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齋藤 浩


こんにちは。先日、訳あって1泊2日で北海道は旭川・美瑛・富良野くんだりまで行ってきました。


1日目は快晴。2日目は土砂降り。初日に目的は済ませていたので、2日目はフリー!! こうなると普通は旭山動物園に行ったり、美しい丘陵地帯を観光したりするのだが、まあ雨だしね。


それよりも、私にはどうしても行きたい場所があった。函館本線旧線神居古潭駅跡である。私の主だった目的は、そこに静態保存された3両の蒸気機関車をひと目見ることだったが、同行した極親しい間柄の年上の女性Aさんの同意を得るためにいろいろと調べてみたところ、歴史的にも地形的にも興味深い土地だということを知った。まあ地名からしてそれっぽいのだが。ちなみに神居古潭と書いて「カムイコタン」と読みます。アイヌ語の『神の住む地』に漢字をあてたもの。


さて。5年前に北海道旅行したときの地図をたよりに(カーナビは運転させられてるみたいで嫌いなのだ)、レンタカーにて美瑛から神居古潭へ向かう。途中旭川市街地にて『M』の生姜ラーメンを食す。初めて食べたが、たぶん昔ながらの味。
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きっとその昔、冬のある日に蒸気機関車牽引の列車で旭川に到着した旅人も、この繊細で優しい味わいで一息ついたのだろう。ラーメン=オレ的に『劣情の食べ物』なのにもかかわらず、罪悪感を感じずにスープまで飲み干せた。ほっとする味。安心感。そして味はもちろん、店の佇まいからして昭和なのである。のれん、テーブル、椅子、全てが北のラーメンを演出する。是非とも冬にまた来たい。


で、腹も満たされ国道12号に乗ってしまえば、20分もかからずにその地に到着する。トンネルの手前から側道に入り、駐車場に車を停める。外は雨。誰もいない。目の前は石狩川。今日も一昨日も雨なので、濁流の急流である。なんかコワイ。


そしてその濁流の急流にかかる吊り橋を渡る。下を見ると、川面にたくさんの渦が見える。なんでも水深70メートルのところもあるそうだ。コワイ。吊り橋より上流を臨む。コワイ。
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やはりここには神様が居るなあ。ちなみにカムイコタンと呼ばれる地は他にもいくつかあり、いずれも人を近寄らせないような場所だそうな。ここ旭川の神居古潭周辺には、縄文時代のストーンサークルや竪穴式住居の遺跡があるので、大昔から神を感じさせる力があったってことなのだろう。


また地学的にも有名だそうで、北海道を東と西に分断している『構造帯』ってやつがここを通ってるらしい。で、これをはさんであっち側とこっち側とでは全く地質が異なるそうな。ちなみにあっち側が火成岩と堆積岩からなる日高山帯、こっち側が蛇紋岩と変成岩からなる神居古潭構造帯。なのかな?


とかいろいろ考えてみるものの、興味の対象はあくまでも蒸気機関車である。橋を渡り、階段を上る。おそらく、鉄道橋を支える橋脚だったであろうレンガ造りの構造物の向こうに、雨にぬれ立つ蒸気機関車3両が、ひっそりと姿を現した。


1969年、函館本線の複線電化に伴う工事でルートが変更され、この渓谷に沿った旧線は廃止された。その廃止された線路を通って、廃車された機関車たちがこの地に運び込まれたらしい。


静かである。もはや二度と動くこともないであろう巨体が、本線から分断されたレールの上で無言でたたずむ姿は、なんとももの悲しく、なんとも美しかったのである。墓標のようである。かつてある彫刻家が自分の墓石を彫ろうと巨岩にノミを持って対峙したが、自然のままの岩のもつ力にはかなわないと悟ったという話を聞いたことがある。3両の黒い鉄の塊からは、生き様とか悟りとか、そんなことばが想起された。
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この3両の美しさ、力強さはの源は、やはりこの地にあると言っていいだろう。最後まで働いた終焉の地で、北海道の自然に見守られながら自ら墓石となれたのだ。これは幸せな人生といえるかもしれない。という訳で、彼らの足跡を紹介しよう。


