「写真を楽しむ生活」のページ頭です

写真を楽しむ生活

写真が好きなすべての人に役立つ情報クリップ。写真展情報は"日本最強"!

カテゴリ ‘コラム’ のアーカイブ

おかだよういち


9月8日に、Adobeから写真データに特化したクラウドサービスがリリースされるとのアナウンスがありました。


Adobe Carousel(アドビカルーセル)というサービスです。9月中にMacのLionとiOSデバイス用のソフトが提供され、WindowsやAndroidなど他のデバイス用は2012年の提供を予定しているそうです。


まずはイメージ動画を観てみましょう。英語のナレーションですが、イメージアニメーションを観るだけでもどんなサービスなのかなんとなくわかると思います。
http://youtu.be/8Ar7Q2LY4rU


容量無制限で写真をアップロードできる。iPhoneやiPadやMac、来年他のデバイス用がリリース以降は、それらとも同期してどの端末からでも利用可能。更にクラウド上で画像処理ができるので、加工した写真もすべての端末から利用できる。Facebook、Twitter、Tumblrとの連携。家族や友達との共有も簡単。


ということができるようです。2012年1月31日までは、年間59.99ドルまたは月々5.99ドル。1ドル=80円換算で年間約4,800円または月々480円の割引価格。通常価格は、年間99.99ドルまたは月々9.99ドル。年間約8,000円または月々800円程度です。


Flickrと比較すると、内容的には
・容量無制限
・すべてのデバイスで利用可能
・他のWebサービスとの連携
・家族友達との共有など出来る
など同等なので、価格だけみればかなり高い気がします。


Photoshopを持っているAdobeが後発でリリースするサービスですから、価格が高くても使いたくなるのは、画像処理アプリがどこまで使いやすく機能が豊富かというところだと思います。


こちらの動画を観ると、iPadで操作しているアプリがなかなか良さそうな印象を受けます。iPadでこれだけサクサク動いてトリミングや角度調整などができるなら、年間5,000円弱で容量無制限なら使ってみたいと思います。
http://youtu.be/fhgUQ6L3Hiw


ちなみに「Carousel(カルーセル)」とは「回転木馬」という意味。例えば、iTunesのアルバムカバーの画像をくるくるめくるような見せ方を、カルーセルと言ったりしますよね。アプリを使っている動画を見ると、写真をくるくるめくっている場面が多く出てくるので、そういう名前が付いたのでしょう。


iOSでFlashが見られないなどで、AdobeとAppleはお互い色々主張していて傍から見ると決して仲良しという感じはしない両社ですが、何故AdobeはWindowsやAndroid版よりも数ヶ月も先行して、AppleのiPhoneとiPadとMacのLionで使用できるアプリをリリースするのかと思いました。


しかし、世界中の人が日々写真をアップしているFlickrで、今一番使われているカメラが、ニコンの一眼レフD90を抜いてiPhone4になっていますので、そこをターゲットにリリースするのは当然なことでしょう。
http://www.flickr.com/cameras/


9月中にリリースというアナウンスですが、まずは30日間無料お試しでレビューしたいと思います。実際に使ってみた感想などはまたご紹介しますね。


秋にリリースと言えば、AppleからもiCloud。iCloudもiPhoneやiPadとMacの写真を、クラウド上で同期するフォトストリームという機能があり、最新の写真1,000枚がクラウドに保存されて価格は無料。
https://www.icloud.com/


たまにブログやTwitterなどで、友達や家族が写っている個人の写真はクラウドにバックアップするべきではないと言う意見も見かけますが、わたしはその意見とはまったく反対で、むしろクラウドにバックアップをした方がいいと思っています。


現状おすすめのFlickrをはじめとして、Google+&Picasaウェブアルバム、そして間もなくリリースされるCarouselとiCloud。これだけさまざまな写真用クラウドサービスが続々とリリースされるのは、多くの人が重要だと思っているからだと思います。


各サービス価格や機能の違いを含めメリット・デメリットがまだわかりにくいので、リリースされたらそれぞれ使ってみてレビューや比較をお伝えしますね。


【おかだよういち/WEB&DTP デザイナー+フォトグラファー】
<http://s-style-arts.com/ > okada@s-style-arts.com
<twitter:http://twitter.com/okada41>


