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カテゴリ ‘デジアナ逆十字固め…/上原ゼンジ’ のアーカイブ

上原ゼンジ


WEB上でのギャラリー「bitgallery」(ビットギャラリー)というのを始めた。自分が今見て欲しいという写真を公開する場であり、また私の好きな写真家にも声をかけて、コンテンツを充実させていきたいと思っている。


今までも自分のホームページやブログ、あるいは写真共有サイトなどで写真を公開してきたが、写真を見せるということに特化して、もう少し自分のイメージに近いギャラリーのシステムが作りたくなったのだ。



では、既存のシステムの何がいけなかったのか? まず、写真共有サイトの場合でいうとシリーズものをしっかり見せたいという場合には、ちょっと向いていないかなという気がする。たとえば、Flickrを例にとると、まず自分の写真をアップしたら、その中から写真をセレクトして「set」を作ることができる。


さらに、その「set」をいくつか組み合わせた「Collection」というまとまりを作ることもできる。だとしたら、シリーズとしての分類もできるわけだし、何の問題もなさそうだけど、作品を見せるということでいうと、ちょっとお手軽過ぎるかなという感じがするのだ。


私のFlickrの使い方としては、少し写真が溜まったら写真をアップして、既存のセットに組み入れたり、新しいセットを組んだり、という感じで、まあ自分の撮っている写真を気軽に公開する場として利用している。英語でのコミュニケーションは面倒くさいから、あまりコメントを付けたりということはしていない。あまり肩に力を入れず、日常的に写真を公開するための場として考えている。


ただ、ある程度の枚数がアップされていて、分類もされているので、仕事の依頼があった場合にメールでセットのアドレスを知らせれば、話が通りやすいというメリットはある。ちゃんと見たければ、スライドショーでフルスクリーンにしてみることも可能だ。機能自体は充実しているし、まるで問題なさそうだけど、やっぱり何かが違う。たとえば、そのフルスクリーンのスライドショー機能を使って見ている人って、あまりいないように思えるのだ。


そしてネットの利点というのは、次々にリンクをたどって移動していくことだから、サムネール画像をクリックしているうちに、どんどん違う場所に移動していっちゃうんじゃないかというおそれもある。Flickrであれば、当然別の人の写真に飛んでいくこともあるだろうし……。


つまり、ちょっとアップしてみたから、よかったら見てよ、というんじゃなくて、もう少しリキを入れた写真を、構成なんかも考えて公開したから、ぜひご覧ください、という場が作りたくなったということだ。


写真集を作るシステムもイマイチ


WEB上には写真集を作るシステムなんていうのもあるから、そういうのも利用してみたけど、それもまたイメージとちょっと違った。デザインの雛形なんかもあって、気軽にカッコいいデザインの電子写真集ができちゃうんだけど、いざ自分の好みに合わせてカスタマイズしようとすると難しかったり、やたらと目立つ広告が入ってしまったりで、これもちょっと不満が残る。


で、しょうがないから自分でやってみようと思ったのだ。これは写真家が自分でギャラリースペースを借りて運営をする自主ギャラリーの発想に似ているかもしれない。自分の見せたい写真を、見せたい時に自由に公開するという意味で。ただブログにちょこっとアップするのとは違って、もう少し見せ方を考えてみようというのが、このギャラリーの主旨だ。


写真集を作るとなると金もかかるけど、WEBであればコストは相当抑えられる。しかも、世界中の人が簡単に見ることが可能だ。写真家の中にはWEBで写真を公開することを嫌っていて、「見たければ写真展を見に来い」という人もいるし、小さいサイズの写真しかアップしていない人もいる。しかし私はケチケチせずに、どんどん公開すればいいじゃん、と思うわけだ。


もちろん、著作権を放棄してどんどん使ってくださいということではない。でも、オリジナルとして価値があるのは、きちんとプリントされ、エディションの管理もされたようなものなわけだから、誰かがダウンロードしてプリントしたとしても、特に実害はないんじゃないかと思う。もちろんWEBで見るのに合ったサイズのものをアップするわけで、オリジナル画像をアップするわけではないのだし。


ギミックなしでシンプルに見せたい


私が考えたのは、表紙や奥付も入れた写真集仕立てのスタイル。ただ紙の本じゃないんだから、見開きの必要はないし、ページめくりのギミックもいらない。シンプルで写真が見やすいということが重要だ。


