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写真を楽しむ生活

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カテゴリ ‘デジアナ逆十字固め…/上原ゼンジ’ のアーカイブ

上原ゼンジ


トマソンの展覧会をやることになった。といっても、来年の11月に新宿眼科画廊で行われるということだけが決まった。トマソン誕生から30年以上も経ってしまったので、中核メンバー(美学校での赤瀬川原平さんの生徒達)も齢をとり、とりあえず会期を決めてしまわないと、なかなか動けなくなってしまったのだ。


超芸術トマソンとは「不動産に付着していて美しく保存されている無用の長物」のことで、使わなくなり塗り込められてしまった窓の上にさびしく佇むヒサシとか、どこにも続いていない、ただ昇って降りるだけの機能しかない純粋階段などのこと。そういった物件を街を歩いて探し歩き、写真を撮り、報告書を作成するというのが我々の活動だ。


正しくは「超芸術探査本部トマソン観測センター」という。ただ自分たちで観測をするだけでなく、全国から集まる報告書を精査し、トマソンと認められた物件に認定印を押して保管しておくという大切な役割もある。


トマソンの楽しさはふたつあると思う。まず発見する楽しさ。街中を歩きまわって物件を探し出すのだが、そんなにゴロゴロしているものでもないので、美麗な物件などに出くわした時はけっこう嬉しい。そしてもうひとつの楽しさは、誰かが見つけてきた物件について、その物件はどうやってできたのか、トマソンか否か、ということをディスカッションすることだ。


この時、いかにくだらない想像力を働かせるのかということが重要。その物件の主に直接聞いてしまえば、ミもフタもない答えが返ってくるかもしれない。しかしそんな無粋なことはせず、その成り立ちを一生懸命想像するのだ。


たとえばその物件を生み出した人の人物像をプロファイリングするとか、少しずつ変化していった過程を描写してみる。真実を突き詰めるのではなく、曖昧なままにあれこれと考えを巡らせて味わう態度が重要。


赤瀬川さんが著した「超芸術トマソン」(筑摩書房)も増刷を重ねたので、トマソンを発見したという人は世の中に多いと思うが、みんなであーでもないこーでもないと論じ合った経験がある人は少ないはず。展覧会の期間中には報告会も予定しているので、ぜひ物件を見つけて参加して欲しい。


Facebookにとりあえずトマソンのページを作ってみた。今後、報告書の書き方や入手方法についてもまとめていきたいと思っているので、興味がある方は「いいね!」をしておいてください。


◇超芸術探査本部トマソン観測センター
https://www.facebook.com/thomasson.center


意外に多い金属鳥居


展覧会が決まり、私も久しぶりにトマソンの自主探査を行った。元々そんなにトマソン感度は高くないのだが、ほとんどトマソンと出会うことができずに疲れて帰ってきた。いちおう展覧会までに自宅周辺を中心に報告をしたいと思っているので、少しずつリハビリをしなければならない。


そんな中、トマソンではないのだがちょっと気になるものと出会った。ステンレス製の鳥居だ。銀色に輝くこの鳥居が視界に入った時は、凄い違和感をおぼえた。まあ鳥居と言えば木製がメインだよな。思い返してみれば石で出来た鳥居というのもあったかもしれない。


しかし、ステンレスだといまいち有り難みがない。前の鳥居が木製で腐ってしまったので、劣化しにくいステンレスを使ったのだろうか?
http://p.tl/Gfhf-


などと考えながら、Facebookにその写真をアップしてみたら、けっこうコメントがついた。世の中には鳥居好きがいっぱいいたのだろうか? 


二宮さんは「曾叔父でもある二宮忠八翁が建立した飛行神社も、ジュラルミンの鳥居です。かなり迫力あります(笑)」というコメントをくれた。ジュラルミンというのはステンレスよりカッコよさそうだな。飛行機の機体の素材として使われることが多いから、鳥居に使ったということのようだ。拝殿はギリシャ風だし、飛行神社侮りがたし。


◇飛行神社 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/飛行神社


よく見ると、私が発見したステンレス製鳥居もなかなかよくできている。もしかしたら、飛行神社のように何か謂われのあるものなのだろうか? などと考えていたら、今度は飯村さんがステンレス製鳥居の業者を教えてくれた。


実は現在の鳥居の素材としては、かなり一般的なもののようだ。ただし多くは赤く塗っり、御影塗装を施したりしているようだ。私が見つけた鳥居は塗装代をケチったのだろか?