先週は久しぶりに東京に5泊滞在していました。「これでもだいぶ明るくなったよ。」と友人から聞きましたが、それでもわたしの知っている東京からはかなり暗い印象でした。

おかだよういち


東日本大震災から130日が過ぎました。震災関連の報道やドキュメンタリーで気付かされたのが「写真の大切さ」でした。


被災地の倒壊した自宅跡で、アルバムを発見して泣きながら喜んでおられた人達の姿や、原発事故の福島で避難所から一時帰宅で持ち帰るものを、写真やアルバムと答えている人達の姿を放送を通じて見ると、人間にとって写真というのは単なる記録ではなく、撮影当時のことを色々と思い出させてくれる記憶の断片であり、思い出のかたまりのような気がします。


そんな大切な写真。今はほぼデジカメで撮影すると思います。みなさんはどうやって保存していますか? また保存したものはバックアップを取っていますか?


今回のような、街まるごとが被害にあうような災害は数百年に一度かもしれませんが、例えば自宅やオフィスが火事や洪水に遭ったり、もしかしたら泥棒に入られるかもしれません。やはりどこかインターネット上にデータのバックアップがあれば、自宅やオフィスに万が一何かあってもデータの復旧はできるので安心です。最近よく耳するクラウドというやつです。


写真データのバックアップ先として、オンラインアルバムのサービスを多くのカメラメーカーやインターネット関連企業が提供しています。どのサービスも最初の数ギガバイトまでは無料で、それを超えると10ギガバイト月々いくらとか料金がかかるものがほとんどです。


最初の数ギガバイトが無料といっても、最近メモリーカードの16GBでも2,500円ほどで買えるご時世なので、あっという間に無料分の容量なんて消費してしまって物足りないはずです。


参考:Transcend SDHCカード 16GB Class10(Amazon:2,480円)
http://t.co/3LdZBVE


かといって、追加容量の料金を毎月数千円出費するというのも、いくら保険としてのバックアップとはいえなかなか大変ですよね。そこで、あまりお金をかけずに使えるものをいくつか紹介します。


1)Flickr
http://www.flickr.com/


やはり一番のおすすめは、誰がなんと言おうとFlickrでしょう。FlickrはアメリカYAHOO!のサービスで、まだクラウドという言い方が出てくる前から写真に特化したWebサービスです。


アメリカのサービスで、ヤフージャパンとは関係がなく、残念ながらサインアップの手順などにまったく日本語がないため、英語が苦手な人にとっては若干敷居が高いかもしれません。しかし、Flickr以上に内容も充実していてコストパフォーマンスの高いものは他にないので、英語に躊躇せず使ってみましょう。容量無制限のプロアカウントが年間たったの24.95ドルです。
http://www.flickr.com/upgrade/


この「光画部トーク」でも、2009年のFlickrを取り上げました。さすがにWebサービスで2年も経つと、いろいろと中身も変化していますので、次回以降じっくりと説明します。


2)Picasa ウェブアルバム
http://goo.gl/NAAWd


Googleのサービスです。Gmailを使っている人や、他のGoogleのサービスを使っていて既にGoogle IDを持っている人は、すぐにでも使えます。アカウントがない人は無料で簡単にアカウントが作れます。1GBまで無料で、それ以上容量を追加するには料金がかかります。


・20GB(年間:5ドル)
・80GB(年間:20ドル)
・200GB(年間:50ドル)
・400GB(年間:100ドル)
・1TB (年間:256ドル)


これらの追加容量は、Picasaウェブアルバムだけでなく、GmailやGoogleドキュメントと共有されるので、他のサービスでも多くのデータを扱う人は追加するのもいいかもしれません。


お金を払うのは嫌だけど、無料の1GBじゃ全然足りないという人は、800×800ピクセル以下の画像であれば容量としてカウントしないので、いくらアップロードしても無料です。


最近のデジカメの解像度からするとかなり小さな画像の印象ですが、ブラウザで見る分には問題ない大きさだと思います。15分以内の動画についても同じく1GBの無料分にはカウントしないので、いくらでもアップできますね。


