「写真を楽しむ生活」のページ頭です

写真を楽しむ生活

写真が好きなすべての人に役立つ情報クリップ。写真展情報は"日本最強"!

カテゴリ ‘コラム’ のアーカイブ

齋藤 浩


ほんとはドイツについて書こうと思っていたのですが、秋晴れの良い天気が続いていたため、ここは是非みなさんが昔使っていたフィルムカメラを押し入れから引っ張り出してお散歩に出かけていただきたいと思いまして、予定変更と相成りました。


なにかとフィルムカメラの素晴らしさを語っているが、肝心なことを書いていませんでした。


私は楽しく撮影した後、きちんと現像して焼き付けして、なんてことはやってない。いわば、フィルムカメラの面白いところだけ楽しんでいるのです。つまり、邪道です。手抜きです。


そりゃフィルム現像の工程や、暗室での作業はとてもクリエイティブなものですが、でもそんな時間も場所も金もねえ。廃液の処理もメンドウだしね。


そこで、オイシイとこだけ楽しんで、残りの行程はデジタル、という方法をとっています。それでも、デジカメで撮った写真とはまったく違う結果が味わえるのです。


今回はラクして楽しくフィルムカメラを使い、デジタルで気軽に現像(画像処理)、管理する『手抜きフィルムカメラ道』をご紹介します。ご紹介ってほどでもないか。


たぶん、このようにフィルム写真を楽しんでいる人はものすごく多いと思うのですが、オレはこうやってるぜ、ってことを今のうちに語っておこうと思った次第。


さて、『手抜きフィルムカメラ道』の大ざっぱな流れを見みると、1.撮影→2.フィルム現像→3.スキャン→4.画像処理 てな感じです。では、順を追って説明しよう。


おっとその前にフィルムカメラを持ってない! というあなた!! あなたはものすごくラッキーです。なぜなら2012年の今は、すごいカメラとすごいレンズが嘘みたいに安く買える時代なのです。


中古カメラ屋さんやネットオークションを探せば、1970年代後半のミドルクラス一眼レフのレンズセットが10,000円以下で手に入ってしまいます。


ちなみに、デジタルとの違いを楽しむのなら、オートフォーカス以前の一眼レフと単焦点レンズのセットがオススメ。デジカメ+ズームレンズに慣れた目から、ウロコが50枚くらい落ちることうけあいです。


また、よく聞かれるのですが、「フィルムってまだ売ってるの?」…って、売ってますよ!!!! 余裕で売ってます。以前より種類は少なくなりましたが、カメラ屋さんでもAmazonでもちゃーんと買えます!!!!


1──撮影


『手抜きフィルムカメラ道』全4工程の中でもいちばん楽しいのが撮影でしょう。って、そりゃそうだよね。好きなカメラを持って素敵な被写体と出会い、シャッターを切る。まさに至福のひとときと言えましょう。


さてデジカメとフィルムカメラとの最大の違いのひとつに、撮影した写真がその場で確認できるかってことが挙げられます。


デジカメが出始めた頃は、その場で確認できるから失敗も減る、なんてことで皆が大喜びしたもんです。しかし、これにより人は失敗する自由すら奪われてしまったともいえます。


その時は失敗したと思ったものでも、後から見てみると貴重な記録写真になり得たり、味わい深い思い出となったりすることってけっこうあるものです。


また、確認できないから想像する。フィルムカメラは想像する余地が人間側に残されている機械なのです。


たとえば、モノクロフィルムを詰めて撮影する際、今見ているカラーの世界からモノクロの世界を想像してシャッターを切ります。色彩と階調の世界を、脳内で階調だけの世界へ変換して撮影するのです。


いままで主役と脇役との間にあった、彩度の関係がなくなったらどう見えるかな? と想像してみると、意外とトーンが似てしまい、主役が引き立たなくなりそうだ、なんてことがわかったりします。


