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モノクロが好きだ。の巻


齋藤 浩


ここ一年ちょっと、趣味の写真はほとんどモノクロフィルムで撮っている。それまではカラーが当たり前で、モノクロは教育用とかノスタルジーを演出するための手段、みたいな認識だった。


ところが、である。


二年ほど前、ひょんなことから憧れのカメラ、ライカM3と50ミリレンズを手に入れたのだ。まずカラーで撮ってみたところ、現代のレンズのような鮮かさには欠けるが、階調の美しさに目をみはる結果となった。


そうこうしてるうち、そのレンズは(当時ポピュラーだった)モノクロフィルムを前提に設計しているということに気づき、ためしにネオパンSSで撮ってみたところ、仕上りのあまりの美しさに腰を抜かしたのだった。


それ以来、すっかりモノクロにハマってしまったオレなのです。


モノクロの魅力をひと言で表すのは難しい。なんでもアリもいいが“色彩を用いずに表現せよ”というルールはとても楽しいし、こうした条件があってこそ創意工夫する余地が生まれる。


いわゆるクリエイティビティが刺激されるってやつか。


また撮影の際、ファインダーに捉えた世界から脳内で色彩を取り除き、モノクロームの世界をイメージしてからシャッターを切る。この行程のおかげで、かなり納得のいく写真が撮れるようになった気がする。


仕上がりをイメージしながら制作する。これは写真だけでなく、すべてのクリエイティブにおいて基本だ。


しかし、自動化された世の中ではつい忘れがちになってしまう。それを改めて意識できるのがモノクロの醍醐味だと思う。


上達を体感できる自己克服型創造遊びの、最もシンプルなもののひとつが、モノクロ写真なのではなかろうか、てなことを考える今日この頃なのである。


そもそも情報過多な昨今、色彩がそこまで重要か? とも思う。ビビッドな世界の中では逆にモノクロームの方が目立つし、目的に対し色彩に必然性がないのであれば、それを排除した世界のほうが、惑わされずに本質が伝わる。


もともとカラー写真は爆撃対象を確認するための軍事技術であり、つまり、説明を目的として開発されたという経緯がある。


人はめんどくさいことが嫌いだ。つまり本能的に説明を嫌う。努力も嫌う。説明されたことはすぐに忘れるし、その意味を知ろうともしない。しかし、自分で興味を持った物事は忘れない。