いちおうそんなイメージは出来上がったが、残念ながらサイトを作り上げる技術自体は持っていない。そこで、テクニカル・ディレクションはトゴル・カンパニーの伊藤紀之さんにお願いした。一緒にやりましょうと持ちかけて、巻き込んでしまったのだ。


今後、少しずつだけど、コンテンツも増えていく予定。すでに自分の好きな写真家に声をかけ、オーケーも貰っている。私がこの連載で、紹介してきた写真家達だ。だから、あと何か月かすれば、私が好きで、みんなに紹介したいと思っている写真家の写真がじっくりと見られるようなギャラリーに育っているはず。今はまだ私と伊藤さんの写真があるだけなんだけど、ちょっと注目していて欲しいと思う。


◇bitgallery
http://bitgallery.info/


【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com
上原ゼンジのWEBサイト
http://www.zenji.info/
http://twitter.com/Zenji_Uehara

上原ゼンジ


「街道リぼん」で写真展をやります。今週末の6月25日(金)から27日(日)までの3日間。元々この「街道リぼん」の会期というのは変則的で、金土日の3日間を2回、計6日間やるというのが基本単位になっている。働きながら写真展をやる人も多いし、凝縮してやるという感じですね。


元々「街道」は尾仲浩二さんが運営していたギャラリーだけど、今年からは若い女性写真家、松谷友美さんと佐藤春菜さんが引き継いで運営している。この辺りの話は、このギャラリーが生まれた頃にちょっと書かせて貰った。そして今年の春にお二人から企画展の話をいただき、ありがたくお引き受けすることにした。会期は短いけど、毎日顔を出すつもりなので、私のツラを見てみたいとか、話をしてみたいという方はぜひお越し下さい。


尾仲さんとの付き合いは1986年から。私が「FOTO SESSION’86」という写真のグループに参加して、月に一度森山大道さんに写真を見ていただいていた時に、先輩としてほぼ毎回その例会に現れていた。ちなみにもうお一方、顔を出していた先輩が山内道雄さんだ。


私はそのFOTO SESSION’86に参加し始めて一年もたたないうちに、当時勤めていた本の雑誌社を辞めてしまったんだけど、それはもう少し写真を撮る時間が欲しくなってしまったのと、森山さんがあまりにもカッコ良かったからだ。写真で食っていこうとかいう話ではまったくない。当時は景気も悪くなかったから、まあ何とかなるだろうという、ぐらいの気持ちで退職してしまい、今日に至る、というわけだ。


今、尾仲さんが「デイズフォト通信」で「あの頃、東京で…」というエッセイの連載をしているのだが、ちょうど当時の話がネタになっていて面白い。森山さんや尾仲さんが、自分自身のギャラリーを立ち上げた頃の話だ。尾仲さんと交流はあったものの、当時の裏事情も分かり、興味深く読ませて貰っている。そして改めて当時のことを思い返してみると、かなり面白い時期に、ディープな現場に居合わせたのかな、という気がしてきた。


私は1987年になってすぐに会社を辞めたのだが、その年に森山さんは渋谷に自身のギャラリーである「room801 森山写真研究室」を作った。そして、そのギャラリーの内装工事を仕切ったのが尾仲さんだ。CAMPやFOTO SESSION関係の人間が手伝いに集まったのだが、私もペンキ塗りの日に手伝いに行った。


その時、工事で出たゴミを入れるための袋が余ったので、その袋を森山さんから譲り受け、しばらくの間森山大道モデルのコインランドリー袋として愛用していた。いや、ただ土のうを作ったりする時に使う袋だし、森山さんが買ってきたもんでも何でもないんだけど、なんか森山さんの所から貰ってきたというのが嬉しかった。


同じ年に、尾仲さんが西新宿の成子坂下にギャラリー「街道」を作った。そして山内道雄さんと瀬戸正人さんが四谷四丁目に「Place M」を作った。自主ギャラリーというは、それ以前からもあったけれど、その後の影響のことなどを考えると「room801」「街道」「Place M」が生まれた1987年というのは、日本の写真史の中でも重要な年だったんじゃないかと思う。写真評論家には、ぜひこの辺の話をまとめておいて欲しいなあ。