◇ステンレス鳥居の色・石調について
< http://www.sankei-torii.com/color_stone/index.html >


また柴田さん(女子)は兵庫県高砂市にある鹿島神社には、高さ26メートルのチタン製大鳥居があるという情報を寄せてくれた。するとみんな、この「チタン」という響きに大興奮。男子はチタンが好きだよな。


調べてみたらこの大鳥居の動画もあった。かなりの迫力だぞ。近くの石碑にはこのチタン大鳥居の概要が書いてあるんだけど「耐久年 千五百年」だって(笑)。人類が滅亡した後も鎮座しているのでしょう。


◇街角散策「鹿島神社チタン製鳥居」(高砂市)
http://www.youtube.com/watch?v=yHOrAAStwCs


結局私が見つけた鳥居の正体は不明だ。「ご予算がないようでしたら、塗装は後からでも大丈夫ですよ。後々のことを考えたらステンレス製が絶対にお得です」と業者に説得されて、ステンレス剥き出しの鳥居ができたのだろうか? まあ、正しい解は求めていない。考える過程こそが重要だからだ。


ゼンラボ・ワークショップ「万華鏡写真の巻」


12月9日(日)に下北沢のカフェ&ギャラリー「バロンデッセ」にて万華鏡写真のワークショップを行います。詳細は以下URLを御覧ください。
http://p.tl/W2GS-


◇「こんな撮り方もあったんだ! アイディア写真術」
(インプレスジャパン)
http://www.impressjapan.jp/books/3273


【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com < http://twitter.com/Zenji_Uehara >
上原ゼンジのWEBサイト
http://www.zenji.info/
Soratama – 宙玉レンズの専門サイト
http://www.soratama.org/
上原ゼンジ写真実験室のFacebookページ
https://www.facebook.com/zenlabo

上原ゼンジ


私が主宰する「bitgallery」に二つのコンテンツを追加した。ギャラリーと称しているが、奥付などもあり紙の本の構成を模しているので、WEB写真集といったほうがいいようなものだ。姉妹メルマガ「デジクリ」執筆者のGrowHairさんの写真など、現在9つの写真集が掲載されている。


しばらく更新していなかったのだが、今回加わったのは広瀬勉さんと那須潔さんの写真だ。広瀬さんはフォトセッションの同期で、1986年から2年間森山大道さんに写真を見ていただいた。


この時、先輩から一緒に現像の手ほどきを受け、写真にずぶずぶとはまってしまった経緯も同じなので、年下ではあるが同志的な意識を持っている。それと美学校で赤瀬川原平さんに習ったというところも一緒だ。


美学校では当時超芸術トマソンが課題の一つだったが、街歩きをする中で彼は穴あきブロックに惹かれ、いろんなパターンのブロックを探し、写真として記録していった。元々蒐集癖があったのだと思うが、その種類はどんどん増えてゆき「穴あきブロックの広瀬勉」として広く知られるようになっていった。


というのは冗談ではなく、トマソンから路上観察へと移行していく過程で、路上観察の1ジャンルとして認められ、展覧会に出展したり、テレビに出演したり、「塀帳」というブロック塀の写真ばかりを集めてた写真集が刊行されたりもした。


また展覧会では、ブロックのひとつひとつを実物大にプリントし、それを塀のように並べるという、けっこう迫力のある展示をしていた。


当時から「型録」という毎回違ったテーマで構成した冊子を作ったり、同じ型録という名を冠した写真展を続けており、こちらは現在開催中の「キヨスハルヒ」で59回目になるそうだ。