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3両の中ではいちばん長生きした。大正時代の名機と誉れ高い貨物用蒸気機関車9600形。1913年製造。名寄区にて1969年10月廃車。奇しくも私の生まれた日と(ほぼ)時を同じくして廃車になってる。北海道にて蒸気機関車が全廃されたのが1975年だから、このときから6年もの間、蒸気機関車というものたちは生きながらえた訳だ。このときの状態で一路線でいいから動態保存路線を残せたらよかったのになあ。なんていつも思う。


ところで、蒸気機関車というものは同じ形式でも使われ方によってさまざまなバリエーションがあったり、配属地による改造などの影響で個体差が大きい。中でも北の大地を疾走したであろう証となるのが、スノウプラウ。いわゆる車両前部に装着されるスカート状の“雪かき装置”だ。


私はこの重装備な感じというか、取り付けた際の線路と車両の間の隙のなさにグッときてしまう体質なのだ。3歳頃から今に至るまでずっとそう。で、この29638にもこの車両専用のものが装着されている。北海道に転属になって、現場合わせで取り付けたと思われる。おそらくピストン先端部が干渉しちゃうので切り欠かれたのだろう、手仕事っぽい味のある上端部がイカスぜ。
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C57201、名機C57のラストナンバー。全部で201両製造されたC57形蒸気機関車の、201番目に製造された方がこちら。
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“製造された方”などと言ってしまうが、なんか蒸気機関車ってモノ扱いしずらいのだ。人っぽく感じてしまう。やはりあの息づいてる感じがそう思わせるのであろうか。


3両の中ではただひとり戦後生まれ。1947年製造。旭川区にて1969年10月廃車。こちらももちろんスノウプラウ装備。ヘッドライト脇に補助灯、さらに重油併燃装置付き。C57を『そのスマートで美しい姿から“貴婦人”と呼ばれている』とかいろんなとこで書かれているけど、オレはこいつを“貴婦人”と呼んでる奴を見たことがない。


どうでもいいけど、90年代初頭、ブームになった“スウォッチ”の紹介で、『“プラスチックの宝石”と呼ばれている』という文章を読んだことがあるが、オレはそんなこと言ってる奴に会ったことがない。あ、話がそれた。


で、オレ的に“貴婦人”なんて名で呼びたくないC57、中でもこの201号機は普通のC57とはひと味違うのだ。数少ない“四次型”と呼ばれるタイプなのだ! 写真では見たことがあったが、本物の四次型C57、しかもラストナンバーに出会えたことにこの旅の真の意義を感じてしまうオレさ。何言ってるかわかんないだろ?いいんだ、ほっといてくれ。


まあ、わかりやすく言えば『やまぐち号』で有名な、トップナンバーC571とは見た目がかなり違うのだ。主な特徴はカバーで覆われた給水暖メ器、前端部の切り欠きの深いデフレクタ、でっぱりのあるランボードなど。なんて全然わかりやすくないですね。
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要は異端なのだ。異端の美とでも言おうか。それこそ“貴婦人”とか言われてるんだか知らないが、C57のもつスマートで美しいポイントが全て荒っぽい印象に置き換えられているというか。


C57であってそうでない…訳じゃなく、でもC57だという、まるで印刷のずれた切手にプレミアがつくような、しかもそれを見ているうちにオリジナルよりも美しく感じてしまうような、量産型ザクよりも旧型ザクに魅力を感じてしまうような異端を愛でる背徳感、ライカが欲しいとか言いながらベッサを5台も買ってしまう愚かさ。そんな自分のダメなところを映し出しつつも最後は肯定してしまうという甘えた人生振り返って、ここに反省するのでした。ありがとう、C57201。


D516、日本で最も有名な蒸気機関車、デゴイチことD51形の6号機。
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1936年製造。北見区にて1969年10月廃車。1115両も製造されたD51だが、初期の95両は製造当時世界的なブームだった、流線型の影響をもつデザインになっている。このD516もその部類で、煙突から砂箱までをひとつの曲線でつないだ通称“なめくじドーム”をもつタイプだ。この日は雨だったので、なめくじがより一層なめくじにみえる。
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こんな中途半端な“半流線型”じゃなくて、ドイツやイギリスみたいに完璧な流線型にすればよかったのに! と思わなくもないが、この程度のささやかな意匠だからこそ、その姿を今に保つことができたのかもしれない。ちなみに製造時、流線型でデビューしたC55形蒸気機関車は、整備がめんどうという理由で後年全て一般的な形状に改造されてしまっている。