モノクロ写真は色彩を見る者の想像に委ねる。


例えばリンゴの写真を見せられると、自分の記憶の中におけるリンゴの赤を想像する。


自分でそうしようと努力するのではなく、見た瞬間、自分が今までに見たリンゴの中で最も美しい赤を思い出し、その写真にあてはめてしまうのだ。


純粋な階調だけで表現された形態や質感に、受け手の記憶が組合わされる。


すべてを語らないこと。一部を受け手に委ねることで、そのビジュアルはより印象に残るものとなる。


もちろん、色彩だけでなく露出や構図なども含めて言えることだが、強い写真というものは、だいたいそんな構造なのではなかろうか。


さて、いざモノクロ写真を撮ろうとした場合、モノクロフィルムで撮影するというのが最初に思いつく方法だろう。オーソドックスかつ確実な手段である。


これ以外にも、デジカメで撮ってモノクロ変換したり、カラーフィルムをモノクロに焼いたり、なんて方法がある。


しかしこれを実行するとなると、甘えとの戦いになる。


デジカメだと「すぐに確認できるからいいや」。カラーだと「後でモノクロに変換できるから、とりあえずカラーで撮っておこう」。


こういった気持ちを抑え込むだけの強い意志のある人は問題ないが、オレの場合、基本的に隙だらけの性格なので、ついつい甘えてしまう。


その結果、緊張感がなくなり、必然性のない写真になってしまう場合が多い。


しかし、デジタル全盛の今はその方法が当たり前だし、今後モノクロフィルムの入手が難しくなったらそうせざるを得ないだろう。


たしかに色彩を主軸として構成したつもりの写真でも、モノクロ変換してみたら意外とイケる、なんて発見もある。


実際、撮影時の印象をイメージしつつ現像ソフトをいじくる行為は、暗室作業と同じくらいタノシイし、クセになるほどオモシロイと言える。


とはいえ、フィルムがあるうちはフィルムで撮る方が、気持ちに隙ができない分いい写真が撮れるような気がする。


あくまで気がするだけですけどね。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。

久々にニコンの一眼レフを調べてみる


岡田陽一


昨年あたりは、どこに行ってもミラーレス一眼を持っている人ばかり目についたのですが、最近気のせいかもしれませんが、また大きな一眼レフを首から下げている人をよく見かけるような気がします。


だんだん気温も暖かくなってきたからなのか、ミラーレス一眼も一巡してやっぱり一眼レフに戻った人が増えてるのか。定かではありませんが、先日友人から「D90を買い換えようと思ってるんだけど、D600とD7100のどっちがおすすめ?」と質問を受けたので、久しぶりに最近のニコンのデジタル一眼レフカメラ事情を調べてみました。


まず、買い換えたい方のD90は2007年4月発売のベストセラー。けっこうこの頃に、D90がきっかけで一眼レフを購入した人が多かったような記憶があります。そこから6年も経っているので、D90をずっと使っている人はそろそろ買い替えのサイクルなのかもしれません。


6年も経つと、センサーから内部の画像処理エンジン、電池やボディ周りなど物凄く進化しているので、当時のD90と同じクラス(値段)でなくて、もっと安い入門機でも性能はかなり上なのが、かつてのフィルムと機械機構の時代と違う、デジタルの良くも悪くもあるところ。


後から買う方が安くて性能のものが手に入る良い面もあれば、自分が買ったカメラが次のモデルが出るとすぐに陳腐化してしまう面もあり、フィルム時代のカメラは10年くらいのサイクルでしたが、今のデジタルはそのサイクルが物凄く早い。


そう考えると、D90が6年も経ってまだ現役というのはデジタルカメラとしては長いですね。


さて、買い替え対象となるD600とD7100は何が違うか。D7100は今日現在で一番新しいカメラ。今週3月14日発売になります。もう一方のD600の発売は2012年9月。


D600



D7100



このふたつのカメラで大きく違うのは、センサーのサイズです。D600がFXフォーマット。俗にいうフルサイズというものです。D7100がDXフォーマット。FXのセンサーよりも小さいAPS-Cというサイズ。


ニコンD600 ボディ(169,438円 Amazon)
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ニコンD7100 ボディ(124,200円 Amazon)
http://amzn.to/10FfZpV


D90からの買い替えということで、同じDXフォーマットを選び、既に持っているレンズをそのまま使うというチョイスか、これを機にフルサイズに移行してレンズもすべて新しく揃えるか。ここは予算との問題になります。


センサーサイズが大きいと、良いことはたくさんあります。暗いところでもノイズが少なくきれいに撮れるとか、同じレンズでも背景がよりボケるとか(その辺りはまた別の機会に解説しますね)。


ただ誰にとっても、何がなんでもフルサイズのFXフォーマットがおすすめかというとそうでもありません。


望遠系の写真を撮ることが多い人はDXフォーマットの方がおすすめです。例えば、300mmのレンズを付けても、フルサイズ換算で1.5〜1.6倍の値になりますから、450mmのレンズを使っているのと同じ画角になります。


サーキットでレースを撮る時や自然の中で野鳥を撮る時などは、超望遠レンズを使いたくなりますが、そんなレンズはとても高額なのでDXフォーマットの方が手軽に望遠の撮影が楽しめます。


もうひとつ、人物を撮影する王道のレンズとして85mmを使います。これはフィルムの時代からそうですが、ちょうどいい画角と被写体との距離感、そして歪みのない人物撮影に向いたレンズです。