写真展にもかなりのバリエーションがあったのだが、たとえば友人の徳山君のアパートの部屋の中を複写し、原寸大に引き伸ばした写真を元の場所に再び張り、アパートの部屋自体を写真展会場にしてしまう、なんていうユニークな回もあった。


今回、WEB写真集としてまとめたのは、愛知県の清須市はるひ美術館で開催された写真展『猫の塀、渡る鳥。』での展示作からセレクトしたもの。ちょっとした違和感が感じられるような、不思議な雰囲気の写真をご覧下さい。


いま広瀬さんは高円寺駅のすぐそばで、写真の展示ができる「バー鳥渡」のマスターをしている。店の中が見えず、フラッとは入りづらい店なのだが、ぼったくりバーではないので、ご近所の人はどうぞ。夜毎写真に魅せられた人々が集っています。


http://bitgallery.info/hirose.html


◇『バー鳥渡』
東京都杉並区高円寺北2-4-8 2F TEL.03-3338-3331


SNSでの友人に依頼


那須さんとの出会いはSNS上だ。flickrなどで公開されている写真に惹かれたのだが、Facebookでの発言や「いいね!」の付け方を見るうちにシンパシーを覚えるようになった。


ただ、私は積極的にコミュニケーションをとるタイプの人間ではないので、まあなんとなく好みが会うなあ、と感じながらたまにコメントし合うというようなお付き合いをさせていただいている。


今までは面識のある人に「bitgallery」への参加をお願いしていたのだが、SNS上での知り合いに参加してもらったのは今回が初めて。いや、実際に写真展でお目にかかったこともあったそうだが、すっかり忘れてしまっていた。


このWEB写真集の作り方は人によって違う。基本的には私がチョイスしたり、順番を決めたりということをしたいと思っているのだが、中には自分のイメージが強い人がいて、そういう場合はこちらから、強く主張したりということはしない。私が好きな写真を、うまくサポートしながらWEB上で紹介していきたいと思っている。


ただ、那須さんの場合はほぼ私が独断で構成をしてしまった。flickr上に沢山アップされている写真にすべて目を通し、好きな写真を選び、順番を考え、タイトルを考え、表紙のデザインまでした。


「こんな感じで紹介したいんですが、いかがでしょう」と提案したものが通ったので、那須さんの写真であるが、私のフィルターも効いたWEB写真集になったというわけだ。


広瀬さんはフィルムのモノクロだが、那須さんはデジタルで撮影しモノクロ化している。デジタルなのに不思議な味わいのある描写だが、これはオールドレンズを使っているからだ。


その味わいがすごくいいんだけど、これは沢山あるレンズの中からどんなレンズを使うのかというセンスの問題だと思う。ただ古いレンズを使えばいいというわけではない。被写体や撮り方にもすごくマッチしていて好きなのだ。


http://bitgallery.info/nasu.html


Facebookが役に立った!


今回はワークショップの告知をさせて貰おうと思ったんだけど、ゼンラボ通信とFacebookで告知をしたら、数時間で定員になってしまった。Facebookでファンページを作っているのだが、やはり自分に興味を持ってくれた人が「いいね!」をしてくれているので、ピンポイントで伝わるということだな。Facebookの力を見直しました。


https://www.facebook.com/zenlabo


◇「デジカメ・オブスクラ」を作ってみよう!〜スクリーンに映るレトロなイメージを撮影する
(デジカメWatch)
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/special/20121019_566202.html


◇「こんな撮り方もあったんだ!アイディア写真術」
(インプレスジャパン)
http://www.impressjapan.jp/books/3273


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上原ゼンジのWEBサイト
http://www.zenji.info/
Soratama – 宙玉レンズの専門サイト
http://www.soratama.org/
上原ゼンジ写真実験室のFacebookページ
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上原ゼンジ


新しい本が出た。『こんな撮り方もあったんだ! アイディア写真術』というタイトルで、デジカメWatchに書かせていただいた原稿を大幅加筆訂正し、撮りおろしの写真などもたくさん入れて構成した本だ。内容は、宙玉、太陽画、ブレ写真、万華鏡写真、トイ蛇腹、水玉・泡玉など。多くの作例を交え、撮影の方法などを紹介している。