雨の中、一人でなめくじドームをながめながら、第一次大戦と第二次大戦の間の、一瞬のモダニズムの輝きを、まるで法隆寺の柱からギリシアの神殿を見るように思い描いてみたのであった。


という訳で、狭く深く一方的な話でした。今回の写真(ラーメン以外)は全てZeiss Ikon+Biogon2/35mmで撮影しています。フィルムはプロビア100。やはりフィルムはいいね。あるうちに使おう。んではまた。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/
1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。

上原ゼンジ


相次いでテレビからの出演依頼が来た。一つは「ぶらり途中下車の旅」で、もう一つは「王様のブランチ」。どちらもふだんあまり観ることはないけど、よく知ってる番組だから、なんか変な気分だ。テレビで自分のツラを晒す恥ずかしさはあるが、個人商店だから、宣伝になるならと引き受けることにした。


「ぶらり途中下車の旅」というのは、毎回違った旅人が鉄道を使って旅をしながら、沿線の紹介をするという番組だ。旅人としてパッと思いつくのは、やっぱり阿藤快だな。でも、本物の阿藤快が目の前に現れたら、どう絡めばよいのでしょうか?


一番初めの打ち合わせの時に、興味を持って聞いたのも、旅人は誰なのかということ。でも、出演する人には事前に教えてくれないのです。一応の段取りはあるんだけど、初めて出会うリアクションを重視したいということで、余計な情報は入れないというシステムになっているらしい。


ただ、私の場合、写真を撮っているところに声をかけられるワケで、「何を撮ってるんですか?」とか声をかけられた時に、(わあ、やっぱ阿藤快だ!)とか、(川合俊一デケーっ!)とか、心の中でビックリしながらも、平静を装って普通に受け答えをしなければならない。最初の出会いで失敗したら、取り返しのつかないことになってしまうが、大丈夫なのだろうか?


撮影は立川の昭和記念公園で行われた。宙玉レンズで撮影するんだったら、コスモス畑なんかを撮ったら面白いと、こちらからリクエストをしたのだ。コスモスはまだ満開ではなかったけど、一応絵になりそうな場所を選んでロケの開始。コスモス畑の中をタレントさんが歩いてきて、他のアマチュアカメラマンなんかにも声をかけつつ、私の所へやってくるという段取りだ。でも、それだったら、途中で誰だか分かっちゃうじゃん! せっかく隠してたのに。


私は一人コスモス畑に取り残され、ロケ隊が現れるのを待った。そして写真を撮りながらロケ隊の方をチラ見していると、チューリップハットをかぶったおじさんが目に入った。やっぱり阿藤快?それとも田山涼成? しかし、そのチューリップハットのおじさんは関係のない人で、本命は元巨人の宮本和知さんだった。「となりのマエストロ」の時は高田延彦だったし、なんかスポーツ選手に縁があるのだろうか。


撮影当日の暑さには閉口したけど、まああまりアガリもせずに会話できたんじゃないかな。こっちはカメラの操作をしなくちゃいけないし、ムービーで撮影しやすいようにするにはどうすればいいだろう? なんていうことを考えていると、テンパっている暇もない。あとムービーというのは、シャッター音がないから、あんまり撮られてる感じがしないんだな。


だからスチールの場合もまったくシャッター音がしなくなったら、撮影時に相手に与えるプレッシャーというのも変わるはずだ。人物撮影の場合、撮られ慣れてる人はシャッターを切るたびにポーズを変えたりできるけど、カメラの前だとすごく緊張してしまい、顔が強ばってしまうこともある。遠くない将来、カメラからシャッター音が消えたら、人物撮影もちょっと変わるんだろうな。


・はしのえみの腕に感嘆


「王様のブランチ」で私が登場するのは、はしのえみさん扮する姫様のコーナーだ。この番組は基本的に関東ローカルだから、地方では知らない人も多いみたいだけど、はしのさんの姫キャラは14年もやってるらしいし、「BOSS贅沢微糖」のコマーシャルなんかにも出てるから、認知度は高いんじゃないだろうか。


