●適菜収「バカを治す」を読む(フォレスト2545新書、2012)。この新書、すぐ使える・役に立つ、面白い・読みやすいをコンセプトに、25〜45歳向けにまとめたシリーズだという。ピンクの表紙が下品で、本文の下のアキに小さな写真や解説を詰め込んだ体裁が見苦しい。それはともかく、適菜収はじつにおもしろい。「ゲーテの警告 日本を滅ぼす『B層』の研究」(講談社プラスアルファ新書)の物言いは快感だったが、さらに踏み込んで、「B層」から抜け出す方法=バカを治す方法が書かれているので実用的(?)だ。
B層とは「マスコミ報道に流されやすい、比較的IQが低い人たち」で、主婦層、若年層、シルバー層などに多い。素人が圧倒的自信をもって社会の前面に出て行く、こうした社会の主人公がB層。改革、革命、維新といったキーワードに根なし草のように流されて行くのがB層。権威を嫌う一方で権威に弱く、テレビや新聞の報道、有名人の言葉を鵜呑みにし、躍らされ、騙されたと憤慨し、その後も永遠に騙されつづける存在がB層。かつて小泉首相を支持し、いま橋下徹を支持しているのが典型的なB層。……だという。うん、確かにバカだ。
わたし自身は「B層」ではないと思っている。だが、「バカは自分の知っていることを確認するために本を読みます。バカは自分の世界観を堅固にするために情報を集めます。よって、バカはより洗練されたバカになる傾向があります」といわれると、わたしもそのお仲間かと自信が揺らぐ。この本は「バカの本質を掴んで自分の内部に存在する『バカ』を克服することが大切」だという。他人の「バカさ加減」をあげつらっている暇があるなら(それは面白いんだけど)、自分の「バカさ加減」を自覚し、自己を克服し、自分の仕事に専念せよと説く。
テレビは見ない。二度と読む予定のない蔵書を捨てる。新聞を解約する。ネットも止めてもいい。ケータイを解約する。ここまで徹底すればバカ情報はあまり入って来なくなる。「バカを治したい人は、新しい情報を得るための努力をやめるべきです。最先端の情報は追わなくていい」って極端なことを。バカを治すには、知識ではなく教養が必要になる。教養とは歴史や世界に対する態度である。過去の偉大な精神に接近せよ。故に、ゲーテに学べ。
「ゲーテに学ぶ」とは、ゲーテの言葉を知識として身につけることではなく、「ゲーテだったらいま自分が抱えている問題にどう向き合うんだろう?」と考え、徹底的にゲーテの真似をすることが大事だという。ゲーテが考えたのと同じように考えよという。う〜ん。承りますが、正直そういう方向にいくのはしんどい。そもそもゲーテをきちんと学んだことがない。
たまたま吉崎せいむの漫画「鞄図書館」を読んだら、鞄キャラクターはしょっちゅう「ゲーテ格言集」からの引用を口にする。すごくよく理解できる。このへんからゲーテに親しむか。ちょっと情けないか。(柴田)
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適菜収「バカを治す」
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芳崎せいむ「鞄図書館」
●続き。友人と話す。運転手が案内しないといけない少人数制のこと、改札に並ぶ人の列を考えると話を聞くのも迷惑であること、こちらにとってはイレギュラーでも、毎日その手の話ばかりを聞いているのであろうこと、自動改札をすり抜ける人が増えているのだろう、嘘をつく人も増えているのかもしれない、と。
大阪駅に戻ったら、いちおう聞いてみようか、いや宝塚駅で電話した方がいいかも、と話しつつ、宝塚駅へ。彼女はいなかった。終日って言ったやん! JRって労働時間長いのねぇ、とも友人と話していたよ。19時頃だったから、勤務時間が終わったんだろう。そりゃそうだ。
で、改札にいた駅員さんに、いちおう彼女がいるかどうか確かめた。私が嘘を言っていないことを再度念押ししたかった。そのぐらい気分を害した。嘘を平気で言う人に見えたってことだから。
いやまぁ『風と共に去りぬ』での、戦死した人の話とか、娼婦への差別とか見て、切符ぐらいで小さいわ、とか話していて、もうほとんどどうでもいいことになってはいたけど。
と、その駅員さんが「切符を落とした人ですか?」と。「(おお、彼女は申し送りしてくれていたのだ、感心)はい。そうです」「聞いてますよ」続く。(hammer.mule)