では、どうすればいいか? ちょっと移動して木陰で撮ったら陰影に差が生まれるかもしれないぞ! てなことに気づいたりもします。


この自分で気づける幸せってやつはフィルムカメラの醍醐味です。仮に気づけなかったとしてもそれは確実に経験値UPに繋がるし、そもそも失敗したらどうしようじゃなくて、失敗もクリエイティブのひとつなのだ! くらいな図々しさを持った方が、人生が楽しくなると言えましょう。


以下極端な例です。これらの写真は今年の冬、初めてライカで尾道を撮影したときのもの。ハイテンションだったためか、巻き戻し中にうっかり裏蓋を開けてしまい、フィルムを感光させてしまったり、最初の巻き上げが不足していたまま撮りはじめてしまったものです。


でも、デジタルじゃこんな表現できねえよ。ざまーみろ。
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/10/18/images/01.jpg
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/10/18/images/02.jpg


最近のデジカメは露出やピントだけでなく構図まで決めてくれるらしいが、フィルムカメラの良いところは、人間に自由があること。すべて自分の責任で撮影ができるってことだと思う。


こうして撮った写真は、明らかにデジカメと違う世界を写しているはずだ。そして、その世界はデータではなくネガとして実在してくれる。皆さんもたまにはカメラにフィルムを詰めて、散歩にでかけてください。お願いします。


2──フィルム現像


これを自分でやるとなるとタイヘンです。なので私はヨドバシに持ってきます。36枚撮りネガフィルム1本の現像代は500円ちょっと。同時プリントはしません。あくまでも現像のみ。


フィルムの種類にもよるけど、数時間から数日でUPするようです。この待ってる時間がイイ。ラブレターの返事を待つような感覚ともいえよう。


また町の写真屋さんにカラーフィルムの現像を依頼する場合、とくにカラーネガの粒子感が粗く出る傾向にあるような気がします。嘘か真か、像が出ないことを防ぐため、一般的なネガは若干高めの温度で現像するって聞いたことがあります。


ポジの場合はもともと粒子が細かいってのもあり、感度相応の印象に仕上がりますが現像に時間がかかる。ちなみに、モノクロネガはカラーネガほど粗さは目立たないような気がしていたのですが、こうして比較してみるとたいして違いはないですね。印象の問題だったようです。


とはいえ、これは優劣の問題ではなく、味の問題とみた。プロラボに依頼すると、また違った結果になってくるかもしれません。


ISO100のカラーネガと、カラーポジと、モノクロネガを1350dpiでスキャンした例(部分)。空部分はディテールが少ない分、粒子感がわかりやすい。


http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/10/18/images/03.jpg
カラーネガ
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/10/18/images/04.jpg
カラーポジ
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/10/18/images/05.jpg
モノクロネガ


3──スキャン


現像UPしたら、スキャナで取り込む。ここでケチると残念な結果になる。5万円くらいのフィルムスキャナか、フィルムに対応したグレード高めのフラットベッドスキャナをおすすめします。一昔前の1/4程度の値段で手に入るんだから、一考の余地ありです。


最近は格安のフィルムスキャナもあるそうですが、くれぐれも貧乏人の銭失いにならないよう気をつけてください。


ちなみに、私はKONICA MINOLTAのディマージュスキャン5700というフィルムスキャナ(絶版品)を使っていますが、最近ではオーグのOpticFilmというフィルムスキャナが評判いいみたいですね。


スキャンする上で気をつけたいのは、極力素直に取り込む、ということです。私の場合、スキャナにある色調補正機能やキズ・ホコリなどの除去機能は使わない方が良い結果が得られました。


ここでは極力ニュートラルに取り込んで、後からまとめて調整します。ちなみに、モノクロネガをスキャンする際は、一旦カラーモードで取り込むとディテールが失われません。その後画像処理段階でモノクロにします。