800ピクセル以下の画像というと、プリントするにしては少し小さい気がしますが、15分以下の動画はかなり実用的です。実際にiPhoneやデジカメで撮ったままの未編集動画は、そんなに長くな
いと思います。
http://goo.gl/HMXxR
More storage, more photos, more fun(英語)Picasa ウェブアルバムについても使い方などまたじっくりと説明したいと思います。


3)Snapfish
http://www.snapfish.jp/


Snapfishは、オンラインでデジカメプリントを注文したり、その他ポストカードやフォトブック、カレンダーや写真がプリントされたマグカップなどいろんなフォトグッズを提供しているサービスです。


その元となる写真を保存するのは、容量無制限で無料。一年の間に最低一回、WebサイトからプリントなどSnapfishが提供する何かしらのフォト商品を購入するのがルールです。
http://goo.gl/4xOjf


プリントなどは一枚10数円ですから(送料が数百円かかりますが)「気に入った写真は必ずプリントしているよ」って人にはいいサービスではないでしょうか。
http://goo.gl/1GKYR


これらのサービスを上手く組み合わせて利用すれば、比較的お金をかけずに大切な写真をたくさんインターネット上のクラウドに保存できます。プリントされた物質としての写真や、自分のパソコンやハードディスクが例え災害や事故でなくなってしまっても、データはどこかに保存されているのでインターネットに接続すれば、そこに思い出は残っているはずです。


写真だけ丸ごとまとめてというわけでなく、日々のスナップ数枚ということであれば、FacebookなどSNSのフォトアルバムを利用するのも手かもしれません。


音楽CDや映画DVDなどは、がんばってバックアップしなくてもTSUTAYAに行けばいくらでもあるので、もしなくなったとしてもそんなに問題はないのですが、あなたの撮った思い出の写真や、あなたしか持っていないデータは必ず複数箇所にバックアップしておくようにしましょう。


【おかだよういち/WEB&DTP デザイナー+フォトグラファー】
http://s-style-arts.com/ okada@s-style-arts.com
<twitter:http://twitter.com/okada41>

おかだよういち


2012年5月21日まで一年を切りましたね! 「何が??」って?日食ですよ、日食。一年後の5月21日、月曜日の朝7時半頃、日本では太平洋側の多くの都市で金環食が観測できます。
http://goo.gl/UcNds


NASAのマップでもわかるように、金環食帯が通るのは東京、名古屋、大阪と大都市をカバーしていて、多くの人が普段の生活圏に居ながらにして見られます。そして、食の中心線が千葉〜東京〜神奈川〜静岡を通りますので、太さが均一の美しいリングが見られるはずです。


残念ながら、わたしの住んでいる兵庫県西播磨地域は金環食帯から微妙に外れているので、殆ど隠れる部分日食になってしまいます(兵庫県で帯に入っているのは淡路島と明石から東・六甲山から南の阪神地域)のようなので、当日は天気予報を見ながら金環食帯の中に移動しようと思っています。


では、まず金環食って何? っていう人のために少し説明します。
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/eclipse.html


日食(Solar Eclipse)は太陽と地球の間に月が入り、太陽が月で隠れてしまう天体現象のことです。ちょうど新月の日に起こりますが、太陽と地球と月の公転する面が一直線ではなくズレているので、うまく一直線に並んだ時に地球上のごく一部の限られた場所で観測できる現象です。


皆既日食(Total Solar Eclipse)の方は、2009年7月22日トカラ列島、屋久島、種子島・奄美大島の一部などで観測されるはずだでしたのが、現地の悪天候でツアーに参加したのに残念ながら見ることができなかった、太平洋上に出ていたクルーズ船からはとてもきれいなダイアモンドリングが観測された、などとニュース映像などでご覧になった方も多いでしょう。


太陽が月に完全に隠れて、その周囲からは美しいコロナが広がります。また皆既開始と終了の瞬間は、一点が美しく光り輝く「ダイヤモンドリング」が確認できる、一大スペクタクル天体ショーです。
http://goo.gl/XS9dC


