●高橋仁「運命のバーカウンター」を読む(幻冬舎、2013)。著者は2012年に、価格を無料にしても儲けを生み出すウェブのビジネスモデルをリアルの世界で実現させる理論「リアルフリーのビジネス戦略」という本を書いている。「運命の〜」はその戦略を小説仕立てにしたもので、実際にモデルになった企業は実在する。って、どうやら自分の会社のようだ。
この小説は、学者や評論家ではなく、成功した企業経営者の書いたものだから、それなりに説得力はありそうだ。わたしは会社経営やバーカウンターにまったく興味はない。それなのに何故読んだのか。この本の新聞広告にとても興味をひかれたからだ。
幻冬舎は本当に商売がうまい。ドンと大きな新聞広告を出す。タイトルが巧みで、箇条書きの内容紹介がじつに効果的だ。その広告「優秀な社員は必要ない」「水割りを飲む社長の会社は利益も薄い」「できる社長のメールは3文字」「経営者は社員に理解されなくてもいい」なんて、へえ! と思う事項がいくつも並ぶ。これは読むしかないでしょう。広告現物が手元にないので、これ以上は覚えていないが、以下は目次にある16話のタイトルから。
「彼女が2人以上いる社長の会社は連結決算が素晴らしい」「企業理念なんて本当はなくてもいい」「決まった時間に食事をするな」「20代で将来を語るやつは気持ちが悪い」。なかでも笑えたのが「ニセモノ経営者はトライアスロンに出る」っての。大学サイクリング部のOBにそのまんまの人がいる。イヤミでこの本を勧めようかな。
著者は言う。「もし、あなたがこれから起業や人生の成功を目指していたり、あるいは既に事業を始めていて経営の壁に直面しているのであれば、このバーで『本物の酒と本物の経営』を知って欲しい」と。知らない酒の名前が次々に出て来る。本物の酒か。著者の強い虚栄心を象徴しているみたい。
会社経営に悩む若い起業家が、「リアルフリー」なる謎のバーで酔っぱらいのベロベロ社長に薫陶を受けるという物語だが、社長のトンデモ説教(よく考えると案外まともな逆説)が興味深い。社長に翻弄されながらなんらかを会得して(そのへん曖昧)、主人公の会社は上向いて行く。
けっしてうまい文章ではないが、結構引き込まれて2時間もかからず読了。面白かったが、わたしにとって、役に立つこと一切なし。でも、若き経営者や起業を目指す人は読んでおくのもいい。成功の秘訣を得られるかもという期待はせずに、息抜きのエンターテインメントとして。
ところで、成功した起業家(?)与沢翼の毎日のメールが鬱陶しいんですけど。迷惑メールに定義してゴミ箱に投げ入れても、すぐ復活してまた送りつけてくるけど、どういう仕組みで迷惑メールフィルターを通過するんだろう。また来てる……。 (柴田)
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高橋仁「運命のバーカウンター」
●続き。切符を落とした私が悪い。それはわかっている。しかし疑われていることが腹立たしい。私はどうやって改札の中に入ったんだ? 3メートルの間と話しているではないか。ホームまでの間と話しているのに、なぜホームの話をするのだ。まったく聞いていないではないか。
そしてなぜ私が「大阪駅」と言えばそれは信じるのだ? もしかしたら中山寺(隣の駅)かもしれないし、京都や滋賀から乗ったかもしれないではないか。その証明はいらないわけだ。何この中途半端な「切符なくしました時対応システム」。
その上、「かばんから出てきたら」とまで言われた。落としたと言っているではないか。終日いるとは言ったが、名前は言わなかった。私の顔を覚えてるから、320円支払った証明になると? 何それ? 全然信じられてない。
こちらに甘えはある。今まで切符をなくしても、払えと言われたことはない。だって改札の中にいるんだもの。続く。(hammer.mule)