またフォーマットはjpgではなく、TIFFなどの圧縮ナシ形式にしておいた方が画像処理時の自由度が上がります。


自分でスキャンせず、現像と同時にカメラ屋さんで画像データとしてCDに焼いてもらうのもアリだけど、店によってクオリティがかなり違うようです。色が転んでいたり、水平垂直があってなかったり、一律に補正がかけられて意図した表現と違っていたり。


とはいえ、自分のイメージにあった入力をしてくれる店が近くにあればベストと言えましょう。オレとしては、いろんなスキャナやスキャニングサービスを試して結果をまとめてみたいのだが、それは『手抜きフィルムカメラ道』の執筆依頼がどっかの出版社から来てからやることにする。


4──画像処理


さて、写真をデータ化しちゃえばこっちのものだ。Photoshop ElementsでもSILKYPIXでもデジカメ付属のオマケソフトでも、使い慣れた環境で自分好みに仕上げていけばいい。


スキャンされた時点で、写真はデジカメと同じ画像データになった訳だが、ピクセルだけでなく、不揃いの銀粒子で構成される世界には独特の深みがあるものだなあと驚かれることうけあいです。


好みの調子に仕上げたら、いつものデジカメで撮った写真と同じように管理して、iPodに入れて友達に見せびらかしたり、facebookにUPしたりしてください。


インチキなデジタルフィルタで加工した写真に見慣れたほとんどの友達は、「こうして見ると、フィルムで撮った写真って、違うなあ!」と言うはずです。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。

所幸則 Tokoro Yukinori


[ところ]が主宰する香川県の「フォトラボK」が、いよいよ動き始めました。
https://www.e-topia-kagawa.jp/kouza/photolabk.asp


[ところ]は70名近い応募者に対してもうしわけない気持ちで、定員の20名を27名にまでふやしました。なぜ希望する人全員じゃ駄目なのかといわれますが、写真のチェックをするにも、アドバイスをするにも、とうてい対応不可能な人数だからです。


[ところ]は正直一度に10人ぐらいまでが好ましいと思っています。春には第二期生の募集、次の秋には第三期生の募集もあるので、抽選から漏れた人は懲りずにまた応募して下さいね。


さて、[ところ]は自転車が盗まれた後、交通事故にもあったのです。車の陰から突然現れた軽自動車は、ふたつの車線をまたぎ逆方向に走りたかったようで、[ところ]の車にぶつかってきました。車同士の事故は大阪4年、東京29年の運転歴である[ところ]にとっても初めての経験だったので、かなリショックでした。


体は当日は何ともなかったのですが、次に日から少し左側の首筋と肩がおかしいなあという感じでした。保険屋さんがいうことには1:9で相手が悪いので、補償してもらえるそうですが[ところ]がショックなことは変わりがありません。


さて、高松市塩江美術館で10月26日から個展を開催することになったとお伝えしましたが、この展覧会では「渋谷1セコンド」と「ポートレート」中心での展示ということに、最終打ち合わせで決まりました。足りないプリントは18日から20日まで、渋谷のアトリエで行うことになりました。


[ところ]のアーティストステイトメントだけでもわかって欲しいので、「渋谷1セコンド」の展示にあわせて、そのコンセプトムービーも流すことになりました(音楽は徳澤青弦)。これも見てもらえれば、より理解が深まると思います。


所幸則 One Second 2008-2012
http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/19908.html


それと「渋谷芸術祭」でも、正式に展示が決まりました。これは東急建設の方、渋谷の街づくり協議会の方、渋谷区の人たちの後押しがあって実現したのです。渋谷ヒカリエ 3F アーバンコアで初めての展示をさせていただくことになり、うれしい気持ちでいっぱいです。以下は案内からの抜粋です。


毎年様々なアーティストを招待してきている渋谷芸術祭が、今年は渋谷の新たなランドマークとなる渋谷ヒカリエ3階特設会場にて、渋谷の街を撮りつづけてきた奇才・写真家所幸則の写真展を開催する。