Nikon AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G(140,251円 Amazon)
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この85mmのレンズ、憧れますが定価225,750円もします。Amazonで買っても14万円。なかなか手が出ない価格ですよね。


これが、DXフォーマットだと、同じくらいの画角を想定すると50mmのレンズで×1.6すると80mmとなります。


Nikon AF-S NIKKOR 50mm F1.4G(39,457円 Amazon)
http://amzn.to/X0ZwWH


定価で63,000円のレンズですがAmazonで4万円切ってます。もちろん、ボケ味とか厳密に言うとまったく同じにはなりませんから、単純な比較はできませんが、趣味で撮影するレベルであれば、画角的にも明るさ的にも人物撮影にはおすすめです。


FXフォーマットでフルサイズの性能を引き出そうとすると、かなり高額のレンズが必要になります。ボディだけ良くてもいい写真は撮れません。やはり写真はレンズが大切です。


なかなかそこまで予算をかけられない場合は、DXフォーマットのチョイスがさまざまなシチュエーションで写真を楽しむのに向いているかもしれませんよ。


ということで、友人にはD7100をすすめましたが、そうなると昨年2012年11月に発売されたD5200も価格的に気になってきます。


ニコンD5200
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しかも、ボディのみだと74,800円なのに、18-55VRレンズキットだと71,629円と、レンズが付いている方が安いのでますます悩みます。


と、いろいろと悩んでる時が一番楽しいので、カタログを眺めながらあれこれ想像するとして、ニコンさんの名前の付け方が、もう何がなんだか分らないので、なんとかして欲しいと思います。


D300までは確か3桁がDXフォーマットのフラッグシップだったはずですが、今回のD7100がDXの最高峰の位置づけということで、訳がわかりません。


【岡田陽一/株式会社ふわっと 代表取締役
ディレクター+フォトグラファー】
okada@fuwhat.com <Twitter:http://twitter.com/okada41>


姉妹メルマガ「デジクリ」でもお馴染み森和恵さんと弊社スタッフが執筆した「よくわかるFireworksの教科書」が先日発売になりました。Webのお仕事をされている方は、是非お手元に一冊リファレンスとして置いていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
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オリジナルプリントを見たい!


所幸則 Tokoro Yukinori


[ところ]が以前から関わりたかったものに、パリをテーマにした展示がある。念願かなってとうとう実現した。


[ところ]が参加するのは「エスプリ・ド・パリ展」というオムニバス展だ。参加メンバーがとてもゴージャスで、ロバート・フランク、サラ・ムーン、森山大道らが名を連ねている。光栄なことです。


会期:3月1日(金)〜4月1日(月)
会場:GALLERY ENTRE DEUX(東京都文京区 椿山荘/ホテル椿山荘東京)
http://www.klee.co.jp/entredeux/


◇キュレーターによるギャラリー・トーク
キュレーター・太田菜穂子によるギャラリー・トークが開催されます。写真の魅力をさらに深く理解するシーンです。どうぞお気軽にご参加ください。
3月21日(木)15:00〜15:30 キュレーターは14:00から16:00まで在廊いたします。


[ところ]も初日から駆けつけたかったが、3月5日から始まっている高松で進めているプロジェクト「フォトラボK」の展示の準備で行けず仕舞いだった。


そして、3月8日(金)から[TOKYO渋谷LOERS PHOTOGRAPERS]の結成第一回展「変貌する渋谷」の展示が始まるので、高松での展示を確認したあとはその準備に追われている。


会期:3月8日(金)〜3月18日(月)
会場:渋谷ハチ公広場 アオガエル(東京都渋谷区/東急5000系)