月が地球の周囲を回る公転面は、真円ではなく楕円ですから、地球と月の位置は近くなったり遠くなったりしています。なので、地球から見ると大きく見えたり小さく見えたりします。


二ヶ月前の3月19日が、まさにこの月が大きく見えたスーパームーンでした。14%も大きな月だったのでTwitter上でも月の写真をアップしている人が大勢いましたね(※ちなみに、地平線から出てきたばかりの月が大きく見えるのは、ビルなどの建物の比較による目の錯覚です)
http://goo.gl/jdD45


月が地球から遠い位置で新月の時、見た目月は小さいので、その小さい月が太陽と重なっても、太陽全体を隠さず回りがリング状に太陽が見えたままになるのが、一年後に観測できる金環食
(Annular Solar Eclipse)です。
http://goo.gl/rBC9D


さて、来年の5月21日に話を戻します。日本列島は長いので、日食の時間は鹿児島と東京では10数分時間差がありますが、部分食の開始がだいたい6時10分から20分ごろ、金環食の開始が7時20分から35分ごろ、金環食の継続時間は中心線に近い場所で約5分程度、大阪では3分程で、日食すべて終了するのは9時前後。なので、朝ごはん食べたり、通勤・通学の時間になるんじゃないかと思います。詳しい場所は、こちら国立天文台のサイトにある日食各地予報で調べられます。
http://goo.gl/71BYd


金環食の撮影ですが、太陽なのでデジカメでそのまま太陽を撮ることはできません。望遠レンズを付けてそのまま太陽に向けてファインダを覗くのは絶対にやめましょう。目が焼けて失明する恐れもあります。カメラもセンサーなどが焼けてしまうかもしれません。


ND(Neutral Density)フィルターという光の量を減らすフィルターを使います。
http://amzn.to/kG2l0v
日食撮影の減光用NDフィルターはケンコーPRO ND10000が定番ですが、
http://amzn.to/lFco0Z
Kenko フィルターMC-ND400 PROやKenko PRO1D プロND8を2枚重ねで使ってもOK。
http://amzn.to/iIDUpy
http://amzn.to/jymbzU


また、金環食中の太陽を直接撮影するのではなく、通勤途中の公園や街路樹の木漏れ日を見てみると、かわいいリング状の輪っかになっているはずなので、それなら携帯のカメラでも撮れるはず。めったにない事なので、そんなスナップも楽しいかもしれません。
http://goo.gl/xC79f


なお、NDフィルタを付けると光量は減りますが、赤外線は通しているので肉眼でファインダを覗くのはやはり危険です。肉眼で見る場合は、日食グラスを用意しましょう。前回の日食の時に買ってまだ持っている人もいるかもしれませんが、持っていない人は5月21日が近づくときっと手に入りにくくなると思いますので、早めに手配するとよいかもしれません。
http://amzn.to/kNNciG


毎朝わたしが聴いているMBSラジオ「朝からてんコモリ!」のパーソナリティ、子守康範さんがかなりの日食マニアで、2009年7月22日は屋久島へ、2010年1月15日はインドのコモリン岬へ、7月11日はイースター島へ、日食ハンターとして観測に行かれ、わたしはワクワクしながらラジオでその日食のレポートを聞きました。その現地の様子がYouTubeにアップされていましたのでご紹介します。これを見ながら、一年後の5月21日が晴れるようにみんなで念じましょう!
http://youtu.be/vmrw2o9cEzU
http://youtu.be/xmnW5K9w_F4


【おかだよういち/WEB&DTP デザイナー+フォトグラファー】
http://s-style-arts.com/ okada@s-style-arts.com
<twitter:http://twitter.com/okada41>

上原ゼンジ


デジカメWatchに『「トイ蛇腹レンズ」を作ってみよう 〜世界でただひとつの描写を手に入れる』というテキストを書いた。この連載を以前から読んでいただいている方はご存知だと思うが、蛇腹レンズというのは、デジクリでテキストを書きながら進化してきたネタだ。


今、デジクリ(写真を楽しむ生活の姉妹メルマガ)のサイトで調べてみたら、最初に蛇腹が登場するのは、2006年8月17日号で「蛇腹一号大失敗」という話を書いている。
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20060817140300.html