特設会場では、所幸則が主宰する「東京渋谷ラヴァーズフォトグラファーズ」という、渋谷を愛し記録し続けるアーティスト達の写真を堪能しつつ、メインの所幸則の作品も楽しみください。その背景は実際の渋谷の街が望める絶好の場所。渋谷芸術祭においてこの場所に来ることは、きっと渋谷を更に深く楽しめることにつながるだろう。


2012年実施概要
イベント名:第4回渋谷芸術祭 2012 < http://shibugei.jp/ >
展示会名:所幸則主宰 東京渋谷 Lovers photographers 写真展
会期:2012年10月27日(土)〜10月28日(日)10:00〜21:00
会場:渋谷ヒカリエ 3F アーバンコア内特設会場 入場無料
主催:渋谷芸術祭実行委員会・渋谷道玄坂商店会進行組合・渋谷公園通商店振興組合・渋谷宮益商店街振興組合・渋谷中央街・渋谷東地区まちづくり協議会・学校法人青山学院・東京急行電鉄株式会社
後援:渋谷区


東京渋谷ラヴァーズフォトグラファーズメンバー
主宰:所幸則 サトウタケヒト 布施有輝 金杉肇 渡部暁


[ところ]も含め彼らはいわゆる職業カメラマンでも、商業カメラマンでもありません。ただ、渋谷を愛する写真表現をする写真家達です。キャリアもまちまちですが、渋谷のイメージをおのおの違うコンセプトで撮っています。あと何人か違うタイプの写真家がチームに参加してくれて、一緒に発表できるようになるといいなと思います。連絡お待ちしています。


それ以外にも、つい先日「東京画」のラウンドテーブルという対談シリーズで、所幸則と浅川敏さんの写真家対談が掲載されています。是非見て下さいね。[ところ]の渋谷の新作等もアップされています。
http://www.tokyo-ga.org/magazine/09.html
http://www.tokyo-ga.org/photographers/tokoroyukinori/


そして、しばらくお休みしていたニコニコ動画とユーストリームによる[ところ]の写真にまつわるお話を再開します。
所幸則 1sec(ONE SECOND)
http://com.nicovideo.jp/community/co60744


いつどういうテーマで誰と話すかわからないので、[ところ]に興味のある方はコミュニティに入っていて下さいね。そうするとメールでお知らせが届くはずです。お楽しみに。


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 http://tokoroyukinori.seesaa.net/
所幸則公式サイト  http://tokoroyukinori.com/

上原ゼンジ


新しい本が出た。『こんな撮り方もあったんだ! アイディア写真術』というタイトルで、デジカメWatchに書かせていただいた原稿を大幅加筆訂正し、撮りおろしの写真などもたくさん入れて構成した本だ。内容は、宙玉、太陽画、ブレ写真、万華鏡写真、トイ蛇腹、水玉・泡玉など。多くの作例を交え、撮影の方法などを紹介している。


今までの本というのは、わりと読者のニーズなども考えながら構成していたのだが、今回のは私の趣味が前面にでており、ここ何年か私が最近取り組んできたことの集大成的なものになっている。


元はと言えば、日刊デジタルクリエイターズの連載用に思いついたネタだった。「手作りのレンズを作ったらどうだろう?」という発想から連載を始めたが、一週間ごとに締切がやってくるため、必死でネタを考えなければならなかった。それがどんどん広がって、宙玉レンズや手ブレ増幅装置へとつながったというわけだ。


一番始めの工作は、紙筒の先に100円ショップで買った双眼鏡のレンズをくっつけ、フタのスライドによりピント合わせをするというものだった。金属を加工したりするスキルがなかったのと、なるべく簡単な工作にして、いろんな人に楽しんでもらいたいと思ったからだ。そんな工作を6年もやっていたらどんどん工具も増えてゆき、この間はついにボール盤まで買っちゃいました。