この展示さえ始まれば「エスプリ・ド・パリ展」を見に行くことができる。早く見に行きたい[ところ]である。


参加している作家の、オリジナルプリントを早く見たいのだ。印刷やwebでは絶対に伝わらないものがプリントにはあるからだ。


「エスプリ・ド・パリ展」の[ところ]の作品も、太田菜穂子さんはネットで見ていてあまり関心を引かなかったようだが、オリジナルプリントを見てすごく気に入ってくれた。そういうものなのである。


「フォトラボK」第一期修了生の展示もなかなかに素晴らしいので、ぜひ見に来て頂きたい。[ところ]の高松を撮った作品も展示されています。


「アートとして香川を記録 フォトラボK作品展 part1」
会期:3月5日(火)〜3月24日(日)
会場:香川県高松市サンポート2番1号 高松シンボルタワー タワー棟4・5階
http://www.my-kagawa.jp/event/event.php?id=620
https://www.facebook.com/KagawaPhotographers


半年前まで、写真好きレベルだった彼らがどれだけレベルアップしたか。商業写真に慣れきった人とは違って、ほとんど知識がないからこそ素直にのびた彼らの作品は素晴らしい。


もちろん、たった数か月でファインアート作家としてのレベルに到達したとはとてもいえません。まだまだ稚拙だし、私小説的レベルの人も多いけれど、彼らの一年後、二年後がすごく楽しみな[ところ]です。


さて、このテキストを書き終えたらまた渋谷に行く[ところ]です。今回の渋谷での展示は、ポスターや中吊り広告をアオガエルという電車の中に飾るインスタレーション的なものです。6人が別々のアプローチで撮った渋谷を、是非お楽しみください。気をつけて欲しいのは、雨がふると見られません。


さて、早くポスターのように仕上げないと。


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 http://tokoroyukinori.seesaa.net/
所幸則公式サイト  http://tokoroyukinori.com/

野郎3人カメラ旅の巻 その2の2


齋藤 浩


片岡氏、マニュエル君、そしてオレの3人で歩いた昨年11月の尾道カメラ旅はとても充実した素晴らしい時間であったが、帰って現像してみたらマニュエルにだけ真っ白のネガが届いたという悲劇的な結末を迎えていた。


災いのもととなった彼のニコンFもオーバーホールから戻り、いざリベンジ! ってことで師走の尾道に再び降り立った野郎3人。


初日の撮影も盛り上がり、いよいよ二日目に突入したのであった。
※第116回『野郎3人カメラ旅の巻』、
 第119回『野郎3人カメラ旅の巻 その2』参照のこと
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20121129140300.html
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20130207140300.html


その日も見事に晴れた。荷物をホテルのフロントに預け、瀬戸内の光を浴びつつ出発だ。岸壁から見える向島の浮きドックがシルエットとなって美しい。
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2013/02/21/images/001.jpg


一同、クレーンをカメラに収めたところで、今回はまず町の西側にある西願寺をめざした。尾道といえば坂の町だが、海に近いあたりは平坦な町並みが続く。しかし、それが平凡な風景かといえばさにあらず。


おそらく戦前のものと思われるコンクリート建築や、煉瓦づくりの倉庫などが点在する、なんとも散歩しがいのある地域だ。屋根付きの駐車場があったのでちょっとのぞいてみた。ナイスな骨格!
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2013/02/21/images/002.jpg >


芸術的ともいえる『瀬戸内』の文字。いとあはれなり。パソコンに向かってフォントをいじってもこうはならない。
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横断歩道も妙にドラマチック。
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錆びた看板やらアスファルトに落ちる電線の影やら、そんなモノばかりきゃっきゃと撮り歩く、およそ観光客らしからぬ行動をとる3人。


川に沿ってあるき、ひょいと路地に入ると一気に上り坂だ。ひと山越えて、つぎの山のてっぺんを目指す。途中でみつけた土蔵。赤塚不二夫先生の描くイヤミに見えるのはオレだけか。
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西願寺からの眺め。前の日に歩いた路地は、あの山の、その奥の山だ。「うわー、昨日はあんな遠くを歩いたんですネー」マニュエルが感慨深げに言う。
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思うに、尾道の観光コースといえば寺社めぐりが定番だが、やはり神髄は道程にあり! だなあ。西願寺をめざして歩いたにもかかわらず、寺の写真を一枚も撮ってなかったことに気づくオレなのであった。


