@nishimera.net


憧れのギャラリートークデビュー


そう! 憧れのギャラリートークデビューなのだ。たのしみだなあ。


デザインの講義なんかだとそれなりに段取りが大切だったりするけど、今回の写真展ではその場のノリと勢いに任せちゃう感じだろうか。


私も小河孝浩も極限まで研ぎすました写真を、気合いじゅうぶんに「これでもか!」と見せつけるつもりではいるけれど、これらはある意味ものすごく敷居の低いカジュアルな風景やモノたちの写真でもあるのだ。


漫才的写真ショーになる確率も高い。客席からいろいろとツッコミが入る感じか。いいねえ。本人達も目からウロコな意見を是非聞きたい!


また会期中は「フロアレクチャー」と称し、ギャラリーで来場者とアカデミックな写真の解説をするふりをして世間話に興じます。こちらもたのしみ。


展示予定作品の一部


小河孝浩

小河孝浩


齋藤浩

齋藤浩


小河孝浩

小河孝浩


齋藤浩

齋藤浩


小河孝浩

小河孝浩


齋藤浩

齋藤浩


小河孝浩

小河孝浩


齋藤浩

齋藤浩


小河孝浩

小河孝浩


齋藤浩

齋藤浩


示し合わせたわけじゃないのに、妙に対比的。そして妙に通ずるものがあると思う。正直言って、想像以上の相乗効果。意味のある2人展になると確信したオレであります!!


次に、小河孝浩と齋藤浩の紹介文。これも名文が揃ったので、ギャラリー入口にパネルにして掲出しちゃおうかな。


小河孝浩のこと


小河さんとは10年前にネット上で知り合いました。まるで子供の頃からの長い付き合いのような気がしていますが、改めて思い返すと実際に会ったのは昨年6月のことで、これには我ながらオドロイてしまいます。


想像通りの九州男児、義理堅く漢儀あふれ、写真と西米良のことを語りはじめたら止まらない。


小河さんから故郷の話を聞く度、自分も西米良出身のような気がしてしまうから不思議です。これこそが小河孝浩の力。故郷と人々を繋ぐ力です。


彼の写真の魅力をひと言で表現することはできませんが、あえて言うなら「未完結」だと思います。


絵の中の行ったことのない風景、会ったことのない人物に見る者の思い出が重なることで完成し、あたかも自分の記憶のように心に留まってゆくのです。《齋藤浩》


気配を感じる写真


写真を撮り始めて40年が経つ。写真雑誌を読みあさって、ありとあらゆる写真を真似た中学時代。ピント、露出、構図。セオリーどおりの写真を撮るが満足できない。職業として生計を立てると、撮影は楽しかったが、出来上がった自分の写真を好きにはなれなかった。


帰郷した頃、仕事で撮った写真を見た息子が「お父さんの写真ってつまんないね。僕は西米良で撮った写真の方が好きだよ」と言った。切り花が溢れんばかりに生けられた、無駄のないきれいな写真だった。


ある時、余計なものだと決めつけていた人工物が、自然と共生している景色に惹かれた。人の暮らしや気配を感じて、自分の写真を好きだと思えた。


誰でも出くわす日常の風景だが、写真として捉える重要な条件は、撮影者の心の在り方だ。あれから13年、大学生になった息子は父の写真を観て何と言うだろうか。《小河孝浩》


小河孝浩◎略歴


1961年宮崎県西米良村生まれ 在住 13歳の頃白黒写真の引き伸し機を伯父から譲り受け、現像液から写真が生れ出る瞬間に感動して撮影を始める。


高校3年生の時に全国規模の写真コンクールで一番になり、その気になって広告写真家を志し上京するも、凄まじい修行が待ち構えており、かなり凹んだが耐え抜く。


1988年独立。憧れの南青山に撮影スタジオを設立するが、あまりにも同業者が多い事を知ってがっかりする。


40歳まで広告写真を中心に人物、静物の撮影を手掛ける。2001年、西米良村に帰郷。以後、村をテーマにした写真展や写真集で継続的な発表を続けている。2013年、前年に刊行した写真集「結いの村」が宮日出版文化賞を受賞。県内外で写真展多数。


著書『おかえり』(石風社刊)『結いの村』(同)『西米良神楽(撮影)』(鉱脈社刊)『オガワタカヒロ 毎日行進』(忘羊社/9月発刊予定)日本広告写真家協会(APA)会員
小河孝浩公式Website http://www.ogawatakahiro.com/


