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写真を楽しむ生活

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カテゴリ ‘コラム’ のアーカイブ

■デジアナ逆十字固め…
「日本の写真文化を海外へプロジェクト」に参加


上原ゼンジ


写真集が刊行された。大判でハードカバーのなかなか立派な造りの本だ。以前にも作品集を出しているのだが、そちらの方はA5判のソフトカバーだったし、ハウトゥーページもあったので、あまり「写真集」というような扱いはされず、本人も意気込んで「写真集が出たぞ!」と言うのは憚れるところがあった。


しかし、今回の本は25cm×25cmというサイズでけっこう迫力もあり、当人としても苦節27年、ようやく写真集が出せた感がある。


タイトルは「Circular Cosmos─まあるい宇宙」(シリーズ名)。「宙玉」「万華鏡写真」「うずらの惑星」という3つのシリーズから「丸」つながりでセレクトした。日常の向こう側の、もうひとつの宇宙を垣間見るようなイメージだ。


ずうっと写真を撮ってはきたものの、写真集にまとめるという意識は薄かった。まああまり売れそうな写真でもないから、出すとしても自費出版に近い形になってしまう。しかし、元々が編集者だから自費出版の大変さも分かり、及び腰になっていた部分もある。そんな中、ただ撮るだけじゃなくて、きちんと作品を写真集としてまとめたいなと考え始めた矢先に、今回の本の話をいただいた。


連絡をくれたのは「日本の写真文化を海外へプロジェクト」の代表である柴田誠さんだった。この会はその名前が示す通りに、海外で写真を発表したいという写真家の手助けをしたり、逆に海外の写真事情を知りたいという人のために生まれたNPO法人だ。


活動としては、写真展、フォトフェスティバル、ワークショップなどを通じて日本の写真文化を広めていくのだが、その一環として今回の写真集のシリーズが発刊された。プロフィールやステートメントなどに英文の対訳がついており、基本が海外仕様になっている。


私の本は第一回の配本だが、2月から5月にかけて毎月3冊、計12冊の写真集が刊行される予定。シリーズのすべてが赤い表紙で統一されているので、これがまとまるとけっこう迫力が出そうです。大判の本なので書店で平積みにしたら場所を取っちゃいそうだけど、美術書を扱う書店では置いてる姿が見てみたい。


第一回配本は私の他、高崎勉さんとMichael Hitoshiさんのお二人。高崎さんの「Silhouette」はモノトーンの影絵のような不思議な写真。というか、「Silhouette」自体が「影絵(シルエット)」という意味で、実際に紙に映った影を撮影したものだそうだ。


作品自体はそんなに特殊なイメージではないのだが、1メートルの紙を張った木枠(擬似障子戸)を持ち歩きながら撮ったものだそうだ。その姿を想像すると「やるな」という感じですね(笑)。イメージを追求するための工夫とエネルギーに共感します。


そしてそんな撮影法を知って、あらためて見てみると、確かにただの写真じゃあない。紙に近い影はくっきりと、紙から離れると薄れる微妙な影の味わいがいい。


Michael Hitoshiさんの写真は、都市をヘリコプターを使って俯瞰で撮影したもの。普通の航空写真との違いはその描写の緻密さ。夜景をこんなふうに真俯瞰できっちりと写した写真は見たことがない。闇に浮かぶ街の灯りは美しい模様のようにも見える。


ヘリコプターでホバリングをしながらの撮影はかなり揺れるそうだが、夜間にそんな状態でブレもせずに撮影するのは相当大変なはずだ。この写真にもやはり、自らのイメージを定着させるためエネルギーが凝縮されている。


シリーズはこの後も次々に刊行されていくわけだが、けっこうバラエティーに富んだ人選で面白そう。すでに有名になった人ではなく、まだ知られていない人を海外に紹介していくというプロジェクトには心躍るものがある。自分が選んでもらったということもあるけれど、成功して欲しい、応援したいミッションだ。


自分の写真も海外に紹介して欲しいという人は、ぜひこのプロジェクトに注目し、活動に参加するといいと思います。まだ始まったばかりだけど、今なら目立てるかもしれません!