ボール盤というのは、電動ドリルとそれを支える台が一体化したもので、垂直に穴をあけることができる装置のこと。なんでこんな大袈裟なものを買ったのかというと、宙玉レンズ用にガラスのフィルターに穴をあけるためだ。最初にフィルターに穴をあけた時は専門家に依頼した。でも、やはり自分でできた方が便利なので、穴をあけるための試行錯誤を始めた。


でもねえ、うまくできるようになるまでに10枚ぐらいフィルター割っちゃいましたよ。最初は普通の電動ドリルにガラス用の刃を付けてグリグリと削っていたのだが、穴をあけているうちに微妙に動いてしまい、穴はあいても中心にならないのだ。


こんな作業には、刃も穴をあける物も固定できるボール盤が向いていると知ったのだが、値段が高いしけっこうゴツい。しょっちゅう使うものでもないから、使ったあとの置き場にも困る。


そんな時に私が出会ったのは、REXONの小型ボール盤DP2250Rでした。本体寸法はW180×D275×H410mm。想像してみてください、幅が18センチしかないんですよ。小さいでしょ。しかもお値段ナント11,500円。これは買うっきゃないでしょ。早速カミさんに内緒でポチりました。しかしいくら小さいとはいえ、これを使うとかなりの騒音が出るので、すぐにバレちゃったけど。


◇これがそのボール盤
http://www.japan-hobby-tool.com/cart/syouhin.php?cat=00000052&no=00003104


●いつもとは違う体制で編集


単行本の制作というのは、通常は編集さんと二人でチマチマやるんだけど、今回は少し規模が大きかった、最初の打ち合わせは編集2名、デザイナー2名、そして私という5人で行った。


その後もメーリングリストを作って互いに意見を交換しながら、構成やタイトル、表紙デザインなんかを決めていったのでなかなか面白かった。ただ、デザイナーさんには著者まで直接意見を言ってくるので、ちょっと負担だったかもしれないけど……。


いつものやり方だと、デザインのフォーマットを貰って、こちらでInDesignに組んだものを渡し、デザイナーさんにブラッシュアップしてもらうというような段取りなのだが、今回はドサッと写真やテキストを編集さんに渡して「好きにして」という方式をとった。


自分であんまりやり過ぎると、考えが限定されてしまって面白くないからだ。やはりチームで作業をするのなら、違った面白いアイディアをどんどん取り入れていきたい。


そういう意味では編集者、デザイナーの手間のかかった本になったと思う。そして自分で出来上がった本を見ていて思ったんだけど、「オレって相当しつこい人間だよな」ということだ。きれいなレイアウトでオブラートにくるんでは貰っているけど、粘着的な部分が滲み出しているように思う。森山大道さんからは「病気」と言われたけど、こういう部分のことなのだろうか。


●本の中身を全ページ見せます!


今回は本の中身をパラパラと見てもらうために、全ページが収録された動画を作ってみた。InDesignから見開きのPDFに書きだしたものを、Photoshopのバッチ処理でリサイズなどの処理をしてJPEG化。iMovieに読み込んで、それぞれの写真の秒数を設定した。最初は文字が見えすぎで全ページ無料配布になりそうだったので、解像度を落としてYouTubeにアップしてみた。


本の中身を見せるというのはあるけど、新刊で全ページというのはないんじゃない?(ありますか?)なんでこんなことをやろうと思ったかと言うと、本をパラパラやってみれば、興味を持ってくれる人も増えると思ったからだ。


Amazonなんかでも、「なか見!検索」はあるけど、私自身はあまり利用していない。それよりもYouTubeにアップしておいた方が、人目に触れる機会も増えるんじゃないかという計算だ。


まあ中身を見せると言っても、0.3秒でページが切り替わっちゃうんですよ。本当に次々ページが変わるので、なんとなくは分かるけど、よくは分からない。「なんかよく分からないけど面白そうだから買っちゃえー!」という人がいっぱい増えてくれるというのが狙いなんだけど、さて効果はあるかな。