そうそう、一番初めに作った時はうまくいかなかったんですよ。カッコイイ蛇腹レンズが完成して、いざメラのボディに取り付けようと思ったら、付かなかったんだよね。5年前の文章だけど、すごくフレッシュ感じがするなあ。最近は白髪も増えてきたし、文体も変わってきたようだ。


この後、手ブレ増幅装置だの、宙玉レンズだのを開発し、いろんなことにちょっかいを出してはきたけど、蛇腹に関してはいまだに進化しているし、もうちょっと広がりが出てもいいかなと思っている。


進化した部分で言うと、袋蛇腹というのと、広角レンズというのが加わった。袋蛇腹というのは、まあ袋の蛇腹ですよ。って何の解説にもなってませんねw。写真の方をご覧ください。紙を幾重にも紙を折り畳んでいくんじゃなくて、袋一つで蛇腹代わりにできないかと思って取り組んだ方法だ。


蛇腹を折るという行為には、はっきり言ってハードルがあると思う。やってみると簡単な折り紙レベルなんだけど、「手前のような者が蛇腹を折るなんて、めっそうもございません」というのが、ごく一般的な反応だろう。そこで、誰もが簡単に蛇腹レンズを作ることができないだろうか? と、ずうっと考えていた。


そんなある日のこと、私は池袋のディープな中国料理店で小龍包に舌鼓を打っておりました。ぼんやりと小龍包の形状を見ていた時、ついに閃いたのです。そして「ΕΥΡΗΚΑ」(ヘウレーカ)と叫びながら、皿に盛られていた小龍包をむんずと掴み、持っていた一眼レフの交換レンズをはずしてボディの中にいきなり突っ込みこそしませんでしたが、小龍包の形状を仔細に眺め、設計図を頭に思い描きました。これが、小龍包式袋蛇腹誕生の逸話にございます。


たまに「いろんなことをよく思いつきますね」とか「どういう時に思いつくんですか」とか聞かれるけど、ずーっと、こういうことばっかり考えてるんですよ。後はメシのことと。だから私の頭の中を割ってみると「写真、写真、写真」というのと「メシ、メシ、メシ」というので構成されているということが分かります。


写真のことを一生懸命考えていても、時間がきたらお腹が空きます。そしたら頭の中は一瞬にしてメシにスイッチします。考えごとに集中していて、食事を忘れてしまうということはありえません。身体の欲求に対し、ひじょうに従順な人間であると言えるでしょう。


・袋蛇腹の次は広角化


蛇腹レンズの広角化に成功したのはつい最近のことだ。このトイ蛇腹というのは、レンズを一枚だけ使って写真を撮る、というのがポイントだけど、難点としては、あまり広角にはならないという問題がある。広角レンズっていうのは、焦点距離が短いですよね。だけど、あんまり焦点距離が短いレンズだと、レンズをカメラのボディーの中に入れないとピントは合わない。


凹レンズを使えば、広角にできるという話を聞き、何度か広角化への道を模索していたのだがなかなか思うようにいかず、頭から血の滲むような努力を重ねた結果、ついに35mm換算で35mmぐらいの画角になった。レンズに関する知識に乏しく、ただファインダーを覗きながら、レンズを取っ換え引っ換えするだけの力技だったので、まあ良くできたものだと思う。


ただし、今までは小さなプラスチックレンズを一枚使っていただけだったのが、大きめのガラスレンズを二枚プラスしたので、レンズは重くなり、紙製の蛇腹はダヨーンと伸びて、情けない姿になってしまった。かなり笑えるレンズになったが、別に笑えるレンズを作ろうとしていたわけではない。私はただ広角にしたかったのだ。


でも試し撮りをしてみたら、なかなかいい感じの描写になった。ここで言ういい感じというのは、ダメダメでいい感じということ。トイカメラやトイレンズはたくさんあるけど、ここまでダメダメ、かつ個性的な描写なのは見たことがない。このダメさ加減はトイカメラでもPhotshopでも無理。そんな描写のレンズが作れてしまうというのが、この工作の醍醐味だ。