◇「Circular Cosmos─まあるい宇宙」上原ゼンジ/桜花出版刊
http://imaonline.jp/ud/photobook/52fdd99fabee7b51e9000001


「Circular Cosmos─まあるい宇宙」上原ゼンジ

「Circular Cosmos─まあるい宇宙」上原ゼンジ



◇Amazon
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4434189174/maminka-22/


◇日本の写真文化を海外へプロジェクト
http://www.japanphotoglobe.org/


◇「Silhouette」高崎勉
http://imaonline.jp/ud/photobook/52fddc98abee7b548e000001


「Silhouette」高崎勉

「Silhouette」高崎勉



◇「Line」Michael Hitoshi
http://imaonline.jp/ud/photobook/52fdcfebb31ac97960000001


「Line」Michael Hitoshi

「Line」Michael Hitoshi



【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com 
http://twitter.com/Zenji_Uehara
上原ゼンジのWEBサイト
http://www.zenji.info/
Soratama – 宙玉レンズの専門サイト
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上原ゼンジ写真実験室のFacebookページ
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趣味の構造美の巻


齋藤 浩


私において美の基準とは、「機能する、意味のある構造か否か」をさす。さらに“装飾”を持たず、できれば作り手に下心がないことが加わればパーフェクトだ。


そんな構造美を見つける度に撮影していたところ、気がつけばかなりの量になっていた。それらをできるかぎり美しく=構造がわかりやすいようモノクロ表現に統一し、少しずつまとめている。


今回はその中から10年前に撮ったものを中心に何点かご紹介いたします。


由緒正しい木造商店建築。昭和の構造。くどいくらいに「たばこ」を主張する点はとくに評価していない。


001


道路と水路の関係。地形の美学。垂直に交わる道路と水路だが、橋に相当する部分に内輪差を見越した(?)微妙なナナメ面が追加されているところが面白い。水路の脇に無粋なネットやガードレールがない点も高く評価。


002


水とともに暮らす町では、水のありがたさと恐さを親から子へきちんと伝えていくのだ。そうすることにより、代々同じ景観を共有できる。これは素晴らしいこと。


円形の庇と柱。シンプルな美。門司港にて。


003


美トラス! 旭川にて。リベットのパターンも美しいし、なにより力を分散し、バランスをとりあっている様子が視覚的に伝わるところがイイ。
 
004


美灯台! 北海道だったことは間違いないんだけど、どこだったか忘れました。とにかくシンプルな構造と陰影が美しいと思い、シャッターを切りました。


005


風車。旭川から稚内へ向かう途中に立ち寄った風力発電用風車群。旅の途中、時間を変えて二度訪れたのだが、光の違いで印象がまるで異なることに驚いた。


006


ミニマルな構造美。最近はズームレンズを全く使ってなかったけど、こうしてみるといいものだなあ。


タイヤ。群馬県某所。構造美というよりも、無意識の構成美かな。ただ積んであるだけなんだけど、もしここに美しく積もうという意思が介在したら、けっして自然な印象にはならないはずだ。


ゴム臭を思い出しながら現像していたら、かなり濃いめに仕上がった。
 
007


階段。構造が美しいのはもちろんだが、トリミングがうまくいった! と思う。沖縄にて。


008


今回の写真はいずれもエントリー系の一眼レフ+高倍率ズームで撮影したもの。こうしてみると、構図に気持ちを集中していたなあ、と思う。


ここ数年、その緊張感から離れたくてレンジファインダーカメラばかり連れ歩いていたけど、機材が変わると写真も変わるものなのだなあと改めて認識いたした次第。


さて後から気づいたことなのですが、これらはいずれも撮ることを目的として出向いた結果ではなく、カメラを持って歩いていたときにたまたま見つけた物件です。


広告写真なんかは、最終的なイメージに向けて無作為を演じつつ作為的に撮るけど、無作為な構造美は撮影する側も最初から下心を捨てていた方が納得のいく絵が得られるような気がしました。