今までの本というのは、わりと読者のニーズなども考えながら構成していたのだが、今回のは私の趣味が前面にでており、ここ何年か私が最近取り組んできたことの集大成的なものになっている。


元はと言えば、日刊デジタルクリエイターズの連載用に思いついたネタだった。「手作りのレンズを作ったらどうだろう?」という発想から連載を始めたが、一週間ごとに締切がやってくるため、必死でネタを考えなければならなかった。それがどんどん広がって、宙玉レンズや手ブレ増幅装置へとつながったというわけだ。


一番始めの工作は、紙筒の先に100円ショップで買った双眼鏡のレンズをくっつけ、フタのスライドによりピント合わせをするというものだった。金属を加工したりするスキルがなかったのと、なるべく簡単な工作にして、いろんな人に楽しんでもらいたいと思ったからだ。そんな工作を6年もやっていたらどんどん工具も増えてゆき、この間はついにボール盤まで買っちゃいました。


ボール盤というのは、電動ドリルとそれを支える台が一体化したもので、垂直に穴をあけることができる装置のこと。なんでこんな大袈裟なものを買ったのかというと、宙玉レンズ用にガラスのフィルターに穴をあけるためだ。最初にフィルターに穴をあけた時は専門家に依頼した。でも、やはり自分でできた方が便利なので、穴をあけるための試行錯誤を始めた。


でもねえ、うまくできるようになるまでに10枚ぐらいフィルター割っちゃいましたよ。最初は普通の電動ドリルにガラス用の刃を付けてグリグリと削っていたのだが、穴をあけているうちに微妙に動いてしまい、穴はあいても中心にならないのだ。


こんな作業には、刃も穴をあける物も固定できるボール盤が向いていると知ったのだが、値段が高いしけっこうゴツい。しょっちゅう使うものでもないから、使ったあとの置き場にも困る。


そんな時に私が出会ったのは、REXONの小型ボール盤DP2250Rでした。本体寸法はW180×D275×H410mm。想像してみてください、幅が18センチしかないんですよ。小さいでしょ。しかもお値段ナント11,500円。これは買うっきゃないでしょ。早速カミさんに内緒でポチりました。しかしいくら小さいとはいえ、これを使うとかなりの騒音が出るので、すぐにバレちゃったけど。


◇これがそのボール盤
http://www.japan-hobby-tool.com/cart/syouhin.php?cat=00000052&no=00003104


●いつもとは違う体制で編集


単行本の制作というのは、通常は編集さんと二人でチマチマやるんだけど、今回は少し規模が大きかった、最初の打ち合わせは編集2名、デザイナー2名、そして私という5人で行った。


その後もメーリングリストを作って互いに意見を交換しながら、構成やタイトル、表紙デザインなんかを決めていったのでなかなか面白かった。ただ、デザイナーさんには著者まで直接意見を言ってくるので、ちょっと負担だったかもしれないけど……。


いつものやり方だと、デザインのフォーマットを貰って、こちらでInDesignに組んだものを渡し、デザイナーさんにブラッシュアップしてもらうというような段取りなのだが、今回はドサッと写真やテキストを編集さんに渡して「好きにして」という方式をとった。


自分であんまりやり過ぎると、考えが限定されてしまって面白くないからだ。やはりチームで作業をするのなら、違った面白いアイディアをどんどん取り入れていきたい。


そういう意味では編集者、デザイナーの手間のかかった本になったと思う。そして自分で出来上がった本を見ていて思ったんだけど、「オレって相当しつこい人間だよな」ということだ。きれいなレイアウトでオブラートにくるんでは貰っているけど、粘着的な部分が滲み出しているように思う。森山大道さんからは「病気」と言われたけど、こういう部分のことなのだろうか。


●本の中身を全ページ見せます!