プリントしたり、WEBにアップしたりという過程では、必ずPhotoshopを使うけど、あとからPhotoshopでいじり倒すというのは、あまり面白くないし面倒くさい。Photoshopで何でもできてしまうから、あえてPhotoshopではできないようなアナログ表現を模索する、というのが私のやろうとしていることなんだろうな。


◇デジカメWatchへの記事へのリンク
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/special/20110516_445566.html


◇早くも工作した人がいます/the Things give Pleasure
http://quack-quack.at.webry.info/201105/article_8.html


・関西電塾 上原ゼンジの実験写真術


関西電塾主催で「上原ゼンジの実験写真術」という講演があります。美学校で赤瀬川原平さんに習い、本の雑誌社で編集者として働き、森山大道さんに写真を見ていただき、実験的な写真を撮るようになった過程をお話ししたいと思います。宙玉レンズや万華鏡カメラ、トイ蛇腹レンズなどを持っていきますので、興味がある方はぜひお越しください。


http://i-digital.jp/kansai_denjuku/02/01-1/
http://www.2055.tv/irie/img/2011_05.pdf
日時:5月28日(土)受付 13:00〜
会場:株式会社2055(東大阪市中新開2-8-8 TEL.072-963-2055)
会費:一般5,000円、電塾/APA/JPS/WA各会員3,000円、
学生1,000円


・Facebookページも作ってみた


「上原ゼンジ写真実験室」のFacebookページを作ってみました。「いいね!」ボタンをクリックすると、ウォールの更新情報が表示されるようになります。
http://www.facebook.com/zenlabo


【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com
◇上原ゼンジのWEBサイト
http://www.zenji.info/
◇Soratama – 宙玉レンズの専門サイト
http://www.soratama.org/
◇Twitter
http://twitter.com/Zenji_Uehara

おかだよういち


3月11日の震災から一か月以上経ちましたが、いまだ多くの出来事が進行形です。報道やインターネットの記事や、多くの人のTweetなどで被災地の現状を見聞きするたびに、大変悲痛な思いになります。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。


今回、関西は直接的な被害がなかったのですが、やはりあれだけの無残な映像を見続けてしまうと無力感で何も手につかないばかりか、夜中に突然涙があふれてくるような、精神的に不安定な状態が数日間続きました。


でも、何か自分達で出来ることがないかと、知り合いに相談したところ「Untitled!!!!!!!!」というチャリティイベントの開催が実現しました。
http://m2.cap-ut.co.jp/un/


震災後3週間ほどの4月3日にこれができたというのは、このイベントに参加した全員が「何かしたい!」という強い意志があったからだと思います。


一人15分の持ち時間でバラエティに富んだ内容の12セッション。その中でわたしは「写真の力〜写真が伝えられる事・伝えられない事」というタイトルで「写真」についてお話しました。15分という短い時間だったので、その場では全部伝えきれなかった感じもしましたので、ここで詳しく書いておきたいと思います。


「写真」という言葉、元々の英語は「Photograph」です。「Photo=光」「graph=描かれたもの」なので、本来「写真」よりも「光画」と訳したほうがしっくりきます。この連載のタイトルにも「光画」を使っています。光で像を描くのですから、光のない暗い場所では撮るのが難しいですし、光の量を調節するカメラの機構である「絞り」や「シャッター」を調節することで、様々な表現が可能になります。


「写真」という言葉を深く考えてみます。


「写=1.文書・絵などを元のとおりに書き取る。まねてそのとおりに書く。転写する。模写する。2.ある物をまねてそのとおりの形につくる。模造する。3.見聞したことを文章や絵で表現する。描写する。4.写真や映画に撮る。撮影する。」


「真=1.うそや偽りでないこと。にせものでないこと。本当。真実。ほんもの。2.まじりけがないこと。本来の意味どおりであること。3.道理として正しいこと。真理。4.まじめなこと。真剣なこと。また、そのさま。5.論理学で、ある命題が事実と一致すること。また、そのさま。」


このようなことが国語辞典に書いてあります。それぞれの漢字の意味から「写真」とは「真実を写すもの」のような意味があるように感じます。


本当にそうでしょうか? 写真は真実を写していますか?