旅も目的地よりも、その過程のほうが印象に残ったりするものだしね。



『趣味の構造美』の続きです。前回は10年ほど前に撮った写真中心でしたが、今回はここ1〜2年に撮った「装飾を持たず、必然から生まれた構造物のコレクション」を紹介したいと思います。


あの小惑星探査機『はやぶさ』や宇宙帆船『イカロス』等の通信施設としても有名な、臼田宇宙空間観測所のパラボラアンテナ。直径64メートル。はやぶさが行方不明になっていた際、発見の手がかりとなる微弱な電波を受信したのもこの『うすださん』。後姿もたのもしい。


・うすださん


SONY DSC


友人の事務所を訪ねて某ビルの9階に出向いた際、外階段から見下ろした風景がこれ。何世代も前から生きながらえていた木造家屋の瓦屋根が、絶妙なグラフィックパターンを見せてくれた。


昔はあたり一面がこんな感じだったのだろう。こういった日本独自の美が失われているのは寂しいかぎり。


・先週水曜の瓦屋根


002-1


U字溝ブロックを並べて車止めにしている。この物件には以前からミニマルな美を感じていたのだが、先日しゃがみ込んで覗いてみたところ、「スターウォーズ」のデススター攻略線的パースペクティブ! な世界だった。


「おお!」とか感嘆の声をあげながらシャッターを切るオレの姿は、さぞ怪しかったことだろう。通報されなくてよかった。


・デススター的


003-1


神楽坂にて発見。人が上り下りするうちに、石がすり減って独自の曲面が生まれるような例は知っていたが、これは左官屋さんがノリで作った印象がある。


そして踏み面すれすれに窓が。窓に合わせて階段ができたのか、階段に合わせて窓ができたのかは不明。


・とろける階段


004-1


尾道にある美しい階段。こんど行くときは、超広角レンズで全体像を記録したいところ。


・扇形階段


SONY DSC


究極のミニマルな美だと思う。この写真を絶賛してくれる人がいる反面、そうでない人も多数。


世代交代による土地の切り売りの影響か、地方都市においてスライスされた木造建築をよく見かける。四半世紀前の東京がそうだったように、この駐車場もほんの少し前までは昭和な佇まいの家屋と庭だったのだろう。


経済主導で風景がなくなるのは嘆かわしいことであるが、この瞬間に限って言うなら、真新しい駐車場のペイントとスライスされた家屋の断面に時代の境界を感じなくもない。まあただの壁と地面と言われちゃあそれまでなのだが。


・尾道の駐車場の壁
 
SONY DSC


同じ駐車場脇の壁ではあるものの、おそらく尾道とは異なるシチュエーションで出現したと思われる。


店舗拡張かなにかで後から駐車場を作ったところ、本来人目にさらす予定のなかった隣家の壁面が公の場に、というパターンだろう。化粧気もなく素朴だが、油絵のタッチのような力強さを感じる美壁。


・軽井沢の駐車場脇の壁


SONY DSC


某公園にて。仲のよい恐竜がみんなで同じ方向を向いてる。面白い彫刻だなあ! と思ったけど、よく見たらそういう訳でもないみたい。


ネタをばらせば、ベンチの骨組みだけ残ったものだが、このような、“作為”とは無縁の立体造形こそ、かえって印象に残ったりする。公園といえば唐突に裸の銅像が立ってたりするけど、オレはこの恐竜の方が好き。


・恐竜×3


008-1


今回の写真は50年前のフィルムカメラで撮ったものもあれば、最近のデジタル一眼レフで撮影したものもあります。


しかし、いずれもあまり考えすぎず、素直にシャッターを切ったものはわりと思いどおりに撮れてるものだなあ、などと思う今日この頃です。


とくにデジタルカメラの場合は撮ってすぐに画像を確認できるので、一枚目を参考に二枚目以降は冷静に構図や露出を微調整してゆくものですが、イイ! と思った感動は後になるほど薄れるらしく、ほとんどの場合一枚目が“当たり”でした。


この『趣味の構造美』、気がつけばけっこうな量になっていたので、日の目を見せるべく某写真コンペに出品してみようかと思います。


無事写真展までこぎつけたあかつきには、皆様のご来場を心よりお待ちしております。オリジナルプリントの販売もできたらいいなあ。夢はおおきく。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。

