●万城目学の「ザ・万字固め」を読んだ(ミシマ社、2013)。ミシマ社のwebマガジン「平日開店 ミシマガジン」連載を中心にまとめたエッセイ集だ。この作家だからおもしろくないはずはないのだが、今回は品質にバラツキがある。ひょうたんを愛する「全日本愛瓢会」に入会した件、地元関西の話、東京電力株主総会参加レポートなど雑多な内容だ。6時間にわたる株主総会の描写は、さすが作家、じつに読ませるみごとな内容だった。彼は最悪のタイミングで東電株をしこたま買い、3か月で734万円を失った。他人の不幸は蜜の味だな。
驚くべきことに、万城目の書いた小説はすべて台湾で翻訳されているそうだ。「鴨川荷爾摩」とか。彼の小説単行本は台湾版の方が薄い。日本語の作品を中国語に翻訳したとき、必ずボリュームが減る。その理由は、日本語の語尾のバリエーションは中国語に変換できないからだという。「むっちゃおいしいでんがな!」12文字が「很好吃」3文字になる(極端な例)。
基本的に中国語は漢字のみで動詞を簡潔に表現するため、日本語に比べ一文が短くて済む。敬語や複雑な変化もないため、会話文ではさらに短縮可能だ。日本語はひとつの表現を多様に言い換え可能だが、中国語にはそれがない。ニュアンスが表現できないのか。日本語は本当にすぐれているなあとしみじみ思う。
さて問題は、この本の文章以外のクオリティである。なんだ、この最低な表紙は。けっしてヘタウマではない。味がある、なんて域にはない。正真正銘のヘタな絵である。文字もひどい。配置もひどい。配色もひどい。売り物でここまでバカなデザインを初めて見た。目次などでもこのヘタ字が出て来てウンザリ。デザイナーは勘違いしているのではないか。
書籍としてもヘンテコで、表3に奥付、表3対向に初出一覧などを刷るという、ありえない構造なのだ。スペースがなかったからではない。見返しの前にムダな白紙が3ページある。いったいどういう神経でこんな規格ハズレの本をつくるのか。デザイナーが無知なのか、あるいはやっぱり勘違いしているのではないか。「明るく、面白い出版社」をめざすのはいいが、美しい本作りのルールはきちんと守ってほしいものだ。(柴田)
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ザ・万字固め
●続き。技が出せない、という話で言うと、今回の引退試合での「石森・小峠 対 SUWA・平柳」戦がわかりやすかった。SUWAが倒れたまま反応しなくなった。後で知ったが頸椎損傷(!)だった。格闘技なら完全K.O.で石森側の勝利! なのだが、序盤で終わったらダメなのがプロレス。ましてや注目度ナンバーワンの引退試合興行だ。PRできずに終わりたくないだろう。
中途半端な形でのフォールではと、慌てて石森が派手な技を出してのフォール。残りの二人はフォール後にも場外で暴れてた。巻き戻してみたら、SUWAが反応しなくなった時、場外の二人は組み合ったまま止まり、SUWAらの姿を見ていたよ。(続く)(hammer.mule)