哲学的な話になってしまいますが、真実とは人それぞれ違うものだと思います。わたしが感じた真実は、必ずしもあなたの感じた真実とは一致しないものです。人それぞれに真実を持っているのですから、ある人にとってそれが真実でも、別の人が見れば虚構と感じるかもしれません。


写真は必ず撮影者の作為が込められています。広告写真であるなら、そのような作為は当然あると想像できるでしょう。では、報道写真はどうでしょうか。報道写真は現地のありのままを撮っているのが前提ですから、そこには作り込む要素はないと思うかもしれません。しかし、お天気カメラのようなただ漠然と自動で風景を映すような映像と違い、人間が撮影する写真は撮影者の何かしらの意識が写し込まれます。


例えば、同じ場所で同じものを撮る場合でも、レンズのチョイスでまったく違う印象になります。広角レンズで全体を広く撮るのか、望遠レンズで遠くから一部を切り取るのか。同じ広角レンズでも被写体にぐっと近づき、背景との遠近感を強調するのか、漠然と全体を写すのか。


また、カメラを構えるボジションやアングルでもずいぶん違う印象になります。立ったまま目線の位置で水平に構えて撮るのと、地面すれすれの位置から見上げるように撮る写真は、迫力や伝わってくるものもまったく違うものになります。被災地大槌町で撮影された写真を見比べてみます。


http://goo.gl/vMhUO
http://goo.gl/LDg57


大津波によって陸へ打上げられた船が、家屋の屋根の上に残されている写真二枚ですが、上空からの空撮写真と船の下から撮られたものでは、受ける印象がまったく違うと思います。


レンズが切り取って写真に写っている部分は、そこにある世界のごく一部です。でも、写真を観る側はそれがすべてと錯覚しがちです。当然のことながら、その場では人間の五感で感じる色々な
情報やニュアンスが、すべて写真から読み取れ感じられるわけではありません。


http://goo.gl/e6vzf
http://goo.gl/OXvFQ


陸前高田市で撮影されたこの二枚の写真も、一枚は子供の目の高さで撮られた、女の子が一人で後ろに自衛隊員が写っている写真。もう一枚は同じ女の子が他の大人と写っている写真。これらから受ける印象はまったく違いますし、心の中で湧きでてくる感情やストーリーも違うのではないでしょうか。


レンズやトリミングなど、光学的な効果だけではありません。コントラストや彩度、ホワイトバランスの調節だけでも、様々な方向に印象づけることができます。これらの調整は、パソコンに撮り込んだ後に、Photoshopで修正するともしかしたら「それは嘘だ!」と言われるのかもしれません(少なくとも昔は、デジタル処理された写真は嘘だと言われました)。しかし、最近はカメラ内で色々な調整ができたり、HDRの処理もできてしまいますから、カメラで撮ったままと言えなくもない状況になります。


http://goo.gl/BGmfO


ホワイトバランスの調整などで、全体をブルーがかったモノトーンの写真にすることで、とても静かな印象を受けます。また寒さも伝わってきます。


http://goo.gl/CJWwH


逆光でコントラストを強調するのも、ドラマティックな印象が伝わる手法のひとつです。


http://goo.gl/9oQtW


この写真は、ちゃんと確認したわけではないので定かではありませんが、わたしの印象では、燃えている炎と煙の部分とその他の部分HDRの処理をしてあるか、彩度の調整がしてあるのではないかと思います。


作為があるからといって、それが嘘とか、歪められた真実ではありません。これらすべてが、そこで撮影したフォトジャーナリストの目を通した真実です。しかし真実はそれだけではなく、ごく一部であることも確かです。


写真を見る時は、それがすべてだと過信せずに、その写真が撮られた背景まで考えながら真実を読み取る力が大切だということを、震災の多くの報道や写真によって再認識させられました。


【おかだよういち/WEB&DTP デザイナー+フォトグラファー】
http://s-style-arts.com/ okada@s-style-arts.com
<twitter:http://twitter.com/okada41>

YouTubeで見つけました!

広告
このページの上部にもどる

アクセス

いろいろな方法でアクセスできます!