■ところのほんとのところ
怒濤のスケジュール


所 幸則 Tokoro Yukinori


香川県高松市のCafe & Gallery SOUSOUにおいて、フォト・ラボKからの選抜メンバーと、所塾香川チームによって構成される「k-Lovers Photographers セレクション展」陸チームの展示も始まっています(10月15日から10月31日まで)。一階のカフェでは所幸則の作品の常設展示も始まります。


そして、11月1日から11月31日まで、写真家・所幸則の写真展【本当は秘密の写真家の目】を展示します。高松以外では決して見ることが出来ない展示です。日常的視点から、メインテーマから外れているけれど、いいなと思った瞬間、撮らずにいられなかった写真たちです。


詳しくはこちらを見てください。
https://www.facebook.com/cafe.sousou?rf=164041880318522
http://sou-sou.info/


内容は、room、window、door、海、など[ところ]の部屋の太陽の光と反射によって様々に変化する様を、気がつくたびに撮ったものが主です。


いま「CAPA」で連載中の「所幸則コンテンポラリーフォトファクトリー」でもおなじみの、アインシュタインロマン・四国編と、日本で本当の意味で美しい庭、桂離宮などに匹敵する栗林公園の中で和笛の天才奏者を撮った作品も展示します。会場は栗林公園の直ぐ側ですから、一枚は特別出品ですね。


ほとんどの作品は、「良い写真とは場所を選ぶことなく写真家のインスピレーションで撮れるもの」という[ところ]の持論の証明でもあります。


ただ、昨今のカメラの進歩、特にカメラメーカーの技術者達のもの凄い努力の成果がドンドン表面に出て来て、それほどきれいでもない色でも家庭用プリンタで、現実より華やかで美しい写真が出来上がってしまうこの時代、まぐれでも大量に撮れば時には良い作品が出来てしまうこの時代。


[ところ]のこういう理念で撮った写真がアート足り得るのか。そのことに対する疑問も自分の中にはあります。展示をしてみて、どう自分自身が感じるのかも確かめてみたいと思います。


そして、今回「k-Lovers Photographers」のメンバーの一人が、JR高徳線の屋島駅を撮っていて駅長から展示を頼まれました。そのこと自体はよかったのですが、[ところ]も数枚屋島駅を撮影することになりました。その展示も11月1日からです。かなりきついです。


このテキストを書いた4時間後、朝5時半にはそこに向かうことになっています。それをクリアーしたとして、その後、11月22日にはNYに持って行くプリントを20枚プリントしなくてはなりません。


さて、NYの話は今出たばかりですが、11月14日にはNYに行き、バレエのダンスホールでの作品の展示、邦楽の知人達のライブの撮影など、盛りだくさんスケジュールが組まれています。


これは、栗林公園の中で和笛の天才奏者を撮ったこととも関連があるのですが、鼓や三味線の将来の人間国宝達とも一緒に行くことになっています。そう聞いただけでも[ところ]のプレッシャーの重さがおわかりいただけるでしょうか。


この過密スケジュールの中、11月8日〜10日には、「Mt.ROKKO INTERNATIONAL PHOTOGRAPHY FESTIVAL 2013」に参加します。
http://rokkophotofestival.com/index.html


この期間中、アルペンローゼにて「東京画」写真展を運営します。RAIECのコミッティーのメンバー太田菜穂子さんのキュレーションで「東京画」の4名の写真家、大西みつぐ、古賀絵里子、鋤田正義、所幸則にフォーカスを当てた写真展です。[ところ]も会場近辺にいます。一日中ってことはないけど、メッセンジャーで会いたいと言ってくれれば行きます。
http://rokkophotofestival.com/2013/tokyoga.html


そして11月25日からは[ところ]の久しぶりの個展も始まります。「sibuya 1second 瞬間と永遠」で作家デビューした思い出の地です。詳しくはまた、お知らせします。


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 http://tokoroyukinori.seesaa.net/
所幸則公式サイト  http://tokoroyukinori.com/

■デジアナ逆十字固め…
ついに『大トマソン展』開催!