今回は本の中身をパラパラと見てもらうために、全ページが収録された動画を作ってみた。InDesignから見開きのPDFに書きだしたものを、Photoshopのバッチ処理でリサイズなどの処理をしてJPEG化。iMovieに読み込んで、それぞれの写真の秒数を設定した。最初は文字が見えすぎで全ページ無料配布になりそうだったので、解像度を落としてYouTubeにアップしてみた。


本の中身を見せるというのはあるけど、新刊で全ページというのはないんじゃない?(ありますか?)なんでこんなことをやろうと思ったかと言うと、本をパラパラやってみれば、興味を持ってくれる人も増えると思ったからだ。


Amazonなんかでも、「なか見!検索」はあるけど、私自身はあまり利用していない。それよりもYouTubeにアップしておいた方が、人目に触れる機会も増えるんじゃないかという計算だ。


まあ中身を見せると言っても、0.3秒でページが切り替わっちゃうんですよ。本当に次々ページが変わるので、なんとなくは分かるけど、よくは分からない。「なんかよく分からないけど面白そうだから買っちゃえー!」という人がいっぱい増えてくれるというのが狙いなんだけど、さて効果はあるかな。


・YouTubeにアップした動画
http://www.youtube.com/watch?v=mwRpYqmgytk


・インプレスジャパンでは目次なども掲載されてます
http://www.impressjapan.jp/books/3273


【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com
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以前にもちょっと書かせてもらったことがあるが、尾仲浩二さんが「デイズフォト通信」で連載していたエッセイが、「極・私家版 あの頃、東京で・・」(matatabi文庫)としてまとまった。私家版とあるが、実際に編集やレイアウトなどの作業もすべて尾仲さん自身が行った限定発売の本だ。


内容は、尾仲さんが写真をやるために東京に出てきた1980年から、最初の写真集である「背高あわだち草」を出版した1991年までのことを回想した自伝的エッセイ。東京写真専門学校(現東京ビジュアルアーツ)の森山大道ゼミに通い、CAMPのメンバーとなり、ギャラリー街道を立ち上げた頃の話がまとまっている。


私が尾仲さんと初めてあったのは1986年のこと。FOTO SESSIONという写真のグループに参加し、月に一度森山大道さんに写真を見ていただいた。その時に森山さんの助手のような感じで付き合ってくれたのが、尾仲さんや山内道雄さんだった。尾仲さんは26才、私は24才、森山さんが47才の頃の話だ。ということは、私もあの頃の森山さんの年をいつの間にか越していたということか。


FOTO SESSIONではアジトと呼ばれるアパートを借り、昼間は畳の上に写真を並べて写真を見ていただき、夕方から夜半にかけてはその場で飲み会。そんな場で、森山さんや諸先輩から話を聞きながら、写真のコアな部分に触れていった。


現在、尾仲さんは街道塾を開講し後進の指導にあたっているが、その街道塾の卒業生にリサーチしたところ、酔っぱらうとけっこう無茶なことを言っているらしい。これを聞いて、当時森山さんが酔っぱらってみんなに無茶なことを言っていたのことを思い出した。こんなところで、森山さんの流儀が今も継承されていたというわけだ。


たとえば、ある先輩は森山さんからバイトをするなと言われた。写真家が別の仕事をするなということだ。しかし、これは職業的にカメラマンで食って行けというわけではない。じゃあどうやって食っていいけばいいんだ、と誰しも思うのだが、まあそれくらいの気概を持てとか、覚悟をしろと言われていたのかと思う。


尾仲さんの本の中には、「自分の写真を撮る時間を確保するのにこれは大切なことだ。雑誌などの仕事は、事前の打ち合わせや、原稿の受け渡しなどで、ひと仕事でも数日とられるだろうし、何よりそのために編集者やデザイナーに付き合っていると、本物のカメラマンになってしまいそうだから敬遠した」という一文がある。職業的に写真を撮るのではなく、写真家として自分の写真を撮り続けるために選んだ生き方ということだろう。


翻って自分のことを考えてみれば、やはり写真を撮る時間を確保したいために会社を辞めたのだが、食っていくことに費やす時間が多く、どうにも中途半端に生きてきてしまったものだと思う。


