上原ゼンジ
●一番ウケたのは透明球レンズ
hanaさんとデイズフォト通信企画のシリーズ撮影会「眼であるく」のゲストに呼ばれ、15名の参加者とともに、善福寺川緑地で撮影をしてきた。
この撮影会はまだ始まったばかりで、hanaさん案内のもと、ゲスト写真家とともに、お散歩しながら撮影を行うのだが、第一回目のゲストが小林紀晴さん、第二回目が私、そして第三回目が大和田良さん、と続いてゆき、同じ場所をそれぞれの写真家がどのように切り取って行くのかを、一緒に体験していくというのが一つのコンセプトとなっている。
私の場合は自分がどう撮るのか、ということよりも、参加者になるべく満足して欲しい、という気持ちが強かったので、参加者が使うための透明球レンズなどを工作して撮影会に臨んだ。
15人分の工作をするのはさすがにしんどいので、3つのパターンをチェンジしながら試してみるというスタイルにした。3つのパターンというのは、透明球レンズと、歪みガラス、そして意図的な手ぶれ写真だ。
透明球レンズは6つ工作したのだが、今回新たに開発したのは、以下のような工作法。
1)透明プラ板に電動ドリルで穴を開け、リーマで穴を広げる。この方法だといろんな大きさの透明球に対応できる。
2)プラ板の穴のところに強力な接着剤をつけて、透明アクリル球を接着。さらに紙管に接着。
3)最後に可愛いマスキングテープを巻いて完成。このテープは別に必要ではないんだけど、カメラ女子に媚びを売ってみました(笑)
一番ウケたのは透明球レンズだった。私が撮っている写真を見て「なんか面白そうだな」とは思っても、自分で工作するとなると、ちょっと面倒だ。しかし、実際に撮影をしてみると「もっと撮ってみたい」と思わせる体験だったようだ。デジタルカメラを使ってはいるけど、やっていることはアナログなので、そんなプリミティブな体験が新鮮なんじゃないだろうか。
◇完成品はコチラ
http://zenji.jugem.jp/?eid=23
歪みガラスというのは、ガラス容器のフタや皿など通して撮影し、世の中を歪ませてしまう手法。今回用意したのは、フタや皿は新宿ミロードの雑貨店「ナチュラルキッチン」で購入した。消費税込みで105円だけど、けっこう楽しめる。一眼レフの場合は、手作りの琉球ガラスの皿なんかが面白い。
意図的な手ぶれというのは、シャッタースピードを遅くして、わざとブレさせて撮影する方法。撮影会の当日はすごく天気が良くて、シャッタースピードを遅くしようとすると露出オーバーになってしまい、参加者の手応えはいまいちだった模様。
そんな中、私は一人でNDフィルタを使って光量を落としながら撮影をしていました。皆さんゴメンナサイ(笑)。NDフィルタを使わなくても、車の遮光フィルムやカラーセロファンなんかを使っても光量を落とすことは可能。たとえば、赤セロファンと青セロファンを重ねたらどうなるか? なんていうことを試してみても面白いと思う。
手ぶれに関してはあまり面白さを伝えられなかったんだけど、実は本人としてはあらためて可能性を感じた。最近は輪ゴムで一眼レフを吊り下げてビヨンビヨンさせていたけれど、これだと適確なフレーミングができない(当たり前だ)。そこで、もうちょっと手元でカメラを震わせるような装置を開発できないものかと思いついた。
細いゴムで蜘蛛の巣のようなものを作って、そこにカメラを取り付けるとか、弾力性のある薄いラバー生地にカメラをくっつけるといったようなイメージだ。そんなゴム製のネットや生地はないものかとネット検索していた時に、ふと思いついたのがコンドームだ。コンドームの先っちょをカットして、そこからレンズを出してみたらどうだろうか? 薄くて弾力性があって。うん、イケル、イケル。
なんてえことを思いついたけど、これはカメラ女子から総スカンを食いそうだから止めておくことにしよう(何カメラ女子を意識してんだよ>オレ)
「ゼンラボ」始めます
4月から、1年間12回のワークショップ「上原ゼンジ写真実験室」(通称ゼンラボ)を開講します。トイレンズや透明球レンズの工作をしたり、撮影会をしたりしながら、自分なりの写真が撮れるようになることを目的とします。そして最終的には写真集を作る(お金をかけないで)というところまでやりたい。
詳細はホームページをご覧ください。少人数限定なので、今すぐお申し込みください!
http://www.zenji.info/workshop/announce.html
●電子書籍の話
前回原稿を書いた「電子書籍で印税生活?」に関してですが、電子書籍化してみようと思っていたのは、「デジカメでトイカメ!! キッチュレンズ工房」という本でした。残念ながら絶版になってしまったため、電子書籍として復活できないだろうか、と思ったわけです。
元々はデジクリで連載したコンテンツだし、「問題ないですよね」という意味で、版元の方に勝手に電子書籍化しても構わないかお伺いを立ててみたところ、「ちょっと待ったー」がかかりました。何か契約上の問題でもあるんだろうか? なんていうことを考えながら、版権を管理されている方と打ち合わせをしたんだけど、それは「うちから電子書籍として出版しないか」というお話だったのだ。
すでにレイアウトも始めていたし、ちょっと迷ったんだけど、今回はこの申し入れを受けることにした。まあ、どちらで出すにしても、そんなにたくさん売れるとも思えない。ただ、欲しいという人が現れた時に、著者としては、簡単に読めるような手段を用意しておきたかったのだ。
打ち合わせが進むうちに、iPhoneアプリにしたらどうか、とか、いろいろと面白そうなアイディアも出てきた。これはこれで面白そうな展開になってきたので、またレポートさせて頂きます。そして、絶版になったコンテンツを持っている著者は、きちんと整理して、電子書籍としての復活の道を探ってみてはどうだろうか、と思った次第だ。
◇「その向こうに」
デイズフォト通信のWEBギャラリーに、歪みガラスや輪ゴムカメラで撮影したモノクロ写真「その向こうに」をアップ。「こんな風に写るんだ!」というのを見てみてください。
http://www.daysphotopress.com/
◇hanaさんの写真展「目であるく─端境─」開催中!
http://hana-photography.com/
【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇上原ゼンジのWEBサイト
http://www.zenji.info/
◇Twitter
http://twitter.com/Zenji_Uehara