・YouTubeにアップした動画
http://www.youtube.com/watch?v=mwRpYqmgytk


・インプレスジャパンでは目次なども掲載されてます
http://www.impressjapan.jp/books/3273


【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com
http://twitter.com/Zenji_Uehara
上原ゼンジのWEBサイト
http://www.zenji.info/
Soratama – 宙玉レンズの専門サイト
http://www.soratama.org/
上原ゼンジ写真実験室のFacebookページ
https://www.facebook.com/zenlabo

齋藤 浩


いつかはニコン!


そうは思っていたもののタイミングを逸していまい、まともに使うこともなく40代になってしまった。仕事ではαシリーズの一眼レフ、趣味ではレンジファインダーカメラを使うことが定番化して久しい。


だいたいニコンというブランドは硬派すぎる。バイクに例えればカワサキのような存在で、「ライダーには二種類いる。カワサキ乗りか、それ以外かだ」に相当することをカメラの話で言い放たれた日にゃ、すみません、私にとってニコン様は遠い存在です。いつか機会がありましたら使わせていただきますです。とか言ってその場から逃げてしまう。


とはいえ、ある種の憧れのようなものもあるからクヤシイんだな。そんなある日、普段からなにかと世話になっている“編集長”ことS氏が「もう使わないから」ということでニコンをくださったのだ。しかも、伝説の一眼レフ『ニコンF』である。


Fといえば1959年に登場し、瞬く間にカメラの歴史を変えてしまった名機中の名機。3本のレンズとともに5月のとある日曜日にそれは送られてきたのだった。ほどよい重さ、ほどよい大きさのダンボール箱を開けてみると、そこにはプチプチでくるまれたいくつかの塊があった。


そのうちのひとつ、直方体のヤツを開封する。ちらりと銀梨地のトンガリ頭が見えた! おお、これぞ伝説の三角形、ニコンFのアイレベルファインダー!! 円柱状の塊も含め、残りのプチプチをすべてひんむく。


するとシルバーのカメラボディと24mm、50mm、105mmのレンズが現れる。上品かつ堅牢な雰囲気の、金属とガラスとレザーで構成された4つの塊が机の上に並んだのだ。心が震えるぜ。


さて、これらのお宝だが、すぐに使えるかといえば、残念ながらそんなわけでもない。いずれも使われなくなってから相当な年月が経過しているらしく、それなりに修理が必要なのだ。


ボディにレンズを装着し、ファインダーを覗いてみた。ぼやーんとしている。光学系にカビ、クモリが相当出ていると思われる。シャッターを切ってみる。低速シャッターが明らかに遅すぎる。音も変だ。


レンズをはずしてシャッターを切る。すると、ミラーアップしてないことが判明。周囲のモルトプレーン(黒いスポンジ)もぼろぼろである。


ということで、何度もお世話になっているお医者さんことTカメラサービスへ持ち込んだ。ざっと見積もっていただき、ちょっと悩んだ上、ボディと24mmと105mmのオーバーホールをお願いすることにした。


ふふふ。ついにオレもニコンオーナーか。なんだか不思議な気持ちだぜ。こころなしか口調まで硬派になってくるぜ。見ろよ、夕陽がまぶしいぜ。修理には2〜3週間かかるとのことだった。


そういえばこのところ複数の方からカメラをタダ! もしくはタダ同然! で頂いている。いずれもジャンクもしくはジャンクすれすれ状態のものが多く、また、よりにによって、そのどれもが昔憧れたカメラなのである。


これらを修理して使ったり、修理せずにごまかしつつ使っていたりするのだが、ファインダーを覗き、シャッターを切っていると、まるで今がフィルムカメラ全盛期なのではないか? と錯覚を覚えるくらいどのカメラも現役時の輝きを失わずに、いい仕事をしてくれるのだ。