ただ、あまり突っ走り過ぎてもどこかで息切れしてしまうし、何事か成したい人はそれぞれが自分にあった方法を見つけて、継続していくことが重要だと思う。まあ進むべき道を誤っていれば、継続も無駄になってしまう場合もあるから、気をつけなければいけないのだが……。


●「背高あわだち草」から21年


尾仲さんの初めての写真集「背高あわだち草」が、蒼穹舎から刊行されたのは1991年。この時の制作費は蒼穹舎の大田通貴さんと、尾仲さんが折半したのだということを、この本によって初めて知った。出版社とはいっても、大田さんが自分の好きな写真集を出版するために作った会社で、二人にとって制作費の捻出は大変なことだったと思う。


その後、尾仲さんは自分の写真集を着実にまとめてきた。そして
現在までに11冊の写真集が刊行されている。もちろん、すべてが
自費出版というわけではないが、今回の本にしても「人がやって
くれなきゃ自分でやる」という態度が一貫していて格好いい。


あらためて尾仲さんのバイオグラフィーを眺めていると、写真の
王道を歩んできたのではないかという印象を持った。なんか、こ
れからでも尾仲さんを見習いたいと思わされた一冊だ。


◇「極・私家版 あの頃、東京で・・」
B6判、モノクロ、108ページ、限定500部
定価1000円
http://www.onakakoji.com/2012/04/21/極-私家版-あの頃-東京で/


◇尾仲浩二写真展「I’m full オナカイッパイ」
こちらも尾仲色たっぷりの写真展。会期中にはトークショーやライブなども行われる。
会期:6月1日(金)から17日(日)までの金・土・日、13時〜19時
会場:そら塾(東京都台東区根岸3-13-25)
http://www.onakakoji.com/2012/05/22/i-m-full-オナカイッパイ/


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久しぶりにテレビの取材を受けた。最近三件ばかり打診があったが、すべてボツっていたので、どうなるのかと思っていたら今回はすんなりと企画が通ったようだ。


テレビの企画が決まっていく過程としては、まずプロデューサーや構成作家が集まってネタを考え、そのネタに合う人や商品などをリサーチ会社が探しだし、出演できるかどうかの打診をし、オーケーであったら再度企画会議でGoするかどうかを決める、というようなことをやっているらしい。


つまり、打診があった後に企画が通らなければ、話はなくなってしまう。ただし企画が通れば、かなりバタバタと撮影に向けてことが運んでいくことになる。今回の場合は、打診があってから2日で企画が通り、5日後に打ち合わせ、そして9日後にロケの収録ということになった。


番組は読売テレビの「大阪ほんわかテレビ」。残念ながら関西ローカルの番組です。関東では「中井正広のブラックバラエティ」をやっている時間帯だ。どんな番組か知らなかったのでホームページを覗いてみた。


出演者は、笑福亭仁鶴、間寛平、中川家、なだぎ武といった方々らしい。なかなか豪華な顔ぶれですね。特に笑福亭仁鶴さんの名前に私は強く反応しました。生まれて初めて買ったレコードが、笑福亭仁鶴の「どんなんかなァ」だったから(笑)


当時は京都に住んでいて、仁鶴師匠は憧れの人でした。1970年頃の話。私は小学2年生、師匠は33歳。今では吉本興業の特別顧問で、上方お笑い界の重鎮になっているけれど。


私は小学校3年になる時に関東に引っ越してきたのだが、当時関東には関西のお笑いが全然なくて悲しかった。今は関西のお笑いが日本を席巻してるけど、42年前はまださびしい状況でねえ。唯一の楽しみは日清フーズ提供の「ヤングおー! おー!」ぐらいだったな。まだ、さんまは登場しておらず、ザ・パンダが大人気だった。


ディレクターさんは、わざわざ大阪から打ち合わせに来てくれた。そして私が作った宙玉レンズや手ブレ増幅装置などを実際に見てもらい、段取りなどを考えていった。ただ、今までのテレビ出演経験の中で、意にそぐわないことをやらされたこともあったので、その辺りは注意をしなければいけない。