齋藤浩のこと


顔の見えない付き合いが大嫌いである。出会いはクリエーター仲間が自由に繋がるWebサイトに参加していた10年前、面識のない齋藤氏の日記を読んでメッセージを送ったことがきっかけだった。


そのサイトが閉鎖になり、Facebookの登場でネット上にて再会の後、遂に齋藤氏と対顔する。嫌いなはずだったバーチャルの世界で、旧知の友に出会えた「錯覚」に驚いた。


彼の写真には無駄がない。削ぎ落されたシンプルな画面だが、被写体の存在が最大限に伝わってくる。感性のアンテナに狙われた標的は、齋藤浩の適切なフレーミングによって美しく切り撮られる。それは技術だけでは真似のできない、圧倒的センスから生み出される写真といえる。《小河孝浩》


削ぐ写真


デザイナーとして忘れてはならないこと。良いデザインとは騒いだり飾ったりすることではなく、必要な情報を簡潔かつ的確に伝えるために工夫することだと思うのです。


ということは、カメラ一台でそれを作ることも可能なのでは?? と思い立った齋藤浩はその日からノンコピー・ワンビジュアルのポスターをデザインするつもりでシャッターを切ることにしました。テーマは「趣味の構造美」。


私の撮る「構造美」は、暮らしてゆくための工夫の痕跡であることが多いように思います。本来人が住まない場所に無理矢理造られた、いわゆるニュータウン育ちのせいか、人がそこに暮らす必然のある場所で出会えるカタチにとても魅力を感じるのです。《齋藤浩》


齋藤浩◎略歴


1969年生まれ(生まれが千葉で育ちがサイタマ)。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟りデザイナーをめざす。


武蔵野美術大学短期大学部デザイン科卒、同専攻科修了。1999年独立。有限会社トンプー・グラフィクス主宰。


文化庁メディア芸術祭優秀賞、世界ポスタートリエンナーレトヤマ銅賞×2、ニューヨークADC merit賞、準朝日広告賞、朝日広告賞入選×3、毎日広告デザイン賞優秀賞・奨励賞、グラフィックアートひとつぼ展グランプリ、ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ入選、その他受賞多数。ニューヨークADC、日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員。


2007年より日刊デジタルクリエイターズ(www.dgcr.com)にてコラム『わが逃走』連載中。
tong-poo graphics http://www.tongpoographics.jp


西米良村について


こうして読んでみると、図らずも対比と調和とでもいうような概念が出来上がっているみたい。そして西米良村についての紹介です。なぜこの文が必要なのか。それは、最後まで読んでいただければわかる!


最後に小河孝浩の出身地であり、道程青年団(ザ・ディスタンス)結成の地でもある宮崎県の西米良村について紹介したいと思います。


県西部に位置する山々に囲まれた静かな村。風光明媚にして、食べ物は旨く、温泉も最高。思わず撮影旅行に行きたくなる、絵になる村。それが西米良です。


主要産業は農林業。近年は柚子やほおずきの栽培も盛んに行われています。宮崎で最も人口の少ない村でありながら、地域に根ざした体験ができる「おがわ作小屋村」が国交省「地域づくり表彰」最高賞を受賞するなど、その身軽さをポジティブに捉えた行政も注目されています。


そして九州写真史を語る上で欠かせない人物、写真家・浜砂重厚 安政3(1856)─昭和6(1931)の出身地もまた西米良村です。


彼が100年前に撮影した風景や人々の暮らしは、九州そして日本の歴史・風俗を研究する上でも貴重な資料となっています。その浜砂重厚、実は西米良村の初代村長でもあったのです。


つまり、西米良は村として誕生した時から写真と所縁のある地だったのです。


さて、彼が写真家として活躍した100年後にこうして運命的な出会いを遂げた道程青年団(ザ・ディスタンス)、「こいつあ重厚さんのお導きかもー!」などと思わなくもない。


こうなると俄然テンションが上がり、ここだけの話、西米良村を「写真の村」として盛り上げてゆく構想が水面下で進行中のようですよ。


間に合うのか??


7月10日、プレスリリースの配布がようやく完了した。今日が24日だから写真展まであと41日。これから作品のプリントと案内状の制作と作品集のデザインをしなければならない。


間に合うのか?? と思い、心配して小河孝浩に相談してみたところ、彼は、「ギリギリまで撮影する主義だから。」だそうで、それ聞いちゃったら、まあなんとかなるかなー。なんて思った次第。


しかし油断は禁物である。密度の濃い写真生活は続く。


※東京やその他の都市での巡回展は未定ですが、是非やりたい。ギャラリーを(比較的というかかなり安く)貸して下さる親切な方を常に募集しております。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。

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