さて、こんどは違う道を通って駅前〜千光寺方面へと向かう。ゆっくり歩いていると、ちょっとした板塀とか街灯の土台とか、なんでもないモノ達がここぞとばかりに主張してくる。


おお、なんとセクシィな節穴! そしてこのコンクリートの力強いマッス! といった具合に、それらがホントに芸術に見えてくるのだ。というか、実際ホントに美しいと思うんだよね。


なので、その『詠み人知らずの造形』の美しさを伝えるためにも、オレはいい写真を撮らねばならん。毎度のことながら使命感に駆り立てられるぜ。


と、思ってるのはふたりも同様らしく、カメラを構えつつ石垣から伸びた配水管やら、空き地に転がったブリキのバケツなんかを、真剣なまなざしで見つめている。


が、それにしても遅い。ふたりはさっきからずーっとバケツの前から動かない。そんなにそのバケツがイイのか。そこまでか??


オレは案内役とはいえ、世話役じゃないので先に行ってるぜ。と、細い道をうねうねと登ってゆく。そして振り向くと、まあ見事な3次曲面を描く路面であることよ!
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そっと路面をなでてみる。うん、曲面だ。ハァ〜。美しいなあ。地元の人にしてみれば日常の風景の一部にすぎない狭い道、その表面を眺めて微動だにしないオレ。ふと我に帰る。まあ似た者同士か。


彼らはまだ来ない。なのでまたちょっと登ってみる。すると、なんとも美しくカットされた地形。これって最初は山だったところを巨大なナイフで切り取ったのかな。


この地形が正だとして、負の形を想像してみる。うーん、イイなあ。こんど粘土で模型を作ってみよう。
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そうこうしているとふたりがやっと追いついてきた。どうやら良い写真が撮れたらしい。満面の笑みである。


急な坂道を下って、ちょっとコワイ橋を渡ると、
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区画整理されたっぽい区域に出た。地形と人々の暮らしとの結果生まれた、迷路のような場所をさまよっていたせいか、まっすぐの道が直角に交わる景色がとても不自然に見えてくる。きっとここも昔は迷路だったのだろうけど、今ではその姿を想像することはできない。


町並みは財産だ。前にも語ったと思うが、おじいちゃんと孫が同じ土地に住んでいながら、同じ風景を共有できないことがどれほどの損失を生むか気づいてほしいと思う。どうか、目先の利益だけに惑わされない、広い視野をもった町づくりをお願いします。


さて、レンズを変えて気持ちをリセット。商店街から山の手の路地を切り取る。墨絵のような瓦と壁。
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階段には手すりの影。南側の斜面は楽しいグラフィックパターンの宝庫だ。
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水平・垂直・45度! 画角が狭いと抽象画がたくさん生まれる。
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というところで腹がへってきた。4時間近く坂道を歩きっぱなしだし、当然か。昼食は商店街にある寿司屋のランチにしてみた。初めて入ったのだが、スゲー旨かった。にぎりはもちろん、箱寿司系のモノが繊細かつ華やかな味わいで、にもかかわらず気取ってない。


オレごときがエラそうに語ってしまい申し訳ないが、こんど来るときもランチはここにして、さらに折り詰めを作ってもらって帰りの新幹線で食べるのだ! もう決めたぞ。店の名前は忘れちゃったけど。


さて、気がつけば2時をまわっていた。山の手が暖色系に染まり、きりりとした表情がやわらかくなる。


5時前には尾道を発たねばならんので、ちょいと先を急ぐかね。ということで我々はそのままロープウェイ乗り場へ直行、千光寺展望台から尾道水道を臨む。寒い。


だが! 前回も良かったけど、今日はまた最高の眺めだ! しかし寒い。日向とはいえ12月だしな。でも見事な見晴らしゆえ許す!