姫様はお付きの女の子二人とトリオで登場するが、姫様とも事前の打ち合わせはなく、私が一人待つ部屋へカメラとともに突然現れ、それが初めてのご対面となる。白衣を着た私を見て、何をする人だろうと想像を巡らし、最後に私が「実験写真家の上原です」と名乗ることになる。カメラを前に「実験写真家の上原です」と名乗ることには抵抗があったが、まあしょうがない、文句を言わず、この演出に従うことにした。


ただ、基本的には細かい演出はなく、はしのさんとお付きの女の子にレポートは任されていた。テレビを見ていて特に感じたことはなかったけど、はしのさんの芸人としての能力はひじょうに高いね。お会いして強く感じました。常人には、台本もなしにあんな風に喋ったり、リアクションしたりということはできないよ。お付きの女の子二人も(福井仁美さんと茜ゆりかさん)頑張ってた。素晴らしいトリオだと思います。


撮影は「写真の学校」の教室で行ったんだけど、宙玉レンズや手ブレ増幅装置を使って撮りっこをしたり、万華鏡写真をiPhoneで撮ったりといったことをしてきた。面白かったのは、手ブレ増幅装置に対抗して、はしのさんが動き出したり、大きなバネに取り付けたカメラを使って、はしのさんがセルフポートレートを撮ったりした場面かな。これは私もオンエアが楽しみ。


・スチールにもムービーにも適したカメラ


ロケ隊は家の方にもやってきて、カメラやレンズのブツ撮りなどもしていった。スチールとの違いは、カメラをパンさせたり、ズーミングしたり、フォーカスを移動させたりといったあたりだ。最近スチールカメラマンにムービーも一緒に撮ってくれという依頼が増えてきているようだが、動画と静止画の撮影は、まったく違う技術だと思う。


900万円するというビデオカメラをちょっと持たせてもらったけど、これは重さが8kgもあるらしい。しょうがなくこんな重さになってるんだろうけど、重さのおかげで安定するというのもあるし、一眼レフできれいに動画が撮れるっていっても、ムービーを撮りながらのフォーカス移動やズーミングがムービーカメラのようにスムーズにできるわけではない。


とはいうものの、WEBなどでもムービーで撮ることが当たり前の世の中になってくれば、スチールカメラマンへのムービーの依頼はますます増えることだろう。今ある一眼レフカメラというのは、フィルムを撮像素子に置き換えただけで、見た目のスタイルは銀塩時代とまるで変わりがない。早くムービーもスチールも自在に撮れる、今までに見たことがなかったようなカメラが出現しないものかと思うけど、それはいつぐらいになるのだろうか?


◇テレビ放映予定
「ぶらり途中下車の旅」(日本テレビ系列、BS日テレ)
10月2日(土)朝9:30〜10:30


「王様のブランチ」(TBS系列及びBS-TBS)
10月2日(土)午後1:15ぐらいから、姫様のコーナー


【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com
http://www.zenji.info/
http://twitter.com/Zenji_Uehara

所幸則 Tokoro Yukinori


第2回目となる「東京フォト2010(TOKYO PHOTO2010)」が開催された。去年、初めての「東京フォト2009」は凄く嬉しかった。さらに言えば“自分にとって”嬉しかった。それがすべてだったように[ところ]は思う。「東京フォト」は、2回目、3回目〜20回目と続いていくことが大事なんだと[ところ]は思う。そうやって写真の見方や買い方を知り、「世界の写真市場」と並ぶ日本になってほしい。[ところ]も、それに出展作家であり続けること、輝き続けること。それが大事だ。
http://www.tokyophoto.org/


日本はカメラ大国だ。それはもうまちがいなく世界一といっていい。だけど、世界一の写真大国は日本ではない。それはアメリカだったり、フランスだったりする。そのことは欧米に比べて、写真だけの写真誌は日本では長続きしないことでもわかるし、良い作品を買う習慣がないことでもわかる。しかし、最近の動きを見ていると、「ヨコハマフォトフェスティバル」やこの「東京フォト」が、少しづつ成長して行けば変わって行くのではないかと期待している。


[ところ]は、GALLERY 21から、今年最も注目しているイヤーズ・アーティストの作品として出展された。東松照明さんとならんで選ばれているのは光栄なことでした。
http://www.tokyophoto.org/exhibitor_gallery21.html


