「林明輝[ドローン]写真集 空飛ぶ写真機 大地から見てきた風景を上空から再発見」を鑑賞した(平凡社、2015、A4変 112ページ)。空撮の写真はいままでも見てきたが、この写真集に収録された作品はだいぶ印象が違う。まさに鳥や昆虫の目線といっていい。セスナやヘリは航空法の制限で150メートル以下に下りられない。ドローンはそれに縛られず自由な撮影ができる。作品集では60余点の臨場感あふれる美しい風景が展開する。画角は35ミリフルサイズ機で16.35ミリ相当だという。望遠の切り取りではない。日本の自然風景を再発見、再認識するという観点からの撮影は、すべて「空飛ぶ写真機」による。
林明輝さんは2013年からドローンを使い始めて、2年間での撮影日数は450日以上、日本全国100か所以上に及ぶ。撮り尽くされたと思われる有名な景勝地であっても、ドローンからは新鮮な風景が見えてきたという。今年5月にソニーイメージングギャラリー銀座で写真展「空飛ぶ写真機 〜ドローンで見た日本の絶景〜」を開催した。ドローンにソニーのα7シリーズを搭載しているからだ。高精細な画像が撮影できるローパスフィルターレスのα7Rがメインで、気象条件や撮影時間帯などによりブレに強いα7IIで撮影という使い分けをしている。軽量ミラーレスのおかげで、一回の飛行時間が20分以上確保できる。
ドローンがあれば誰でも空撮できる、とはいえない。オート機能だけでは、気流の乱高下など自然現象には十分に対応できない。上空から送られてくる映像をモニターで確認しながらフレーミングし撮影するが、機体を安定させるには非常に高度な操作技術が必要だ。露出はマニュアルで固定してあるので、設定の変更はドローンを一旦着陸させて再設定しなければならない。ドローンからの空撮には手間と時間と技術が必要なのだ。最も重要なのは、地上で素晴らしい作品が撮れる感性や技術がなければ、空撮で感動的な作品を撮ることはできないということだ。素人がドローンで作品を撮るのは絶望的にハードルが高い。
ドローンを使った空撮の場合は、基本的には撮影許可が前提となり、その点が一番神経を使ったところだと林さんは言う。ドローンを飛ばせる場所は、道路交通法、航空法そして各自治体の条例などで規制されている。各法令を遵守した上で、ドローンを飛ばすエリアを管理している役所などに注意事項を確認して、撮影許可を取る必要がある。ドローンで撮影された日本列島は美しい。だが、ドローンは使い方によっては非常に危険な代物である。もともと軍事用に開発されたものだ。今さらなる規制が検討されているようだが、それは仕方ないと思う。法に従って写真撮影を楽しんでもらいたい。
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「林明輝[ドローン]写真集 空飛ぶ写真機 大地から見てきた風景を上空から再発見」