●この休みは風邪のためベッドの中にいた。寝込んでいたわけではない。任務である犬の散歩には何度も行っている。よりによって(と読後に思う)沼田まほかる「痺れる」(光文社、2010)を読む。この作家は「九月が永遠に続けば」で2004年日本ホラーサスペンス大賞を受賞(未読だが)。それで知った名前だが、ホラーサスペンスなら風邪撃退にちょうどいいのではないかと。「痺れる」は小説宝石に掲載された9つの短編からなる。
ボケが出ている老婆が物入れを整理しながら、失踪したという姑の実相をひとりごちる。レイプされた女がその後に不倫相手およびレイプ犯にとった態度は。古い山荘にひとりで住む女のところに舞い込んだ若い男が帰る日が迫って。家に出入りしていた植木屋が沼毛虫を体内に入れてから人が変わって。畑にかこまれた一軒家に住む女と巡回便利屋の青年、男が次第に強引になって。
映画館で痴漢にあった女が、木曜日毎にこの甘美な儀式を相手と共有し。町会のうっとうしい世話焼き老人を殺そうと思った女。女がひとりで庭仕事をしていると、通りがかりを装い接近してくる男がいる。不倫相手の男には7歳年上の妻がいて献身的に愛されているらしいが、離婚して女と結婚するという。
9編すべて女性が主役だ。2編ではみごとにだまされた。いずれも明るい話ではない。むしろ怖い話ばかり。とくに女性の悪意が怖い。「新作を書くにあたり、いつも思うことがある。光の中に居ない人、暗い所でひっそりと生きる人を書こう。なぜって、自分がそうだから」と大藪春彦賞を受賞したときの読売新聞「顔」欄にあったのを読後に確認した。若い作家には描けない世界かもと思っていたら、60代なかばの女性だった。
しかも「30代、実家の寺の僧侶となった。40代、友人と会社を起こした。でも、どちらも『対人恐怖』で頓挫、50代半ばで志したのが一人でできる作家だった」というから、小説家にとってけっこうな経歴だ。なかなか面白かったが、風邪で滅入っているときに読む本ではなかった。意味不明の悪夢を見た。(柴田)
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●続き。飲食禁止だけど、飴は(勝手に)許してもらう。喉がいがらっぽくなると咳が出て迷惑がかかる。咳をする時は暗転時か、大きな音楽が鳴っている時。風邪の時はマスク。鼻が出ても音をさせてかむ人はいない。においにも気をつける。汗くさかったら、携帯デオドラントシートなどでふいておく。香水は控えめに。そういや劇場で受け付けるお弁当は、あまりにおいのするものはないような気がする。古い記憶では、団体さんがいたら、二部はみかんの香りがしていたものだが。
ここまで注意しなきゃいけないのか、やはり舞台は観たくないなぁと思う人はいるだろう。けどお互い様というか、お互い配慮するから気持ちよく観劇できるというだけのこと。学生さんたちも始まる前はうるさいのに、舞台がはじまるとマナーを守ってくれるよ。
そうそう、私のまわりでは開場前、幕間のトイレにも気をつけてる。したくなくてもトイレに行く。利尿作用の強い飲み物も飲まない。途中退場するのは迷惑だし、トイレが近い人は通路側の席をとってる。観劇歴ベテランの友人に同行すると、1時間以上前には劇場近くにいる。電車が遅れることはあるし、苦労してとったチケットであり、他の娯楽に比べても安くないし、途中入場は自分にとってもまわりにとっても憎むべきこと。
ああ、このぐらい私も仕事の打ち合わせ時に配慮すべきなんじゃないかと思う今日この頃。時間の区切りをつけるため、アラームをいっぱい仕掛けているのに、マナーモードにするのを忘れること度々……。 (hammer.mule)