1回目と会場が変わり、六本木ヒルズ森タワー40階 academyhills40になり、相当広くもなったし、出展ギャラリーも随分増え、作品の点数に至っては500点を超えている。まだ始まったばかりの「東京フォト」は、まだまだこれから出展数も増え、観客の目も肥えていくことを願っているし、きっとそうなると信じている[ところ]です。


ただ、作品をじっくり見て購入するにはいろいろなところを整備しないと駄目だと思う。まず、全ギャラリーの代表作品出展リスト、カタログといってもいいけれど、そういうものがないと買いたい人は困る。


それと、本気で写真を数100点鑑賞するには、最低2日はかかると思う。[ところ]の持論では、見て脳が刺激されるようないい写真は100枚〜150枚も見たら脳みそが疲れ果てる。


作品数はこれからもっともっと増えるだろうし、本当に写真が好きな人や、何度も見て購入を検討する人に対して、開催期間中の通し券が1日券の1.7〜2.0倍程度で販売されるといいのではないだろうか。


この二つは必須な気がする。実際パリフォトではそうやっているので、いい見本はどんどん取り入れてほしいと思う。


1日目、さらっと全体を見て、気になった写真をカタログでチェックして、2回目で気になった作品をじっくりチェックする。そういうスタイルをこれから作って行って欲しいな。


それと、徐々にでないと無理だろうけれど、参加ギャラリーの審査ももっとしてほしい。今回はある意味、玉石混合の展示だったと思う。玉が9割ぐらいなら石もあって楽しいのだろうけれど、それより石が多いと購入意欲が消えるのではないだろうか。もちろん、いろいろな価値観があるからある程度は仕方ないのだろうけれど。


ちなみに、写真が世界で一番売れるアートフェアはパリフォトである。ギャラリーの審査も厳しい。厳しい審査をくぐり抜けたアートフェアだからこそ、来客者も安心感をもって作品を買って行くし、見にもくるんだと思う。


もちろん、買う人が好きな作品が買える値段なら安心感とかいらないという意見は正論だけれど、どうせ買うなら安心感もついて来た方がいいに決まっている。新進気鋭のギャラリーが審査を通りにくいという弊害はあるけれど、実績はなくとも、今年のニューフェィスみたいに枠を作ればいいと思う。まあ、これは[ところ]の妄想なので気にしないでほしい。


さて、[ところ]が実際に「東京フォト2010に」顔を出したのは、9月16日の内覧会&レセプションパーティだ。これはギャラリーのお得意様と、マスコミ関係者、アート関係者、作家達が中心だ。入ってみると、2500人近い人が森ビルの40階にあふれていて凄く盛況だった。作品がちゃんと見られないくらいだった。もうこれで、この後の4日間で1万人は行けそうな感じ。ちょっとビックリするくらい、レベルの低い作品も何枚か混ざっているようにみえたけど、全体としては見応えがあるという印象をもった[ところ]
でした。


[ところ]のアーティストトークは、初日の13時、なぜか一番集客のないポイントだった。非常に心配だったけれど、30人以上のお客さんが話を聞いてくれてよかった。役目は果たせたかな。その日はちょっと疲れたので、話の後1時間ぐらいで一度帰ったけれど、結局また会場に戻って少し見て回ったけどね。


2日目は、やることが多過ぎて行けずじまい、残念。3日目、行ったときちょうどサンディエゴ美術館の館長のデボラさんがギャラリー21に来ていた。去年の「東京フォト」でもお会いして、誉めて頂いて、パラドックスタイムを一冊収蔵してくださった。今回も新作を気に入ってくれたようだ。
http://www.gallery21-tokyo.com/jp/purchase/book_paradox/


スポンサードをしている日産のスカイラインを、実行委員会のギャラリーの所属作家3人が撮ったポストカード3枚と、「東京フォト」が選んだ作品5枚のポストカードセットが、NISSANのアンケートに答えるだけでもらえる。[ところ]は5人の作家の中に選ばれていたので、今回はそれをデボラさんにお渡しした。来年の春までには、サンディエゴ美術館を訪ねて行きたいと思っている[ところ]です。
http://tokoroyukinori.seesaa.net/?1284891833