向島の先の先の先の先の先の先までくっきり見える。嗚呼、瀬戸内海。海の幸旨かったな。
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隣を見ると、マニュエルがソフトクリーム食ってる! 君、この寒いのによくそんなモノ食べられるね。


「前回も良かったけど、今回もまた素晴らしかったね。次回は一週間くらい滞在したいなあ」「こんど日本に来るときも、尾道には必ず帰ってきマス!」ふたりともそこまで気に入ってくれたか、嬉しいぜ。


ゆっくりと沈んでいく陽の光をあびて、屋根瓦も土塀も、我々の顔もバキバキのコントラストだ。時折シャッターを切りつつ、細い階段道をとぼとぼと名残惜しげに歩く野郎3人。


「そうだ! 記念写真撮りましょうヨ」


マニュエルの提案により、初めて観光客らしい行動に出た。しかし、バックはあえて石垣。この写真の右側に尾道の大パノラマが広がっていたなーと思い出しつつ、今回のご報告は以上。
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【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。

そして、ちょっかいを出しまくる
タイムラプス、シネマグラフ、ステレオ写真をやってみた


上原ゼンジ


私が実験的な写真を撮り始めたのは、姉妹メルマガ・デジクリの連載からだ。2006年の4月の「レトロなレンズを求めて」というのがその始まりだから、もう7年になるわけだ。暗室をやっていたころから実験的なことはやっていたけれど、毎週やってくる締め切りに合わせてネタを絞り出すことにより、どんどんその世界が広がっていった。


次々といろんなことにちょっかいを出してないで、少しやることを絞ってみよう、などとたまに思ったりもするのだが、私は一生こんなことをやり続けてゆくのでしょう。たぶんそういう性分だからもう直らない。ただ興味のある方向には粘着的な力を発揮できるから、自分を放置して、好きにやらせておくのがいいのかなと思っている。


タイムラプスをやってみた


本当に次から次へとやりたいことが出て来てしまうのだが、昨日はタイムラプスをしてきた。タイムラプスというのは、微速度撮影のことで、5秒に一回とかで撮影した写真をつなぎ合わせることにより、時間を圧縮させて見せるムービーの技術。雲がすごい勢いで流れたり、蝶がサナギから羽化する様子を早回しで見せたりするアレのことです。


アレがiPhoneやデジカメで簡単にできるようになってきた。iPhoneであれば、「TimeLapse」などのアプリケーションをインストールすればいいし、これから発売されるデジカメには、あたりまえのように搭載されるようになるのでしょう。


基本は何秒毎に撮影し、どれくらいの時間撮影をするのか設定をするのだが、単にJPEGで大量に撮影するのではなく、ムービーファイルとして記録できるというのがポイント。雲の動きがもうちょっと速い方がいい、とかの確認がすぐにできるし、ファイルが重くならない。そしてパソコンに取り込んでの編集作業が不要だというのがありがたい。


ムービーをやるということに対し、写真を裏切るような後ろめたさがあるのだが、「これは写真をつなげたものだから、ただの動く写真だよな」と自分を納得させやすいところがいい。


まあムービーって元々そうなんだけど、このタイムラプスは、より写真を撮るという行為に近い感じがする。6秒分のムービーを撮るのに14分も待っていなければならないので、「そんなヒマなことは、オレには無理!」と最初は思ってたんだけど、なかなか面白くてハマってしまった。宙玉レンズと合わせるとなかなかいい感じになる。


ちょこっと動くシネマグラフ


さらにシネマグラフというのにもちょっかいを出し始めた。これは一見すると写真に見えるのだが、画面の一部だけが微妙に動いている映像だ。たとえば画面内にあるロウソクの炎だけが、チラチラと動いているとか、ポートレイト写真で片目だけが瞬きで動いているとか。その動きがGIFアニメになって、何度も繰り返される。