上原ゼンジ


いよいよ『大トマソン展』の開催が近づいてきた。これはもちろん超芸術トマソンの展覧会のことですが、今まで『トマソン31』にしようと言っていたのが、ここに来て名称変更になった。


超芸術探査本部トマソン観測センターの発足31周年で『31』を使っていたのだが、これじゃあはっきり言ってなんのことだかよく分からない。じゃあ『大トマソン展』にしてよく分かるようになったのかと言えば、その効果もまた不明だが、『大恐竜展』とか『大リラックマ展』みたいで、なんだか大きそうでいいじゃないですか。


ではその『大』に恥じないくらい大規模な展覧会なのかというと、最初にゴメンナサイしておいたほうがいいかもしれないレベルかもしれません。しかし、新宿眼科画廊で3部屋借りているので、まあ今までのトマソン展を基準とした相対評価で言えば、『大』と言っても、あながち嘘とも言えない。


その3部屋の構成はというと、まず近年の報告の中から厳選した報告書の展示をしたメイン会場がある。しばらく展覧会をしていなかったので報告書も溜まっており、ただトマソンであるというだけでは展示してもらえません。


類例のないユニークな物件であるとか、ため息の出るような美麗物件であるとか、目利きを唸らせるような物件でないと審査を通過できないのです。そういう意味では、けっこうクオリティーが高くて面白い物件が集まったんじゃないかと思います。


今回のセレクトの特長としては「カワイイ」というのが、けっこう評価の対象になってましたね。それは色とか、その佇まいに対してなんだけど、センターのおじさん達が「カワイイ」好きであるということが発覚しました。今後はぜひカワイイ物件をたくさん見つけて来てください。


小部屋のひとつは「庇百選」用。展示内容は以下の通り。


「窓やドアが塞がれた後に残されて、何もない壁をひっそりと雨露や陽射しから庇っている、純粋な庇として存在し続けている物件のこと。超芸術トマソンの中では基本的な物件ですが、今回は厳選、集積することにより、その魅力の再発見を試みました。」


無用庇というのはわりと発見しやすいので、あまり希少性はない。報告をしてもあまりウケないので、写真だけはいちおう撮っておくけど報告はしないというようなケースも多い。しかし、今回はそんな庇にスポットを当ててみた。実際にいろんなタイプの庇を集めてみるとけっこう壮観です。もちろんカワイイ庇もあります。


レンガの壁の影タイプ

レンガの壁の影タイプ


四つの郵便受け

四つの郵便受け


無用庇

無用庇


「赤太郎ルーム」とは?


そしてもうひとつの小部屋が「赤太郎ルーム」。赤太郎について言葉で説明するのは難しいんだけど、まず道路工事の現場などに置かれている三角コーンを思い浮かべてください。赤いのや赤と白の縞模様のものなんかがあります。


あの三角コーンような形状をしたものに、赤いガムテープがグルグル巻きつけられています。そしてさらにそこから二本の手のようなものが生えていて、両手を開くようにして繋がれている。(やはり説明が難しいw)


赤太郎

赤太郎


場所は民家の壁の外側。角を守るように設置されているので、まあ車がぶつからないようにという目的で置かれているのではないかと推測することができる。ただトマソンの定義としては「無用の長物」である必要があるので、実用目的であればトマソンとはならない。


しかし、その未知の生物のような佇まいがトマソ二アンのハートを掴み、変態する姿が継続的に記録されてきた。そして、いつしかその不可思議な物体は「赤太郎」と呼ばれるようになったのでございます。


これはいったい何なのか? トマソンか否か? 答えはなかなか出なかったが類似物件なども発見されたので、今回、専用の「赤太郎ルーム」を作ってみることにした。


トマソンというのは作者不在が基本なのだが、この物件に関しては、作者の過剰性が滲み出している。類似物件も増えてきたのだが、それぞれに個性があって面白い。


「赤太郎」とは何か? 「無用庇」とは何か? そんなことを考察したとしても何の役にも立ちませんが、ちょっと頭をほぐす効果があるんじゃないかと思います。ぜひおいでください!