所幸則「昼と夜」の写真展告知


TOKYOPHOTOでも人気を集めた、新しい写真の形を模索しつづける思索家でもある写真家・所幸則の「昼」と「夜」の個展の案内です。展示内容は全く違います。


昼はギャラリー冬青において行われる「写真における新しい取り組み」。時間の流れへの考察、写真における時間の意味とはなにか、その実験を世界の大都市の写真や人物など、様々ものでの実験をお楽しみください。未発表作多数です。
会期:10月1日(金)〜10月31日(日)11:00〜19:00 日月祝休
会場:ギャラリー冬青(東京都中野区)
http://www.tosei-sha.jp/gallery.html


競馬新聞を読むおっちゃん



夜はBAR AMRTAで。「失われて行く渋谷、失われてしまった渋谷」時間の流れへの考察、喪失感。西麻布の老舗のギャラリーバーで今は見られる渋谷、もう見られなくなってしまった渋谷を時間の旅をしながらごらんください。
会期:10月1日(金)〜10月30日(土)20:00〜4:00 日祝休
会場:渋谷@BAR AMRTA(東京都港区)
http://www.amrta.co.jp/index_02.htm

おかだよういち


前々回のNo.40で「最新デジカメ2010版」と題して、この秋発売の注目コンパクトデジカメをご紹介しました。そして、今回はデジタル一眼編です。


ちょうど本日、2010年9月21日から26日(現地時間)にかけて、ドイツのケルンのコンベンションセンターで開催される世界最大の映像機器見本市「フォトキナ2010」に合わせて、先週あたりから各社からデジタル一眼やレンズの新製品の発表があり、魅力的な機種がいっぱいです。
http://www.koelnmesse.jp/photokina/


その中でも一番気になるカメラをご紹介します。毎度のことながら、偏ったチョイスで申し訳ないのですが、普段あまり手にしないメーカーのカメラに関してあれこれ論評することは出来ないので、お許し頂きたいと思います。


ニコンD7000(2010年10月29日発売予定)
http://www.nikon-image.com/products/camera/slr/digital/d7000/



ニコンの型番の桁数と、ユーザー層を結びつけて読み解くことはもはや不可能だと、昔からのニコンユーザーである私が思うのですから、どういうルールに基づいて機種名が決まっているのかは、ニコンの開発者にお聞きするしかないのですが、7000という四桁番号から連想する入門機・初心者向けとは全然違う、かなりハイスペックなカメラです。


ニコンのデジタル一眼レフは、センサーがほぼ35mmフィルムサイズのFXフォーマットと、その約3分の2のサイズのセンサーを使うDXフォーマットがあり、このD7000は小さい方のセンサーを使ったDXフォーマットのカメラです。


比較対象となるニコンのカメラは、2008年9月発売のD90と昨年2009年8月28日発売のD300sです。発売当初の価格はD90が12万円前後、D300sが22万円前後に対し、D7000が14万円前後という予想なので、D90の後継という位置付けのような感じですが、中身は限りなくD300sに近く、機能によってはD300sよりも性能が良い部分も多く、非常にコストパフォーマンスが高いカメラです。


ニコンはD300sをDXフォーマットのフラッグシップとしていて、D7000が出てもそれは変わらないとのことですが、一般に使う機能や大きさと金額を考えると、この2台が並んでいたら誰もがD7000を選ぶ気がします。D7000が優っている部分を細く見てみましょう。


有効画素数:D7000 約1,620万画素/D300s 約1,230万画素
測光方式:D7000 2016分割RGBセンサー/D300s 1005分割RGBセンサー
感度:D7000 ISO100〜25600/D300s ISO100〜6400
Dムービー:D7000 1,920×1,080ピクセル(24fps)/D300s 1,280×720ピクセル(24fps)
撮影可能枚数:D7000 1,050枚/D300s 約950枚
重量:D7000 約690g/D300s 約810g


このように上位機種のD300sよりも高性能に加え、プロが仕事で使うのには必須の防塵・防滴マグネシウム合金採用ボディーや、視野率100%のファインダーなどプロのサブ機として充分使える仕様になっています。こんなハイスペックプロ仕様のカメラが14万円前後(量販店のポイント割引とか考えると、実質12.5万円ほど)で買えるのですから、これからデジタル一眼レフを買おうと考えている人は候補に入れてみてはいかがでしょうか。