また前のオーナーを知っているというのも、楽しく使える要因なのかもしれない。ちなみにニコンは40年くらい前にS氏が大学の先輩(金持ちのボンボン)から譲り受けたものだそうだ。


当時、先輩はS氏の美しい妹君に気があったらしく、なにかってーとS氏宅に遊びに来ていたらしい。そんなセイシュンの一コマも記録したであろうニコンFが、巡り巡って我が家にやってきてくれた。


これは、オレのセイシュン時代の思い出の地にも連れていかねばなるまい。てなことを日々考えているうちにあっという間に時は過ぎ、完全復活したニコンFが我が手に在る。


そして6月のある日、オレはFとともに広島県は尾道市へとやってきたのだった。


完全復活を果たしたFは毅然とした態度で黙々と仕事をこなす。ファインダーも実にクリア。ヘリコイドの動きもスムーズ。


使ってみた感想だが、まずピントリングの回転方向がいつものカメラと逆なので、少々気を使った。それさえ慣れてしまえばこっちのものだ。シャッター音も機械っぽくて気持ちいい。


フィルム交換のときは裏蓋をまるごと外すので、雨が降って来たときはちょっと苦労したが、それこそがFの醍醐味って気にさせてくれる。


基本的に露出計すら付いていない実にシンプルな機械ゆえ、使い方に戸惑うことは一切なかった。余計な機能を満載しているデジカメの、対極の存在かもしれない。


現像したところ、露出どおりに仕上がっているようだ。レンズの印象はとてもシャープで力強い。コントラストも高く、風情というより現実、情緒というより写実って感じがする。


昔の新聞を想起させる、ドキュメントな印象なのだ。考えてみれば1960年〜70年代は、どの新聞社の写真もFで撮っていたに違いないから、そんなふうに思えるのも納得がいく。


今回は雨を避けながらの町並み撮影に終始したが、荒めの高感度フィルムで動きのあるモチーフを撮影してみるのも面白いだろうなあと思うのであった。これからの人生がまたもやタノシミになってきた。


Fのいる生活は始まったばかりだ。


http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/07/19/images/fig1.jpg


雨上がりに24mmレンズで尾道水道を見下ろす。うっかりすべってコケないよう緊張して撮影したら緊張感のある描写に。


http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/07/19/images/fig2.jpg


山の手から商店街へ通じるヘアピンカーブ。高低差もスゴい。


http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/07/19/images/fig3.jpg


105mmレンズで中腹から坂を見下ろす。


http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/07/19/images/fig4.jpg


スイッチバック階段。実際、この場所に立つと目が回るような錯覚に陥る。無作為の天命反転地といった印象。


http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/07/19/images/fig5.jpg


105mmで港から山の手を見る。屏風のように家々と階段が立つ。


http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/07/19/images/fig6.jpg


向島の猫。


http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/07/19/images/fig7.jpg


向島の路面。うねるような三次曲面を描く。地面を見てるだけで時を忘れるくらい楽しめるのだが、地元の人にしてみれば当たり前の光景。


http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/07/19/images/fig8.jpg


今年はツバメを見ないなーと思っていたら、ここにはたくさんいました。


http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/07/19/images/fig9.jpg


大好きなパン屋さんの側から尾道水道を見下ろす。その向こうには向島。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。

所幸則 Tokoro Yukinori


[ところ]にとって初めての、ヌードがテーマの写真展が6月9日で終わった。NYPH(ニューヨークフォトフェスティバル)や中日友好現代美術展なども同時期に出展していたこともあり、今回のNiiyama’s Gallery and sales Salonで行われた「1 second-ほんとうにあったように思えてしまう事」についてお知らせする力がほとんどなくなってしまっていた。他のこと含め、詳細はここに書いてあります。
http://tokoroyukinori.com/info_j.php


