●武論尊「原作屋稼業 お前はもう死んでいる?」を読む(講談社、2013)。マンガ原作者・武論尊、別名・史村翔。超ヒット作「北斗の拳」はあまり好みじゃないから読まないが、池上遼一と組んだ作品は単行本を揃えて愛読した。wikipediaを見ると、この人はものすごい数のマンガ原作を手がけている。マンガ原作者といえば梶原一騎、小池一夫、その次くらいにエラいのだろうか。よくわからない。
「北斗の拳」誕生から30年という節目の年に、マンガ原作者という仕事が自分にとって何だったのかを振り返り、読者にはマンガ原作者の現実を知ってもらいたい、ということでこの本が生まれたという。12ページにわたる「ちょっと長いまえがき」を読むと、これはきっとマンガ業界の濃い話が満載のおもしろいエッセイかなと期待がふくらむ。ところが本文は、自伝でもない、エッセイでもない、虚実をないまぜにした、あまりガツンとこないフィクションであった。嗚呼、本格自伝を読みたかったんだよ。
29歳、独身、金ない愛ない希望ないの三重苦で人生に絶望しているオレ(ヨシザワ)が、酒場でブー先生(武論尊)と出会って、弟子入りを直訴する。唐突な無理筋イントロだ。それまではIT会社に勤めていて、創作の世界とはまったく無縁だった男が、奇人変人の編集者にしごかれ、ブー先生に原作者としての生き方やマンガ稼業のあれこれを教わりながら、悪戦苦闘して成長する姿を描く。だいぶご都合主義ではある。
登場するキャラクターやエピソードは実在の人物、団体とほぼ同じらしい。嘘もたっぷりまぶしてあるようだ。愛すべきキャラのブー先生はそのまんま武論尊だと思う。しかしながら、やっぱり「ちょっと長いまえがき」の内容をじっくり書いてほしかった。フィクション仕立てにして、自分もその中で泳がせ、あれこれ言い散らかすという手法は、イージーに走ったとしか思えない。もっと本音を聞きたい。いちおう面白いが、ずいぶんヘタな小説である。(柴田)
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原作屋稼業 お前はもう死んでいる?
●続き。入団して組に配属されると、人事異動はあるものの、他組への出演はほとんどない。ダンスの好きな人にとっては、ダンスの下手な組に魅力を感じず、観劇をやめることだってある。好きな組の観劇回数を増やしたいがために、他組を見ないという人もいる。
私は好きな組はあるものの、どの組もまんべんなく見るほうだ。好きな組と書いたが、これも作品によっては冷めたり、再燃したりである。いくらスターが頑張ってても、作品がつまらないとスターがスターでなくなってしまうのだ。
で、そういう他組を見ない人にとっては、一度も生で見たことのないトップらが出演し、好きな組のスターと共演(競演)するわけで、滅多に見られない特別な公演となる。(続く)(hammer.mule)