自主ギャラリーというのは、写真家個人や写真家グループが主体となって運営しているギャラリーだけど、メーカー系のギャラリーと違って、自分が発表したい写真を発表したい時期に公開できるというメリットがある。メーカー系のギャラリーだと、審査があったり、ずうっと先の話だったりするでしょ。


そんな自主ギャラリーでは夕方になるとアルコールが登場する。私の周りの写真家というのは、シャイな人が多いけど、夕方になり、アルコールが入るにつれ饒舌になっていく。そして、昼間はおとなしかった人達のテンションがだんだんと上がってゆき、翌朝まで写真について語り合うという状況もよくあった。


写真集専門の出版社であり、書店であり、ギャラリーである蒼穹舎の代表である大田通貴さんが道を誤ったのもこの年で、たまたま初めて行った「room801」で酒宴が始まり、そのまま朝まで写真について語り合う、という洗礼を受けたことが、その後の人生を変えたようだ。


当時はただ写真が好きで、ギャラリーめぐりをしていた青年だったのに、新宿御苑の蒼穹舎で写真集に囲まれている大田さんを見ると、あの頃、あの場のエネルギーって、何か凄かったんだなあと感じさせる。


・デイズフォト通信
http://www.daysphotopress.com/
・蒼穹舎
http://www.sokyusha.com/


今回の展示は「街道リぼん」の「大部屋」という名の四畳半のスペースで行われる。あんまり大きな花とかいただいても飾れないから、花はけっこうですよ。ドン・キホーテの「具だくさんラー油」はいいかもしれません。って、ギャラリーじゃ、食えないか。じゃあ、スイーツがいいかな。


ネタは「宙玉レンズ」「手ぶれ増幅装置」「歪みガラスの向こうの世界」あたりをやろうと思っている。って、もう明後日だというのに何も準備ができていない。搬入の当日はワールドカップの日本対デンマーク戦もあるしけっこう危険だな。


写真展の会場には、蛇腹レンズや宙玉レンズなんかの工作物も持っていくつもり。宙玉レンズは販売もします。お客さんが少なければ、蛇腹の折り方教室もやりたいな。まあ、いろいろサービスしますんで、ぜひ、お越し下さい!


◇上原ゼンジ写真展「手ぶれ増幅装置、その他の実験」
会期:6月25日(金)26日(土)27日(日)13:00〜19:00
会場:GALLERY街道リぼん 
http://www.zenji.info/news/ribbon.html


◇宙玉レンズの販売について
ようやく供給が追いついてきました。
http://www.zenji.info/cn21/pg243.html


【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
http://www.zenji.info/
http://twitter.com/Zenji_Uehara

上原ゼンジ


先日は、「Make:Tokyo Meeting 05」(MTM05)に参加してきた。オライリー・ジャパン主催の工作イベントで、日本中から工作や手作りが好きな人達が集まってくるという楽しい催しだ。電子工作の割合が多いが、最近は手芸関係も増えてきているし、自転車、飛行機、楽器など、本当にいろんなものが出展されていて面白い。ただし、今回は自分も出展側に回ってしまったので、他の人の展示があまり見れなかったのが、ちょっと残念。


私は「宙玉レンズ」や「蛇腹レンズ」を持って参加したのだが、隣りではカミさんがマトリョミンの展示も行っていた。マトリョミンはマトリョーシカの中にテルミンが入った楽器だけど、さすがMTMの会場ということで、中の電子部品を見せて欲しいというリクエストがけっこうあったようだ。中身はカミさんが作っているわけではなく、外身をペイントしてるだけなんだけどね。神田敏晶さんからも取材を受けてました。


こういうブースに立っても、あまり愛想のいい応対はできないんだけど、まあカメラを持っているので、「ちょっと覗いてみますか?」という感じで、カメラを渡してファインダーを覗いてもらえれば、後はなんとか説明をすることもできた。


「宙玉レンズ」や「蛇腹レンズ」でピントが合うというだけで、けっこう感動してくれる人も多かったので、こちらも嬉しかった。私は写真を撮る場合にマニュアルでピント合わせをする機会がいまだに多いけれど、初めてマニュアルで合わせたという人も多かったようで、それが私にとっては新鮮な驚きだった。まあ、レンズのデフォルトは今やオートだもんね(だいぶ前からかw)。