◇『大トマソン展』超芸術トマソン観測センター31周年


会期:11月1日(金)〜11月13日(水)12:00〜20:00 木休
会場:新宿眼科画廊(東京都新宿区)
http://www.gankagarou.com/sche/sche_all2013011.html
主催:超芸術探査本部トマソン観測センター
https://www.facebook.com/thomasson.center


・会期中のイベント


参加者が持ち寄った物件などを互いに検討します。トマソンらし
き物件がありましたら報告書をお持ちください。報告用紙入手先
は、会場または http://p.tl/Kwlp


日時:11月10日(日)14:30開場、15:00〜17:00
会場:新宿眼科画廊 スペース0
参加費:無料


【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com http://twitter.com/Zenji_Uehara
上原ゼンジのWEBサイト
http://www.zenji.info/
Soratama – 宙玉レンズの専門サイト
http://www.soratama.org/
上原ゼンジ写真実験室のFacebookページ
https://www.facebook.com/zenlabo

わが逃走──趣味の構造美 の巻


齋藤 浩


私において美の基準とは、「機能する、意味のある構造か否か」をさす。さらに“装飾”を持たず、できれば作り手に下心がないことが加わればパーフェクトだ。


そんな構造美を見つける度に撮影していたところ、気がつけばかなりの量になっていた。それらをできるかぎり美しく=構造がわかりやすいようモノクロ表現に統一し、少しずつまとめている。


今回は、その中から10年前に撮ったものを中心に何点かご紹介いたします。


由緒正しい木造商店建築。昭和の構造。くどいくらいに「たばこ」を主張する点はとくに評価していない。


001


道路と水路の関係。地形の美学。垂直に交わる道路と水路だが、橋に相当する部分に内輪差を見越した(?)微妙なナナメ面が追加されているところが面白い。水路の脇に無粋なネットやガードレールがない点も高く評価。


002


水とともに暮らす町では、水のありがたさと恐さを親から子へきちんと伝えていくのだ。そうすることにより、代々同じ景観を共有できる。これは素晴らしいこと。


円形の庇と柱。シンプルな美。門司港にて。


003


美トラス! 旭川にて。リベットのパターンも美しいし、なにより力を分散し、バランスをとりあっている様子が視覚的に伝わるところがイイ。


004


美灯台! 北海道だったことは間違いないんだけど、どこだったか忘れました。とにかくシンプルな構造と陰影が美しいと思い、シャッターを切りました。


005


風車。旭川から稚内へ向かう途中に立ち寄った風力発電用風車群。旅の途中、時間を変えて二度訪れたのだが、光の違いで印象がまるで異なることに驚いた。


006


ミニマルな構造美。最近はズームレンズを全く使ってなかったけど、こうしてみるといいものだなあ。


タイヤ。群馬県某所。構造美というよりも、無意識の構成美かな。ただ積んであるだけなんだけど、もしここに美しく積もうという意思が介在したら、決して自然な印象にはならないはずだ。ゴム臭を思い出しながら現像していたら、かなり濃いめに仕上がった。


007


階段。構造が美しいのはもちろんだが、トリミングがうまくいった! と思う。沖縄にて。


008


今回の写真はいずれもエントリー系の一眼レフ+高倍率ズームで撮影したもの。こうしてみると、構図に気持ちを集中していたなあ、と思う。


ここ数年、その緊張感から離れたくてレンジファインダーカメラばかり連れ歩いていたけど、機材が変わると写真も変わるものなのだなあと改めて認識いたした次第。


さて後から気づいたことなのですが、これらはいずれも撮ることを目的として出向いた結果ではなく、カメラを持って歩いていたときにたまたま見つけた物件です。


広告写真なんかは、最終的なイメージに向けて無作為を演じつつ作為的に撮るけど、無作為な構造美は撮影する側も最初から下心を捨てていた方が納得のいく絵が得られるような気がしました。


旅も目的地よりもその過程の方が印象に残ったりするものだしね。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/ >


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。

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