個展「1 second-ほんとうにあったように思えてしまう事」が決まったのは去年の年末ぐらいだったから、開催までたっぷりと時間はあったわけなのだが…。突然「NYPH」への出品が決まり、それも「東京画」の参加作家全員ではなく50人前後の中から18人だけが作品を展示する、そのなかに選ばれたというのは光栄なことであり、またNYでの展示は初めてということも相俟って、[ところ]の神経がそっちに向いてしまったのです。


さらに3月末には中日現代美術交流展への出展依頼も来て、しかも草間彌生さんや、荒木経惟さんと並んで展示されるという話で、これも開催時期が同じ。ということで、気持ちが分散してしまったのは否めない。


作家にとっては個展が一番大事なんだけれども、こういう滅多にないような話がまとまってやってくると、[ところ]も集中力が持続できないんだなと思い知らされました。


それでも、[ところ]の初めてのヌード作品オリジナルプリント展の最後の数日間は熱心に見に来てくれる方達も増えて、プリントも二枚売れました。個展で一枚もプリントが売れなかったことはない、という所幸則伝説(?)は続いています。


個展開催前にも売れたので、合計で今回のヌードシリーズは三枚売れたことになります。少しですが売れたことで、ギャラリーに迷惑をかけなかったのが非常に嬉しいのですが、今回のこの個展は、隠れ家的ギャラリーで所幸則の作品に本当に凄く興味があって、買いたい程好きな人達だけがくればいいやという気持ちで開いたので、[ところ]は本当はこれでいいんだとも思っています。動員数ではなく濃度が問題なんじゃないかと最近思っているからです。


美術館などは入場券を沢山売る使命があります。本当は芸術にそんなに興味がなくても、私って芸術好きなのよってことがファッションだったりする人など、誰でもいいから人が集まればそれでいいわけです。[ところ]ら純粋芸術のなかの写真というカテゴリーの人間は、人数至上ではなく本当に好きな人至上のはずなんです。


[ところ]は、もちろん多くの人に好きになってもらえれば、それは一番素晴らしいことだと思っていますが、今回の作品は特別だったのです。


裸体を撮る、そのこと自体が[ところ]にとってはとても個人的な記憶の確認のための行為なのです。僕と彼女の間にあったことが確かに存在したという、事実の証として撮る意味合いが大きい作品であり、被写体にはものすごく愛情があります。本当はそんなに沢山の人に見せたくないという複雑な思いもある[ところ]でした。


それゆえ、渋谷のシリーズと違い極端にエディションも小さく、渋谷は50枚なのに、今回のシリーズは7枚とか、ものによっては5枚だったりします。ですが、一方では印刷物の世界でオランダのファインアートフォトマガジン「Eyemazing」の2012年3月21日発売号に特集されたことにより、この写真の存在は世界の何十万人かの知るところとなりました。
http://www.eyemazing.info/all-issues


そこで、一部の人にでもいいから印刷ではない本物のプリントを見てもらおうという思いでコスモスの新山さんにお願いして個展を開くことにしたのです。そして最終日、平日の昼間にアーティストトークをしました。


告知は3日前でしたが、充分な人が集まり、この作品はなぜ撮ったのか、個展のタイトルである「1 second-ほんとうにあったように思えてしまう事」の意味などを話しました。脱線して今の写真界の様子とか、今後[ところ]はどこにいくのかなども話し、とても濃密な時間が過ごせました。


人間は過去から未来へと繋ぐための遺伝子ランナーだと思っている[ところ]としては、異性との出会いは特別なものなんだという意識があるのでしょう。ヌード作品展にこういうタイトルをつけるということは。「存在の証明」という言葉が殆どのヌード作品に付いています。


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 http://tokoroyukinori.seesaa.net/
所幸則公式サイト  http://tokoroyukinori.com/

YouTubeで見つけました!

広告
このページの上部にもどる

アクセス

いろいろな方法でアクセスできます!