蛇腹レンズというのは、オモチャの双眼鏡などをバラして取り出したレンズを一枚だけ使って撮影するための自作レンズだ。ピントを合わせるためには蛇腹を伸ばしたり、引っ込めたりする。この伸ばしたり、引っ込めたりでピントが変わることが不思議だったみたいだけど、ようするにこの距離の変化でピントを調整するわけだ。カメラの仕組みを理解するには、なかなかいいオモチャだと思う。アオリやシフトまで出来ちゃうしね。


ブースでは「蛇腹の折り方ワークショップ」というのもやった。蛇腹を折ってみたいという人の隣りに座って、折り方をお教えした。さすがに「Make:」イベントに参加しているだけあって、皆さん器用に折っておられた。早速、工作の成果を報告してくれた方もいる。シグマDP-1に装着された姿がなかなかかっこいいんだけど、これはインチキですね(笑)


・ブログに「MTM05」の写真をアップ
http://zenji.jugem.jp/?eid=46


「宙玉レンズ」を製品化してみた


「宙玉レンズ」というのは、この連載でずうっと紹介していた透明球レンズを使った写真のこと。自分でも呼び方が確定していなくて「ビー玉レンズ」とかいろいろ言っていたんだけど、宙に浮かぶ玉の中に光景が映るので、「宙玉レンズ」(そらたまれんず)という名称に統一することにした。


4月からやっている「ゼンラボ・ワークショップ」の中で、受講生のみんなにもチャレンジしてもらおうと思ったんだけど、透明のアクリル板に穴をあけてアクリル球を接着する、という作業はちょっと工作の難易度が高い。そこで、その部分の工作だけをアクリル関係の業者に依頼することにした。


ただ、なるべく安く済ませたいということで、「チップスター」の円筒形の空き箱を利用して工作をすることにした。そして、その工作の方法はYouTubeにも公開した。「ギズモード」なんかで紹介してもらったおかげで、アクセス数はぐんぐん伸びてゆき、今チェックしてみたら、8,000人以上の人が見てくれたようだ。これってなんだか凄いことだよな。


前から参加を決めていた「MTM05」でも、この「宙玉レンズ」を見てもらおうと思い、新たに業者に発注して持ち込んでみた。そしてブースで、その透明の部品だけを売ってみたんだけど、自分でも作ってみたい、という人が沢山現れた。今まで、自分では面白いと思ってたんだけど、今ひとつ広がりが出なかったのが、レンズ部分の細工が出来たことにより、かなり工作の敷居が低くなったようだ。


そして、iPadの発売日に余っていたレンズをネットで販売してみたところ、3時間ほどで完売。どうやら、お金がなくてiPadを買えない人たちが、みんなこちらの方に流れてきたらしい。まあ、「宙玉レンズ」の方が相当安いからな。私の作戦勝ちということかな。


というわけで、現在は追加を業者に発注して待っているところ。でも、ネットで「宙玉レンズ」を検索してみると「欲しい、欲しい」と言って、身悶えしている人がかなりいるようだ。6月4日から予約販売を開始するんだけど、どうなることでしょうか? 入荷したら、家族みんなで梱包して出荷するからね。申し訳ありませんが、しばしお待ちを!


・宙玉レンズの販売について
http://www.zenji.info/cn21/pg243.html


◇カラーマネージメントセミナー参加者募集中!
「色のトラブルを回避する! カラーマネージメントの最低限の知識とワークフロー」
日時:6月18日(金)19:00〜21:00
会場:喫茶室ルノアール新宿3丁目ビックスビル店マイスペース
参加費:3,000円(消費税込み)
http://www.zenji.info/cn25/pg237.html


◇上原ゼンジ写真展「手ぶれ増幅装置、その他の実験」
会期:6月25日(金)〜27日(日)の3日間 13:00〜19:00
会場:GALLERY街道リぼん(東京都杉並区成田東5-23-2 いわとうアパートメント2F TEL.050-3023-4582)
http://www.zenji.info/news/ribbon.html
http://kaido-ribbon.com/


【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇上原ゼンジのWEBサイト
http://www.zenji.info/
◇Twitter
http://twitter.com/Zenji_Uehara

上原ゼンジ


パソコンで画像を取り扱っていると、微妙な色の違いに気がつくことがある。同じファイルを開いているのに、アプリケーションによって色が違う! というような場合だ。まあ、どうでもいいような些細な違いだったりするんだけど、私はそのあたりにズブズブと潜り込み、しつこく調べてしまっているというわけだ。