たとえば、テレビ向きのネタとか、視聴者がすぐにできるようなものを求められるんだけど、他のテレビ番組でやっていたようなネタを拾ってきて、やってくれと言われる場合もある。それ、オレが考えたアイディアじゃないし、やってもそんなに面白くないでしょ、というようなケース。


だからテレビを観ていても、ああこれはこの人の発想じゃなくて、構成作家がどこかで見つけてきたアイディアなんだろうなあ、というのが気になってしまう。だって何かの専門家が、そんなにテレビ向けするようなネタをたくさん持ってるとは思えないし。


写真を言葉で伝える


ディレクターさんからは、構成を考えるためにいろいろと話を聞かれた。たとえば「なぜこういうことを始めるようになったんですか?」というようなこと。これは私にとって重要な問題なので、まず何から話したらいいだろうか、などと考えていてはいけない。


ディレクターさんが求めているのは、「大阪のオバちゃん」がパッと分かるような回答だ。写真の技術的なことも、オバちゃんが理解できるような言葉で説明をしなければいけない。これって実はけっこう難しい。


たとえば「何を撮ってるんですか?」と聞かれた場合、写っている以外の何かを撮ろうとしてるんだから、そんな簡単に言葉にできるようなもんじゃないんだ! と言いたいような場合もある。一方で、写真家は撮影するだけじゃなく、自分のやっていることをきちんと言語化して説明できなければダメだ、という言い方もある。


確かに日本の写真家はそういう部分が弱かったかもしれない。だから最近は写真家のホームページでも、きちんとアーティストステートメントを掲げている人も増えてきた。これは写真家に限らず、アーティストが自分のやっていることについて、きちんと文章化にしておこうということ。自分で自分のやっていることを整理するためにも、人に理解してもらうという意味でもいいことだと思う。


ただ実際にそういった写真家のステーツメンツを読んでみると、堅苦しかったり、難しげな場合が多い。まあ、言いたいことは分かるけど、あまり観念的にならずに、やさしい言葉で考えていることが伝えられればそれに越したことはない。


そんな時に、大阪のオバちゃんに説明するというトレーニングも悪くないと思う。写真によけいな言葉はいらないという思いはあるけれど、自分でもなるべく簡潔で分かりやすいアーティストステートメントは書いてみたい。


新しい写真を関西限定公開


埼玉の自宅までロケに来てくれたのは、お笑いコンビのダイアンだ。最初ダイアンという名前を聞いてもピンと来なかったけど、YouTubeでネタを見たら思い出した。M-1の決勝にも二度進出している芸人さんだ。


関西のお笑い芸人が家に来て、どう対応すればいいものかと思ったけど、実際には収録は割とスムーズに進んでいった。一対一でなんか話さなきゃと思うと緊張もするが、コンビが二人で勝手にボケたり、突っ込んだりという時間があったので、それでこちらも落ち着くことができた。ただし、二人のネタが始まってしまうと、こちらはどこから入ったらいいのか困ってしまうこともあったのだが……。


いちおう今回はテレビ映えのするネタもいくつか用意した。一つはドリルドライバーを使った写真。まず子供部屋にクリスマスのイルミネーションを張り、その前にダイアンの津田さんに立ってもらう。そして電動ドリルドライバーに付けたカメラを回転させながら撮影を行う。


この時ストロボを軽く発光させるというのがミソ。するとまずイルミネーションがグルグルと回転した軌跡が写る。さらに発光させた瞬間に人物が浮かび上がり、その二つが合体したように写るのだ。この絵面は新しいかもしれないな。もうちょっとスマートに仕上げて、宙玉レンズのように普及させたいものだ。


相方の西澤さんは水玉レンズで撮影した。これはレンズ前に透明なアクリル板を取り付け、そこにスプレーで水滴を付ける。水滴の一つ一つに西澤さんが写るのだ。これはかなり不気味な写真になりました。考えてみたらこれらの撮影法で人物を被写体にしたのは初めてだった。関西限定ではありますが、世界初公開の写真をお楽しみください!


◇大阪ほんわかテレビ
4月1日 23:20〜(読売テレビ)
http://www.ytv.co.jp/honwaka/


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