かつてフィルムの時は、ニコンF3が1980年発売、F4が1988年発売、F5が1996年発売、F6が2004年発売とフラッグシップモデルでも8年程度の間隔がありました。時間がゆったり流れているというか、ひとつの機種を10年近く使い込む贅沢というか…。


そう考えると、デジタル時代の今、メーカーはもの凄い開発スピードを迫られ、ユーザーは数10万で買ったカメラが1年でもう見劣りがする古い機種になってしまって残念な気持ちになる。どっちが幸せなのか、ちょっと考えてしまいますね。


【おかだよういち/WEB&DTP デザイナー+フォトグラファー】
http://s-style-arts.info/ okada@s-style-arts.com
<twitter:http://twitter.com/okada41>


平成の大修理が始まっている姫路城。お城を囲う素屋根の工事が日々進んでいます。
http://flic.kr/p/8BByiF

松林あつし


●WEBカメラでの木星撮影


今年は記録的な猛暑で、ここ伊豆高原も、うだるような暑さが続きました。さらに、ニュースでよく聞く「ゲリラ豪雨」的なものもまったくなく、梅雨が明けてからほとんど雨が降っていません。しかし、やはり湿度は高いのです。湿度が高いと、水蒸気も多く、夜空を見上げても星は数えるほどしか見えません。その数えられる星の内、今の時期一番輝いているのが「木星」なのです。


木星は赤道直径が約71000kmのガス惑星で、火星の外側を回っています。近年の例では、夏は木星、冬は土星が観測しやすい条件となっていますが、これは年と共にずれていきますので、ずっと夏に見えている訳ではないのです。しかし、そのズレは非常にゆっくりで、当分は夏の代表星の座を譲り渡すことはないでしょう(只今、みずがめ座とうお座の間を移動中)。


そしてこの木星、夏の時期は非常に明るく輝いているので、多少の水蒸気や月の明かりがあっても、望遠鏡越しには結構よく見えます。それに比べて、星雲や銀河はもろに水蒸気や月明かり、人工光の影響を受けます。これらは、本当に真っ暗な状況でなければ観測は難しいのです。


ですので、結果としこの夏の観測成果は木星だけでした。以前の記事でWEBカメラで天体撮影する、というのを取り上げたことがありますが、木星に関してはかなり撮れるようになりましたので、御覧ください。


http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/f3/137dd9559c2a839e8b821b031afc81e5.jpg
〈Jupiter〉
10_08_27 23:40 自宅ベランダ
MEADE LX90-GPS20  直焦点撮影(2倍バローレンズ)
Webカメラ ToUcamPro約2700フレーム
画像処理 Registax5 Photoshop CS4


小さな点は、衛星のイオとその影です。真ん中下あたりに太い帯が見えますが、昨年まではこれが上の方にもう一本あったのです。昨年夏、その帯が突然消滅して話題になりました。原因は未だに不明です。


それと、衛星イオをよ〜く見ると、下に煙のような物が見えませんか? そして、イオの影にも煙が……実はイオには活火山が多数あるのです。しかし、地球からその噴煙を観測できたという報告は聞いていません。もしや、大噴火の発見か!!! いえいえ、これだけ見ると、影もあるし、何らかの天文現象に見えますが、他の衛星にも同じ筋が同じ方向に付いており、撮影時のエラーであることが判明しました。残念。


●高感度カメラEOS Kiss X4購入


WEBカメラは惑星撮影には大きな力を発揮しますが、星雲や星団には向いていません。何故なら星雲は非常に暗い天体が多く、WEBカメラの感度では対応できないためです。やはりこのような淡い天体は、高感度のデジタル一眼を使うことになります。


今まで使っていたカメラはOLYMPUS E-410。発売当初はライブビュー搭載の一眼レフで、しかも世界最小最軽量として話題になりました。その前はPENTAX *istDL2でしたので、ライブビュー搭載カメラがキラキラして見えました。