色が変わってしまう原因はたくさんあって、特定することはなかなか難しいのだが、大きく分ければ、次のようなケースが挙げられると思う。


【その1】
同じファイルなのに、モニタによって表示される色が違う。これは当たり前と言えば当たり前の話なのだが、モニタごとに「R」(赤)、「G」(緑)、「B」(青)の原色が違うので、そのRGB値の組み合わせで表現される画像の色も違ってしまう。それぞれのモニタがその表示の美しさや色の鮮やかさなどを売りにしているが、高級モニタも安物モニタも同じに見えてしまってはメーカーも困ってしまう。


ただし、モニタによって色の見え方がバラバラというのも問題で、プリンタや印刷物との色合わせも困難になる。そこで、考案されたのがカラーマネージメントシステムで、モニタやプリンタの色を測定し、測色的に一致させようという仕組みだ。このシステムはWindowsやMac OSなどに搭載されていて、ユーザーがあまり意識せずに、色合わせができるようになっている。


【その2】
このカラーマネージメントシステムはICCプロファイルを用いた方法が一般的で、互換性も保たれている。ただし、WindowsとMacとPhotoshopでは、その計算機であるCMMがそれぞれ違うので、その部分での微妙な違いがある。それから、画面表示する際のレンダリング方法(「知覚的」とか「相対的な色域を維持」)とかが違っていたりもするので、そこからも差が生まれる。ただし、見比べてみると「ああ、確かに違うね」というようなレベルなので、そんなに大騒ぎするような差ではない。


【その3】
データにプロファイルが埋め込まれていないことによる違い。これが一番重要な問題。カラーマネージメントの基本は、まず元データがあり、それを出力するデバイスであるモニタやプリンタや印刷機に合わせて色変換をすることだ。つまり、元データのプロファイルと変換先のデバイスのプロファイルが必要になるのだが、元データにプロファイルがなければ、取りあえず汎用的なプロファイルで代用することになる。取りあえずのプロファイルが、OSやアプリケーションによって違うために、見た目の色も変わってしまうというわけだ。


Macの場合、この基準のプロファイルは、その昔Apple RGBだった。当時のマッキントッシュの13インチのモニタを基準に考えられたカラースペースだ。その後、一般RGBが基準となり、現在のMac OS 10.6ではsRGBが基準となっている。


sRGBはマイクロソフト社とヒューレット・パッカード社が考案したカラースペースで、IECにより標準化され、現在ではデジタルカメラやプリンタでのデファクトスタンダードともなっている。一般RGBとsRGBの色域はかなり近いが、ガンマ値が1.8と2.2という違いがある。この違いは明るさの違いとなって表示される。


Photoshopの場合も、基準となるカラースペースはsRGBがデフォルトとなっているが、印刷向けにはAdobe RGBが推奨されている。sRGBでは印刷物の色再現域のすべてがカバーできていないので、いくら補正しても出せない色があるからだ。


画像に正しいプロファイルが埋め込まれていれば、WindowsでもMacでもPhotoshopでも同じように再現される。しかし、プロファイルが埋め込まれていないと、それぞれの基準のプロファイルが割り当てられてしまうため、見た目は変わってしまうというわけだ。


プロファイルの埋込みが重要


プロファイルが埋め込まれていない場合に、単純に初期設定のプロファイルが割り当てられるだけなら、ある意味仕方がないが、デジカメデータか? CGデータか? なんていうことも色には関係してくる。


デジカメの撮影データには、基本的にプロファイルは埋め込まれていない。その代わり、デジカメのデータの中には、撮影した日時とか、機種名とかシャッタースピードだとかが記録された、Exif情報が記録されている。そしてその中には、カラースペースの情報もあるのだが、Exifの基本はsRGB。もしもsRGB以外を使う場合には、「Uncalibrated」と記録するのが約束事になっている。


つまり、このExifタグを参照すれば、カラースペースが分かる。一見プロファイルが埋め込まれているように見えても、ただExif情報を参照しているだけ、というケースがあるので注意。またRAWデータの場合はJPEGなどに書き出す際に、アプリケーションがプロファイルを埋め込む。