これを最初に見た時は面白いとは思ったけど、自分でやってみようとは思わなかった。しかし知人がセミナーで披露したデモンストレーションを見て、すぐに真似をしてみたのだが、これも面白かった。


とりあえず撮ってみたのは宙玉レンズを使ったロウソクの写真だが、一つの技術を知ると別の技法との組み合わせでいろんなアイディアが広がってくるのが楽しい。


今回は使い慣れたPhotoshopでシネマグラフに仕立て上げたのだが、これもまたiPhoneを使ってシネマグラフを作成するためのアプリがいろいろと出ている(Cinemagram、Flixel、Kinotopicなど)。


Photoshopだって、以前は動画をサポートしてなかったから出来なかったようなことが、今ではスマホで簡単にできてしまう。動きを出したい部分だけをタッチパネル上でこするという操作性の良さもいい。


◇シネマグラフの第一人者/Jamie Beck & Kevin Burg
http://cinemagraphs.com


◇映画のワンシーンをシネマグラフに
http://iwdrm.tumblr.com/


3D宙玉の可能性


先日は「ステレオクラブ東京」の例会に参加させていただいた。ステレオ写真とは言っても最近はムービーも含まれるので、例会では二台のプロジェクターを使って映像を投影し、みんなで専用の眼鏡を使って鑑賞するという本格的なスタイルだ。


なぜ私が参加したのかと言うと、宙玉でのステレオ写真に挑戦し始めたからだ。facebookにアップされた宙玉写真を見た「ステレオクラブ東京」の関谷隆司さんが、「宙玉2つ付けてステレオで・・・w」というコメントを付けてくれ、それに私がすぐに反応したというわけだ。


だって、脳内に透明球が浮かんでるイメージって面白そうでしょ? なんか宙玉写真と3Dの親和性というのは非常に高いのではないか。そう考えたらすぐに玉が二つ並んだ宙玉レンズを作っていた。


結果から言えば、この玉二つタイプはイマイチだったんだけど、現在もこの3D宙玉にはチャレンジ中。まあ、近い将来その結果をお見せすることができるでしょう。


ステレオ写真もiPhoneを使って撮影することができる。たとえばアプリとしては「i3DCamera」や「i3DSteroid」があるが、どちらも「ステレオクラブ東京」のメンバーが開発したそうだ。私はステレオ写真を始めたばかりなのに、いきなりディープな人達と出会うことができたようだ。


私の身近なところで言うと、超芸術トマソンの煙突男こと飯村昭彦さんがステレオ写真をやっているが、飯村さんは4×5のポジでステレオ写真を撮ってましたよ。それがiPhoneで撮れちゃうんだからねえ。世の中変わったもんだ。いや、当時でも4×5で撮ってたのは珍しかったかもしれないけどw


カメラは写真だけ写ればいいと思ってたけど、そんなことないから、どんどん進化して欲しい。パソコン化してカメラ自体にいろんなアプリがダウンロードできたり、編集ができたり。モジュール化して撮像部と再生部が分離出来たり。


フィルムや印画紙がなくなってしまう悲しい時代ではなく、いろんな可能性が広がる面白い状況に立ち合っていると思いたい。そしていろんなことにちょっかいを出しまくって、見た事がないような面白い写真を撮ってみたい。


◇「網フィルター」を作ってみよう! アナログモザイクの微妙な味わい(デジカメWatch)
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/omoshiro/20130207_586454.html


【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com < http://twitter.com/Zenji_Uehara >


上原ゼンジのWEBサイト
< http://www.zenji.info/ >
Soratama – 宙玉レンズの専門サイト
< http://www.soratama.org/ >
上原ゼンジ写真実験室のFacebookページ
< https://www.facebook.com/zenlabo >

YouTubeで見つけました!

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