鈴木光雄写真展「Sakura」
会期:4月30日(水)〜5月11日(日)月火休
会場:72Gallery(東京都中央区)
・トークイベント・ミニ写真集付(有料)
5月3日(土・祝日)13:00〜15:00
・レセプションパーティー(予約不要・参加費無料)
5月3日(土・祝日)15:00〜
http://tip.or.jp/suzuki_mitsuo.html
“Sakura”枯葉の肖像
私の家のそばに、一本の桜の老い木があります。その木は誰に手入れされることもなく、毛虫や昆虫が棲みつき、四季を通じて自然の逆境にさらされています。桜は春の来訪を告げる花の一つであり、日本人には、満開に咲き誇り、潔く散るこの花を愛でる習慣があります。
三月、四月ともなれば、日本各地で美しい景観を映す桜並木を目にすることができ、そのほとんどは、害虫の駆除をするなどきちんと維持管理されています。そのせいか、葉ぶりはどれもほぼ均一で、きれいな形のまま散り落ち、枯葉となります。
秋になり、家のそばの老木から散り落ちた葉を拾ってみると、それらはなんとも不格好で、葉ぶりも大小さまざま。おまけにどの葉にも大きな虫食いの跡があり、整った葉の原形を留めているものは一つとして見あたりません。その個性的で力強く、存在感のある枯葉たちが生きた、わずか半年の軌跡、それを表現したものがこの作品群です。
桜と聞くと、通常は花弁の部分を思い浮かべます。しかし、どんな木にも骨格となる枝幹があり、
光風を楽しむ葉々があり、地中深く滋養を求める根があります。そして、それぞれが役割を果たしてこそ、初めて美しい花を咲かせることができます。私にとってこのユニークな表情をもつ枯葉の一葉一葉は、美しく咲く花とはまた違った、抗いがたい魅力を持ったものなのです。