たとえば、Mac OS 10.6のプレビューでファイルを展開した場合、
(1)プロファイルが埋め込まれていればプロファイル優先
(2)プロファイルがなくてExif情報があれば、そのタグを参照
(3)プロファイルもExif情報もなければ、モニタプロファイル
を参照となる。


最後の(3)のケースは、カラーマネージメントされていない状態を表す。モニタプロファイルからモニタプロファイルへの変換だから、色変換せずに出力する、素の状態のイメージ。たとえばカラーマネージメントがサポートされていない、CGアプリで作成したデータを展開するような場合がそれに当たる。単純に基準のプロファイルを指定しているというわけではないのだ。


なんかややこしくて嫌になりますね。でもトラブルが起きる場合というのは、正しいプロファイルが埋め込まれていない時。だから、きちんとプロファイルが埋め込まれた状態で運用していれば問題はない。


これからは、WEBブラウザや電子書籍用のデバイスやシステムが、カラーマネージメントに対応していくことが予想されます。iPhone OSも次期バージョンからICCプロファイルをサポートするとのこと。つまり、iPadもカラマネが効くようになる。まあ、そういった流れを見据えて、きちんと色変換を行いプロファイルを埋め込んでおくというワークフローを確立しておくべきでしょう。


デバイスによる色の違いも、今後はさらに広がっていくことでしょう。ただし、その差を埋めるのがカラーマネージメントの技術。別に夢のような技術とは言わないけど、かなり実用的な技術ではあります。


◇カラーマネージメントセミナー
今後不定期で「カラーマネージメント&レタッチ」セミナーをやります。第一回は6月18日(金)。カラーマネージメントの基礎知識的な話、とりあえず知っておくべき最低限の設定。印刷、WEB、電子書籍での運用法、などについてお話します。こんなことをやって欲しいとか、◯曜日だったら出席しやすい、といったリクエストがあれば、メールください。


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初めて本の編集をしたのは「沢野ひとしの片手間仕事」という画集だった。当時(1983年)私は大学3年で本の雑誌社に助っ人として出入りしていたのだが、交換広告の担当をしていて、多少写植の知識があったことから、学生ながらに編集担当になったのだった(写植と言っても分からん人が多いかな?)。


当時の「本の雑誌」は、椎名誠、目黒考二の二人で作っていたのだが、単行本の担当は椎名さんだった。しかし、椎名さんはデビュー以来、執筆の仕事が増えてきて、とても単行本の編集までする余裕はなかった。群ようこも在籍していた時代だが、群さんも事務仕事に忙殺されていたので、やはり無理。ということで、助っ人の私が担当することになった。


しかし、今考えてみれば、社内で編集できなければ、外注するというのが普通なんじゃないだろうか。そしてレイアウトはデザイナーの仕事。まあ、コストを安く抑えたいという思惑はあったにせよ、よく素人の学生にやらせたものだなあと思う(笑)


編集担当になった私は、椎名さんから渡された沢野さんのイラスト(段ボール箱3箱分)を毎日毎日眺め、取捨選択し、分類し、構成していった。他の画集を多少参考にしてみたりはしたが、あまり役には立たない。仕方なく、現物を机の上に広げ、順番や配置を変えてみながら、自分の中でしっくりとくる構成を考えていくしかなかった。


考えると言っても論理的に考えるわけではなく、直感的、感覚的に脳ミソを使うわけだ。なんかこの脳ミソの使い方が私には心地よく、けっこうはまってしまった。その後、椎名誠、群ようこ、青山南、佐野洋子といった方達のエッセイ集の編集も担当させてもらったが、文章を編集する場合と画集を編集する場合とでは、脳ミソの使う部分がちょっと違う。


エッセイ集の場合も、同じように単行本に掲載する文章を選んだり、順番を考えたり、章立てをしたりという作業はするのだが、こちらはやはり理屈で考える。一方、画集の場合は「うーん、なぜとは言えないけど、なんかコッチ」という作業を繰り返していくわけだ。


これは写真集の場合も一緒。写真集としては椎名さんの「海を見にいく」「小さなやわらかい午後」、佐藤秀明「ガクの冒険」なんかを担当したけど、使う脳ミソの部分は画集の場合と似ている。基本は感覚的に選ぶしかないわけだが、「なんとなく」選ぶ段階から、「これっきゃないでしょう!」という確信的段階に至るまで、ああでもない、こうでもないと手を動かしていくのが写真の編集で、その過程が自分にとって面白いのだ。


