●今井彰「赤い追跡者」を読んだ(新潮社、2013)。最近読んだ本のなかで最も熱く、最もスリリングで、最も感動的で、「一気読み」ってこの本のためにある表現かと思う。筆者はかつてNHKのディレクター、プロデューサーとして辣腕をふるい、NHKスペシャル「埋もれたエイズ報告」で日本ジャーナリスト会議本賞・放送文化基金奨励賞受賞、ほか受賞多数。2000年に立ち上げた「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」で菊池寛賞、橋田賞など受賞。エグゼクティブ・プロデューサーを経て2009年退局、小説家に転じた。「赤い追跡者」は「実際に起きた事件を基にして小説的に構築されたものである」との断り書きがある。
つまり、あの衝撃的な(見てはいないけど)「埋もれたエイズ報告」を制作した、すべての真相を知る当事者が書いたのだから、リアルなのは当たり前だ。取材の悪魔・西は今井自身がモデルである。「議論させちゃいけない。社会正義もどきじゃなにも解決しないんだよ。ドスーンと物証を突きつけて二度と抵抗させないようにするしかないんだ」という西は、封印していた禁じ手をすべて解き放つ。恫喝し、盗み、犯し、欺く。そして、エイズ会議のマル秘資料、汚染製剤報告、一号患者のカルテなどを着々と入手し、秘密をひた隠す相手につきつけ、映像を撮る。
なぜ、血友病患者は見捨てられたのか。患者はせいぜい5000人という数において黙殺され、厚生行政円滑化のために存在を隠され、日本国民のエイズ・パニック防止のために見切られた。日本国民として扱ってもらえなかったのだ。そして2000人がエイズ患者となって死んでいった。西らの制作した「消えたエイズ報告」は、こぼれ出るほどの物証と、絶望に満ちた調査報告だった。番組ごと証拠として東京地裁の法廷において上映され、和解勧告がなされる。7年におよぶエイズ民事訴訟は終結した。
「患者と家族達を地獄に落とした連中は犯した罪の代償は払わないといけない。やつらは逃げようとするだろう。だが、必ずやっつける。番組屋ごときが言っていいセリフじゃないから、黙って来た。だが、もういい。俺は弁護士や検事なんぞ、信用してないんだ。だから、俺たちの手でやる。これは民事なんかじゃ終わってはいけない事件だ。そうでなければ、患者や家族の心は決して救われない」という西の追い込みはすさまじい。必殺仕置き人。そして裁判は刑事事件に発展する。あの薬害エイズ裁判の背景がよくわかった。最高に面白い小説だった。(柴田)
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今井彰「赤い追跡者」
●続き。12月に2年縛りが終わるので、5s ゴールド64GBに替えようと思っていた。電話中に切れることが多いため、ようすを見てDoCoMoにMNPしようかなと。auは通話とネットが両立できないということだったが、そこが解消できればなぁ。
MNPだとキャッシュバックがあるし、auのLTEは速いという噂なので試してみたかったけど、このままSoftbankを使い続けるかもしれない。一番最初に本体の在庫が買えるところがいいんだけど。続く。(hammer.mule)