しかし、その魔法もすぐに冷め……実際ほとんど使えなかったのです。そもそもライブビューにこだわった訳は、カメラファインダーは暗すぎて淡い天体の導入やピント合わせが非常に難しかったからなのです。ライブビューなら液晶モニタを見ながら明るい画面でピントが合わせられる……と思ったのが甘かったです。液晶が小さい上ドットが荒いので、暗い天体は結局どこでピントが合っているのかわかりませんでした。


さらに、ISO1600の感度もノイズがひどく使い物になりません。ISO800で撮影した画像を縮小して見ればなんとか見られるという感じで、実用レベルとしてはISO400が限界でした。ですので、銀河(天の川)を写すのには30秒以上の露出が必要でした。30秒というと私には敷居が高いのです。赤道儀の追尾設定が厳密にできないと、30秒では星が流れてしまいます。今まで追尾設定が大成功した試しはなく、結局銀河や星雲を綺麗に撮影する事は、半ば諦めざるを得ませんでした。


しかし、近年になってなんとISO102400という超高感度カメラが発売されたのです。12400ではありませんよ、十万二千四百です!ISO400の世界で撮影していた私にとっては別次元のカメラです。


それが、Nikon D3SとCanon EOS-1D Mark IVです。この感度では暗い夜景も手持ちで撮影でき、夜の室内でもストロボなしで手ぶれをしない写真が撮れるそうです。当然、わずか数秒の露出で銀河も撮れるでしょう(つまり追尾装置なしで天の川が撮れる)。しかし、しかし、両機とも本体だけの実売価格で50万円前後です。お値段も別次元ですね(Nikon D3Sは国際宇宙ステーションでのロシアの公式カメラに認定されています)。


やはり超高感度カメラは私にとっては高嶺の花です……諦めるしかないのか、と思ってました。しかし一年ほどして、あるカメラが目に止まりました。それがISO12800のEOS Kiss X4だったのです。エントリーモデルではありますが、ISO100〜ISO6400(拡張ISO12800)は、今までのカメラに比べたら別次元です。さらに、ハイエンドモデルに匹敵する画素数である1800万画素、フルHDのハイビジョン動画モードまで付いています。実売価格は本体だけで6万円前後、かなりリーズナブルです。


結局、ネットオークションで購入することにしました。入手したEOS Kiss X4と手放したOLYMPUS E-410との差額は27,000円ほどです。ただし、別にレンズを買わなければならず、こちらは他社製にしました。マクロ撮影と望遠撮影を一本のレンズで済ませられるよう、18mm-200mmのレンズにするためです。


しかし、これは失敗だったかも知れません。EOS Kissの手ぶれ補正機能はレンズ側に付いており、オートフォーカスで手ブレ補正がついたレンズは結構バカでかいのです。荷物が届いてから後悔しました。


まだ、本格的な天体撮影には使用していませんが、とりあえず天の川を撮ってみました。ガスや雲も多く、光害もあってあまり良い条件ではありませんでしたが、追尾装置なしでこれだけ撮れました。


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EOS Kiss X4 ISO6400 15秒露出 天城高原


それと、暗がりで最も力を発揮するのが、リアルタイムのライブビューです。実は、高感度とはいえ、薄暗い場所でのオートフォーカスは非常に精度が落ちるのです。ですので、マニュアルフォーカスにせざるを得ませんが、ファインダーを使うとやはり暗いのでピント合わせが至難の業です。


しかし、このライブビューは10倍ズームが付いており、液晶を見ながら拡大した画像でピントを合わせられるのです。これは、天体観測にも応用できそうです。暗い星雲を狙うときは、まず明るい星でピントを合わせ、そのまま目標の天体に向ければいい訳ですから。


http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/84/010c944551fa0d21a9b6f9b06c2ac733.jpg
EOS Kiss X4 ISO6400 
シャッタースピード:オート マニュアルフォーカス
薄暗いレストランで料理を撮影


まだ使い始めですが、これからどんどん暗がりを撮っていこうと思います。


※ハイビジョン動画ですが、なんとフォーカスがフルオートではないのです。つまり、一度オートフォーカスでピントを合わすと、ずっとその位置にフォーカスが合ってしまいます。つまり、動くものや近づいてくるものに対応できないのです。せっかくのHDなのに、これでは使えません。


松林あつし/イラストレーター・CGクリエーター
http://www.atsushi-m.com/
pine1289@art.email.ne.jp

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