森山大道の写真選び


「本の雑誌」の助っ人だった私は、大学卒業とともに本の雑誌社の正社員となったが、在職中に「FOTO SESSION’86」という写真のグループに参加した。月に一度、中野坂上に借りたアジトと呼ばれるアパートに集まり、森山大道さんに写真を見ていただいた。森山さんはみんなの写真を丁寧にすべて見てくれるのだが、畳の上に置かれた写真をパパっと選んで、並べて見せる所作がカッコよかった。


それらの写真はメンバーが一カ月の間に撮影し、ネガからプリントするコマを選び、プリントしたものの中から、さらにいいと思ったものを持ってきているはずだ。その写真をさらに森山さんのフィルターを通して、再構成していく作業を見ながら、写真を学んでいった。


森山さんが一貫して言っていたのは「とにかくたくさん撮りなさい」ということだった。いっぱい撮ったら、いっぱいセレクトもしなければならないわけで、ただ撮るだけではなく、当然きっちりとプリントをし、セレクトを行うということも含んでの言葉だ。


セレクトをする段階では、撮影者としての自分とはちょっと離れて、第三者的、編集者的な視点から自分の写真を見るということも重要だ。そのためにはやっぱりいっぱい撮って、いっぱい捨てるということが習慣付いていた方がいい。遠くまで撮りに行って大変だったとか、金がかかったとかいうことは写真の良し悪しには関係ない。そういう気持ちの部分を切り捨て、大胆にチョイスしなければならない。


ハードディスクがぶっ飛んだらまた撮ればいい、ぐらいに自分の写真に対してクールでいたいもんだと思っている。まあ、ハードディスクがクラッシュしたら泣くけどさ(笑)


WEB上に写真集を作る


最近は、ブログや写真共有サイトで、自分の写真を簡単に公開できる世の中になってきた。すごく便利だから私も利用している。もちろん、自分なりにセレクトした写真をアップするわけだが、写真が溜まってきたら、さらにセレクトをし、順番を考えてみたりという編集作業をしてみることも重要だと思う。


写真集を自費出版するとなったら大変だが、無料でWEB上に写真集が作れるサイトなんかもあるから、そういうものをどんどん利用していけばいいと思う。私もBCCKSに写真集を作ってみた。


「紫陽花図譜」BCCKS
http://bccks.jp/#B32208,P0


56点の写真で構成されているのだが、写真はすべて紫陽花ばかり。どんな順番で編集すべきかちょっと悩んだが、まず、写真が与える印象から「10代」「20代」「30代」といった年代別に分類してみた。そして、若い蕾から、枯れていくまでという感じで流れを作っていった。まあ、いきなりドライフラワーのような紫陽花を見せられるよりは、入っていきやすいんじゃないだろうか。


BCCKSは2年ほど前から始まった、WEB上に本や雑誌のようなものを作るサービスだが、リアルな紙の書籍の雰囲気を出すために、バックに本当の紙を撮影したものを敷いたり、ページめくり機能を付けたりと、様々な工夫が凝らされている。また、用意されたデザインの雛形がいいのが魅力。


ただ、やってみて感じたのは、ちょっと広告が目立過ぎということだ。まあ、広告が入る代わりに無料で使わせてあげますよ、ということだから仕方ないんだけど、写真集で流れを考えて構成しているのに、突如見開きの広告が入ってくるというのは、違和感がある。もう少し目立たないように、できないのかな?


今度始めるワークショップでも、こういったWEB上の写真集やギャラリー機能をうまく利用できないものかと考えている。ただ撮りっぱなしではなく、第三者的に自分の写真を眺めるための手段として面白いし、活動をワークショップ内だけに閉じ込めず、オープンにしていきたいと思っているからだ。WEBで写真をちょこっと見せるのではなく、ちゃんと見せる方法を模索していきたいと思っている。


「ゼン・ラボ」ワークショップ受講生募集中!


上原ゼンジ写真実験室のワークショップは4月10日開講ですが、まだ若干名の余裕があります。一年間というのは長過ぎという意見があり、半年全6回に変更しました。迷っていた人は、今すぐ申込むといいですよ!
http://www.zenji.info/workshop/announce.html


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